家計に“春の嵐”が吹き荒れている。食料品の値上げに続き、この4月から介護保険料もアップ。年金は『マクロ経済スライド』が初めて実施、支給額は実質的に減らされていく。
さらに’17年4月には消費税10%への引き上げが確定。食料品などの消費税率を低く抑える『軽減税率』の導入は見送られたまま、負担だけが重くのしかかる。
■現役時代の平均年収を500万円として試算
とりわけ、高齢世帯へ及ぼす影響は大きい。シニアのマネー事情に詳しいファイナンシャル・プランナーの紀平正幸さんによると、
「年金は年を追うごとに目減りしていき介護保険料は引き上げられる。しかもそれがこの先も続きます」
老後資金も、こうした事情を踏まえて考える必要があると指摘。
「上の表は、厚生労働省のデータをもとに私がアレンジを加えた、老後生活の収支の一例。サラリーマンの夫と専業主婦の妻で、現役時代の平均年収を500万円として試算を出しています。すると65歳から90歳までの25年間に受け取る年金総額は、夫婦2人で合計5826万円になります」
一方、支出はどうか。
「夫婦2人分の生活費だけで7350万円かかります。そこへリフォーム費用に300万円、介護などの予備費として300万円が加わると、老後25年間の支出総額は7950万円。つまり2124万円の赤字ですね。年金だけでは、とうてい足りません」
赤字の解消が難しければ貯金を切り崩すしかなく、破産という最悪の事態も考えられる。
■子どもの非婚・晩婚もリスク要因
なかでも突出しているのは医療費だ。窓口負担だけでなく、医療保険が家計を圧迫するシニアは多い。
「医療保険は高齢になるにつれて値上がりします。過大な不安から高い保険料を払っていたりする。しかし最近は、がん治療でも通院が主体の時代。入院期間は短くなっていますし、高額療養費などの制度も利用できる。ある程度、保険料を削れる可能性があります」
また、高齢になると外出の機会が減るため被服費、交通・通信費はカットが可能。子どもが独立すれば、食費や教育費の大幅減も狙えるはずだが、
「非婚化・晩婚化が進み、子どもがいつまでも親の家にいるリスクがあります。家計費を親が負担してしまうことになりかねず、生活費を家に入れているにせよ3万〜5万円程度であれば、親の持ち出しのほうが多い。子どもに自立を促すよう、早いうちから働きかけなければなりません」
■“3つの選択肢”しかない
これまでに紹介した方法を駆使して切り詰めても、収支の差額の2000万円強には届きそうもない。どうやって埋めればいいのか。
「老後に収入を増やす努力をするか、さらに支出を削る努力をするか、65歳よりも前に準備をしておくか。3つの選択肢しかない」
老後に収入を増やす場合、退職金の使い方がポイントになると紀平さん。
「300人から1000人未満の会社の退職金は、大卒・60歳定年で約2200万円。退職金をそのまま手つかずで65歳まで取っておけば、収支はトントンになります。では、65歳まではどうするか。再就職をするなり雇用延長をするなりして、生活費の相当分は働いて収入を得ることです」
65歳までに蓄えておきたいなら、40代の準備開始がベスト。家計のダウンサイジングも欠かせない。
「外食や海外旅行をしなくても、生活を楽しみながら節約して貯められるのが、今の若い人たち。バブルを謳歌した年金世代より、ずっと老い支度のセンスがあると思いますよ」