密着しすぎるがゆえに介入しやすく、甘えやすくなる
祖父母が息子・娘夫婦の子育てに口を出したり、孫かわいさから何でも与えてしまい、子どもをダメにする家庭も多い。
精神保健福祉士の大美賀直子さんによれば、過干渉になりがちなのは、三世代同居世帯などの、日常的に多世代が密着して生活する家族だという。
「密着しすぎるがゆえに家族の自立性や自主性が妨げられやすく、祖父と父、祖母と孫など世代間の融合が生じやすく強くなる傾向にあります。融合度が高まることで、子育てに祖父母が介入してきやすくなり、また、子ども夫婦も祖父母に育児で甘えやすくなってしまうのです」
広告会社で働く貝山萌さん(仮名=31)は、28歳で結婚し、一昨年に出産。現在は自宅近くに住む67歳の母・裕子さんに1歳の娘・沙耶ちゃんを預けてから出勤している。
「母が近くに住んでいてくれたのは本当に助かりました。わが家は共働きで仕事の時間がなかなか読みにくい職場。託児所に預けるのもはばかられて、毎日ちゃっかり母に頼んでしまっています。
とても助かるので今後もお願いしようと思っていたら先日、興奮した様子で“沙耶が今日、本を指さしてしゃべりそうだったの。この子きっと賢いから、いまから塾に通わせない?”とパンフレットを請求しだして。娘の教育については私たち夫婦で考えたいと思っていたのに、背筋が凍りました……」
夫や妻に受けとめられたい気持ちを、子どもや孫へスライド
裕子さんの夫は昨年、他界している。萌さんは、「父がいなくなって、孫育てにアイデンティティーを見いだしているのでは」と、ため息をつく。
一方で、夫の家族と三世代で同居している西山恵理子さん(仮名=38)は、義母(72)から息子(5)への愛の重さを憂いている。
「夫が自営業で家にいるので、平日に週2、3日、パートに出かけています。夕食どきを過ぎたころに帰ってくると、必ず義母が息子を抱いているんです。夫に聞くと、私のいない時間がまぁ、スゴいらしい。
ずーっとひざに抱きっぱなしで、“お菓子が欲しい”と言われれば隠してあるお菓子を与え、ボタンのかけ違いも直してあげる。夕飯にいたってはバランスよりも息子の好物を重視。ハンバーグ、カニかま、から揚げに焼きそば……と、大学のラグビー部の選手もビックリするくらいたくさんのお皿が出てくるんだとか。
最近ふっくらしだした息子を見て、軽く抗議をしたんですが、“子育てなら私に任せて。悪いようにはしないから”って。もうすでに悪影響が……、とはさすがに言えません。一切お願いしないのも不自然かなって」
前出の大美賀さんによれば、孫に入れ込む祖父母たちには、ある共通点があるという。
「それは夫婦2人だけの関係性が希薄であるということです。本来であれば、夫婦間の交流が家族の中ではいちばん大事。しかし夫婦関係が微妙だと、夫や妻に受けとめられたい気持ちを、世代を超えて子どもや孫へスライドし、執着してしまうことになるのです」
親の介入が多すぎるときは、ムリをしないこと。
「世代間の境界線をしっかり引き、曜日などで育児のタイミングを指定するのが◎」(大美賀さん)
祖父母と親子の関係性も、女性が社会に進出してきた現代では大きく変わっているのだ。