’09年末に乳がんを患った体験をもとに経済的な備えの重要性を訴える、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さん。
乳がんが発覚した当時、地方にある実家と自宅とを行き来していた黒田さんは、治療に専念するため自宅に定住することになったが、気がかりだったのは当時5歳の娘のこと。
「保育園を変わらなきゃいけないし、お友達とも離れることになる。そこで主人から娘に話してもらったんです。これからお母さんの病気を治すために3人で頑張ろうね、って」
その後、黒田さんは乳房摘出の手術を受けるため入院。実家の母が上京して娘の面倒をみてくれたが、
「ただならぬことだなあと、子どもながらに娘も思っていたようです」
無事に手術を終えたあとも、娘の様子が気がかりだった黒田さん。自身の体験をもとにした『がんとお金の本』を出版するにあたり、取材を通じて、がん患者の親がいる子どもを対象にしたある取り組みの存在を知る。
「東京共済病院のソーシャルワーカーたちが中心となって行う『クライム』というプログラムで、がん患者の親がいる子どもたちが少人数でグループワークをやるんです。6回の工程があり、親は基本的に別室で待機して、臨床心理士や看護師ら子どものケアの専門家とともに工作したり絵を描いたり、人形を使ったりしながら身体の仕組みや親の病気について学んでいきます」
黒田さんも娘と参加。ある日、スタッフから衝撃的な事実を告げられる。
「“娘さんは、お母さんの病気が風邪みたいにうつると思っています。自分もいつ病気になるか心配しています”と聞いて。本当にショックでした」
“自分のせいで親はがんになった”と考える子どもも珍しくないそうだ。
「がんは治療期間が長いうえに再発の恐れもある病気。がんとともにいかに生きていくのか、患者は家族ともども考えていかなければなりません。ですから、がんを正しくどう伝えるかということは、子どもが幼くても非常に重要なことなのです」