「右脳と左脳の両方にバランスよく枝が分かれている脳は『社会脳』といわれ、将来、成功してビッグな人になる可能性が高い」と話すのは、小児科医で脳画像診断医の加藤俊徳先生。
「脳の中には、家の住所のような番地があります。同じことばかりしていると、同じ番地ばかり使ってしまい社会脳が育ちません。“へぇ~、そうなんだ”という発見が、脳の違う番地を使うことにつながります」
さらに発見から興味を引き出して、ワクワクするアクションを起こして脳を動かす。例えば、花火の面白ネタを知る(準備)→実際に花火を見る(アクション)→体験したことを書く(アウトプット)、の3つのステップで社会脳は育っていくという。というわけで、子どもの“へぇ~体験”の入口になる面白ネタを集めてみました。まずは、夏休みらしい面白ネタを集めた【夏のうんちく篇】から。
◆かき氷シロップの味は実は同じ
夏祭りの屋台に欠かせないかき氷。目移りするけど、実はどれを食べても一緒! 味覚研究家の鈴木隆一先生が自ら開発した、食べ物の基本5味である甘味・うま味・塩味・苦味・酸味を数値で表す“味覚センサー”という機械で調べたところ、
「イチゴ、メロン、ブルーハワイの3種類のシロップは、すべて同じ味という結果。強い甘味とほどよい酸味が示されました。これはイチゴとメロンを足して2で割ったような味です」
うーん、今まで気づかなかったなんて不思議!
「食べ物は、色や香りによっても、味の感じ方が変わります。シロップのピンク色と香料から“イチゴ味だ”と思い込んでしまう。かき氷は、錯覚を利用した食品といえますね」
◆スイカは野菜でも果物でもない!?
スイカは果物? 野菜? 誰もが1度は思う疑問を、食品学を研究する宮城大学の石川伸一准教授にぶつけてみた。
「植物や農作物を育てる園芸の分野では、野菜は“新鮮な状態で、主に副食に利用される草本性食用植物の総称”と定義されます。草本とは柔らかい茎の植物のこと。いっぽう、果物は“木になる食用植物”です」
ならば、スイカは野菜で決まり!?
「ですが、文部科学省が定める日本食品標準成分表では、スイカは果物に分類され、実際に店頭でも果物コーナーに並んでいます。園芸と食品の分野でとらえ方が異なり、どちらも正しいといえます。立場が変われば、見方も変わるということですね」
◆そうめんとひやむぎの違いは太さだけ
「乾麺のうどん、ひやむぎ、そうめんの主原料は、どれも同じ小麦粉と食塩です。食品表示法に基づき、単純に太さの違いによって分類されています」とは、全国乾麺協同組合連合会の安藤剛久さん。
「機械製麺では、ひやむぎは1.3ミリ以上、1.7ミリ未満、そうめんは1.3ミリ未満と決められています。1.7ミリ以上がうどんです」
ただし、これが“手延べ”という製麺法になると、基準が少々違ってくるそう。
「手延べ製麺では、ひやむぎとそうめんの区別はなく、どちらも1・7ミリ未満です。これは、生地を機械でカットする機械製麺と違い、生地を手で引きのばす手延べ製麺では、均一な太さに作るのが難しいからです」
◆コーラはもともと薬だった
「アメリカの薬剤師が、覚醒作用のあるコカの葉を使い、滋養強壮の薬を開発したのが発端です」と、話すのは秋津医院の秋津先生。アメリカのドラッグストアには、ソーダやアイスなどを売るソーダ・ファウンテンと呼ばれるコーナーが併設されている。
「そこで、この滋養強壮剤のソーダ割りを提供したことにより、清涼飲料水コカ・コーラが誕生しました」
コカは、コカインの原料。現代ではもちろん違法なため、コーラの原料に使われていることはありえない。コカ・コーラの原液のレシピは非公開。従業員がメモすることも禁じたため、アトランタにある『ワールド・オブ・コカ・コーラ博物館』に保管したものが唯一のレシピなのだとか。
◆蚊に刺されやすい人には特徴があった!
同じ場所にいて、ひとりだけが蚊に刺されまくる。そんな経験はないだろうか。たまたまなのかと思いきや、
「蚊が寄ってきやすいタイプの人は存在します」
と断言するのは、前出の秋津先生。
「蚊を寄せつける2大要因は、温度と二酸化炭素。飲酒後や風呂上がりは体温が上がるので、蚊を引き寄せてしまいます。肥満の人は少し歩いても息切れしやすく、二酸化炭素をたくさん吐き出すため、やはり蚊の餌食になりやすいですね」
蚊が吸うのは人間の血。血液型も影響してくるの?
「O型の人は刺されやすいことが医学的に報告されています。理由は明らかになっていませんが、O型の血は蚊にとって、おいしく感じるようです」
◆蚊取り線香の香りに殺虫・防虫効果はない
『金鳥の渦巻』の大日本除虫菊株式会社の宣伝部によると、
「蚊取り線香の香り自体には、殺虫作用はありません。蚊取り線香の中に練り込まれた殺虫成分が揮散し、煙に乗って拡散することで、蚊を殺虫・忌避しています」
なぜ、みんなあの香り?
「もともと蚊取り線香は、“除虫菊”という植物で作られており、蚊取り線香に火をつけると、除虫菊が燃える香りがしました。その後、殺虫成分が化学的に合成できるようになり、除虫菊なしでも蚊取り線香が作れるように。でも、それでは昔から親しまれた香りがなくなってしまう。そこで当社は除虫菊の香りを残すために、今でも除虫菊から殺虫成分を除去した後の粉末を練り込んでいます」
除虫菊の香りを惜しむ声が、今の蚊取り線香の香りのもととなったのだ。
◆ゴキブリは死ぬ瞬間に卵を拡散する
「日本の家庭に出現するクロゴキブリは、中に25~26個の卵が入った卵鞘と呼ばれるさや状のものを産卵します。卵の成長具合によっては、メスの親ゴキブリを叩き潰すと、その勢いで卵が飛び散ることも」
とは、動物ジャーナリストの藤原尚太郎さん。でもだからといって、駆除せずに逃せば、さらなる大量発生は免れない。いったいどうすればいいの!?
「叩き殺すのではなく、殺虫剤や毒餌剤の使用がおすすめです」
この方法であれば、卵は飛び散らないというわけ。ゴキブリを見つけたら、スリッパではなく殺虫剤を手に取ろう。
◆セミの声は電話越しに聞こえない
「スマホに限らず電話機が感知できる周波数帯は300~3400ヘルツぐらい。人の会話での音域がそれぐらいであるためです。いっぽう、セミの声は4000~5000ヘルツほど。電話機の高音域を超えるため、セミの鳴き声は拾えず、通話相手にも聞こえません」
とは、石川県ふれあい昆虫館の石川卓弥さん。スズムシ、コオロギ、キリギリスも4000ヘルツを超えるため聞こえないそう。
「そもそも昆虫が高音で鳴くのは、ほかの生き物があまり使わない音域を使うことで仲間と情報伝達しやすいメリットがあるから」
ただし最近は、セミの鳴き声も拾える高音域に対応した“高音質スマホ”も登場。新旧スマホを入手して、夏休みの自由研究で調べてもよいかも。
◆“なめくじ”が主役の奇祭がある
毎年、主に8月に行われる“なめくじ祭”の舞台は岐阜県中津川市加子母にある小郷集落。
「小郷には、平安時代の高僧、文覚上人のお墓があるのですが、昔から1日だけ、墓のまわりになめくじが集まってくる日があるといわれています。文覚上人は出家前、友人の妻の袈裟御前に恋をし、友人を殺めるつもりが間違って、彼女を殺してしまいます。なめくじは袈裟御前の化身で、彼女の命日である旧暦の7月9日に、文覚上人を慕って現れるのです」(加子母総合事務所の梅田紳一郎さん)
祭りでは、みんなで墓を囲み、夜が更けると姿を現す本物のなめくじを愛でる。
「『なめクジ』という名前の、景品が当たるくじ引きも大人気です」
◆花火のヒュ~♪は笛の音だった!
各地で開催されている花火大会。花火が打ち上がるときの“ヒュ~”という音で、夏を感じているけど、日本煙火協会の河野晴行さんによると、
「あの音が鳴るのは“昇り笛付き”と呼ばれるタイプの花火です。笛剤と呼ばれる火薬が入ったパイプを、花火の玉の外側につけておき、点火すると、花火の上昇時に燃焼し、笛のような音が出る仕組み。昇り笛付きが最初に登場したのは戦後すぐ。“花火が開花するまでの途中も楽しんでほしい”という職人のアイデアでしょうね」
それにしても、なぜ笛の音になったの?
「涼しげな笛の音と、ドーンという大音響の打ち上げ音とのコントラストが見る人にウケて、広まったのではないでしょうか」