まずは体質改善をすること
「"花粉症はよくならない"ととらえている方がかなり多くいますが、生活習慣さえ変えればよくなります。人間は本来、花粉に対して過剰に反応しない身体なのですから」
陣内耳鼻咽喉科クリニックの陣内賢院長は、花粉症に悩み疲れ果てている患者に、そう呼びかけ、改善の道筋を次のように示す。
「まずは自分の状態を見つめて、どの程度ひどいのか、食事や生活習慣の中で改善できる部分はないか、理解しましょう。そのうえで生活をシフトしていけばいくらでも楽になれますよ」
春になると、毎年猛威を振るう花粉症。鼻水はたれ、目はかゆく、頭はボーッとして、集中力はゼロ。物見遊山や花見を楽しんだり、春を満喫する人々がいる一方で、花粉症患者にとって、3月4月は残酷な季節。心が晴れない。
「同じ環境でも、なる人とならない人がいる。花粉がアレルギー症状の引き金になるものの、主犯ではないからです」
エミーナジョイクリニック銀座の伊東エミナ院長はそう切り出し、花粉症の真の原因に関する持論をこう展開する。
「本当の原因は①運動不足や背骨の歪み②食生活や腸内の乱れ③ストレスや寝不足。それらによってホルモンバランスが低下し、血流の停滞や血液の汚れが引き起こされ、身体が冷えることがあると考えます。冷え症の人の多くは、花粉症持ちでしょう」
つまり①②③を取り除くことができれば、花粉症を遠ざけることができるという。
陣内院長も、
「花粉症を改善するには、体質を変え、花粉への免疫が正しく働く状態に戻してあげればいいわけです」
と体質改善の重要性を訴える。一体、どんな食生活に戻し、どんな生活習慣を改めれば、花粉症は撃退できるのか。
両院長が説くのは、まず現状を把握すること。
「花粉症を引き起こしている要因は、ひとりひとり違います。その人にとってよくないものを取り除き体質を変えていくことが必要です。病院へ来ていただければ、血液検査と診察による体質診断に基づいたアドバイスができます」
と伊東院長。陣内院長も、「薬を早くから飲みすぎると、自分の状態がわからなくなる。これは非常にまずいです」と注意を促し、体質改善による症状の除去を目指す。
食事が一番大切
「"きちんとしたものを、きちんとした調理法で食べること"が一番重要です。①加工食品・添加物を避け②きれいな水を飲み③生のまま食べない。この3点を実践すれば、ほとんどの人はよくなる」
と、陣内院長はきっぱり主張。そして常日ごろの意識として「買い物をする際には、成分表示を見てから選ぶ習慣をつけてほしいですね」と求めたうえで、次のような工夫をすすめる。
「ファストフードや添加物だらけの加工食品は、できる限り排除する。きれいな水を飲むことも効果があります。東京の水道水や『ボルビック』『クリスタルガイザー』などのミネラルウォーターを飲んで汗を流すことは、体内をきれいにすることにつながります。
ただ体内での水の巡りをコントロールしているのは胃腸ですから、胃腸を大切にする意味でも冷たいものばかりとるのは避けるべきです。食材も、生のまま食べることを避け、身体を冷やさないようにしましょう。
野菜は生のまま食べるのではなく、トマトならスープに、キュウリなら炒めたメニューにするなど、調理法を工夫しましょう。香りのあるセロリ、しそ、そば、ピーマン、はっさくや伊予かんなど柑橘類も効きます。血液が足りない状態を改善する食材(※を参照ください)もきちんと取り入れましょう」
※血を補う食材例:ほうれん草、人参、蓮根、落花生、黒豆、イカ、鮭、鰯、牡蠣、レバー、アワビ、卵、ぶどう、ナツメなど(美容薬膳料理教室「STUDIO EAT」代表で国際中医薬膳師の資格を持つ篠崎比呂さんによる)
伊東院長も加工食品にダメ出しをしたうえで、
「砂糖を控えるのが一番いい。最近は、おにぎりや納豆のタレなど意外なものにも含まれていますから、成分表をチェックするようにしましょう。それから悪質な油……サラダ油、マーガリン、揚げ物などに含まれるトランス脂肪酸は、できるだけ摂取しないようにすることが望ましいです。農薬を使った野菜や果物も、やはりよくありません。野菜だけになる食生活も望ましくない。バランスを重視しましょう。何と何を合わせて食べるのか、質と量が大切です」
という。
生活習慣も改善していきましょう
食生活同様に大切なものとして、専門家は、生活習慣の改善にも着目する。
「パソコンやケータイなどの画面の見すぎは、ホルモンバランスの崩れや栄養不足を招きますし、姿勢も悪くなりがちです。ストレスや疲れをため続けると血液がドロドロになり、腸の調子も乱れてくるので気をつけてください。適度な運動も必要ですが、背骨が歪んでいる人は、ずれたまま運動しても意味がありません。まずは根本原因を治してから取り組みましょう」
そうアドバイスする伊東院長は、意外な事実を指摘する。
「毛染め製品や柔軟剤、芳香剤、整髪料などからも体内に毒素が入り込みますので、食事以外でも注意が必要です」
陣内院長は、
「鼻づまりはケータイを持つだけでもひどくなります。移動中はカバンの中に入れ、夜は枕元に置かない。パソコンの電源をこまめに切るようにしたら、症状がだいぶ楽になったという患者さんもいます。触れる電気、電波の量を減らすことを心がけてください」