多くの人を悩ませている腰痛がスッキリと治るという〈背骨コンディショニング〉が今、注目を集めています。多くの人を救った噂のメソッドについて、開発者の日野秀彦先生に取材しました。

■痛みの根本にある仙骨のゆがみを整えるのがカギ

「現代医学では、腰痛の85%は原因不明と言われています。でも、その根本は“背骨のゆがみ”。これを正さない限り、痛みを根本的に解決できません。〈背骨コンディショニング〉は、文字どおり、背骨のコンディションを本来ある状態に整える方法です」(日野先生、以下同)

 日野先生は、もともとスポーツクラブ運動プログラムの開発を行っていたフィットネスディレクター。

「フィットネスディレクターの仕事は実に多岐にわたり、そのひとつに、不定愁訴の改善プログラムの開発がありました。私は、西洋医学、東洋医学、カイロプラクティックなどの第一人者の集まるチームで研究・開発を行い、機能解剖学などを勉強。インストラクターへの指導を行った経験が、このメソッドの考案につながりました」

 さまざまな専門的知識を学ぶ中で、「今あるやり方では腰痛は治らない」と感じ、研究の末、この方法にたどりついたといいます。

「この施術の大きな特徴は、背骨の下にあり上半身と下半身をつないでいる仙骨という骨のゆがみを矯正すること。運動の観点から多くの人の身体を見る中で、痛みの根本原因はここにあることを、私は発見しました。現代医学では、仙骨とその両脇にある仙腸関節は数ミリしか動かないとされています。しかし、痛みを訴える人は、仙骨が数センチ単位で大きくずれていることが多い! だから、ここを矯正し、正常な状態に戻してあげることで、痛みがとれるのです」

背骨コンディショニングブック.indb

■運動によって治すまったく新しいメソッド

 独立後、運動で不調を治す取り組みを始めた日野先生。仙腸関節や背骨の関節をゆるめる体操「ROM運動(R)」を開発、指導する中、現在の〈背骨コンディショニング〉生まれました。

「これまでに20万人以上の方にご参加いただき、多くの検証を行ってきました。その結果、わかったことは、痛みは骨がゆがみ、神経が引っ張られることで出るということ」

(1)背骨がゆがむ(ずれる)

(2)神経が牽引(けんいん)され過緊張が起きる

(3)ゆがみに合わせて姿勢が崩れる(代償姿勢)

 の3段階で、痛み・不調は定着してしまうのだそう。それに対して〈背骨コンディショニング〉では、

「(1)ずれて固まった背骨(の関節)をゆるませる。(2)ずれている骨を矯正する。(3)ゆがみの原因である筋肉を強化する。この3つを行うことで、背骨の正しい状態を維持することができます」

 ゴッドハンドというと、マッサージや骨盤矯正をイメージしますが、この施術のポイントは運動にあるというわけです。

「不調には、薬で治すもの、手術で治るもの、そして運動で治るものがあると私は考えています。その中で、運動で治るものについては、これまで、伝統医学でも現代医学でも語られてきませんでしたよね。今、日本人の多くの多くの方が肩こりや腰痛を訴えていますが、その根本には、文明が発達した社会で暮らす現代人の運動不足があります。ここに着目して不調を根本から取り除くのが、〈背骨コンディショニング〉なのです」

■神経でつながる内臓の不調や難治性の疾患にも

〈背骨コンディショニング〉のすぐれた点は、単なる腰痛や肩こりだけでなく、これまで治りにくいとされてきたさまざまな不調を解消できるという点にあるといいます。

「手術しても治らないことがある椎間板ヘルニアや、高齢者に多い脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)は、根本にある背骨、仙骨のずれを整えるだけでほとんど痛みがなくなります。また、背骨のずれを整えることで、神経の先にある内臓や他部位の神経の緊張を改善できるので、内臓のトラブル、アレルギー、耳鳴りといった治りにくい症状が緩和したというケースも少なくありません」

(1)内臓の症状

 胸椎の左右には、肝臓や胆嚢(たんのう)、胃・膵臓(すいぞう)につながる神経があります。背骨が左右にゆがみ神経が引っ張られた側の神経伝達異常が起こることに。「背骨のゆがみを取ることによって、内臓への神経伝達が正常になり、不調が改善することも多い」と日野先生。

(2)椎間板ヘルニア

 ヘルニアが神経を圧迫することで痛みが出るとされる椎間板ヘルニア。手術を受けても治らないケースのほとんどに、背骨のずれがあると日野先生。「ヘルニアがあっても、痛みが出る場合と出ない場合があります。痛みの原因は、神経の圧迫ではなく背骨のずれによって神経が一定方向に引っ張られるから。これを治すことで、手術でも治らなかった痛みから解放されるのです」

(3)めまい、聴覚障害

 脳に異常がなく、原因不明と診断されためまいや聴覚障害は、「頸椎1番の骨の後方へのずれによることが多い」と日野先生。「頸椎1番と同じ高さにあるのが内耳神経。この神経は、聴覚を司(つかさど)る蝸牛(かぎゅう)神経や、平衡感覚を司る前庭神経と関連しているため、現代人に多い耳鳴りやめまいなどにつながりやすいのです」。こうした治りにくい症状も、〈背骨コンディショニング〉を施すことで徐々に改善してくるそう。

※明日の第2弾では、自宅できる体操をご紹介します。

〈プロフィール〉

日野秀彦先生●一般社団法人・背骨コンディショニング協会代表理事。日本最大手スポーツクラブの第一期フィットネスディレクターとしてさまざまな運動プログラムを開発。その中で〈背骨コンディショニング〉というまったく新しい施術を考案し、手術でも治らないさまざまな症状の改善を行う。現在、100人以上のインストラクターを養成し、自らも全国で施術を行っている。