「1曲目は不倫がテーマでタイトルは『月』、2曲目は『ねこ』というタイトルでした。ただ、ライブに来た人たちが買う程度で、何十枚ぐらいしか作っていないと思いますよ。パソコンで複製したような手作り感満載で、ジャケットは昭和歌謡っぽい着物姿でした」(古くから知る女友達)
しかしその個性的な魅力は開花しないまま、気づけば三十路を越えていた。そんなある日、転機が。現在のマネジャーを務める女性が舞台を見て、彼女をスカウト。映像の仕事も入るようになる。そして、大物たちとの運命的な出会いが続けて訪れた。
「’08 年放送の朝ドラ『瞳』に出演しているのを見た中井貴一さんが、NHKに“あの子は誰だ?”と問い合わせたんです。中井さんは、三谷幸喜さんにも彼女を推薦したそうです」(芸能プロ関係者)
こうして吉田は、翌年に行われた三谷の公演に大抜擢。演劇人たちのあいだで注目の的となった。彼女の当時のブログには、公演初日に駆けつけた中井とのやりとりがこのように綴られている。
《終演後、不安げに駆け寄る羊に、『とても良かったから、自信を持ってやりなさい』と声をかけてくださり、中井さんの顔をつぶしてはいかん、というプレッシャーもあった羊は見事なまでの嬉し泣き男泣き》
あえて《男泣き》という表現あたりにも、感激ぶりが伝わってくる。実際、男っぽい一面もあるようだ。10年来の飲み仲間という男性からは、こんな話が。
「お酒は強くて、どれだけ飲んでも崩れないんですよ。ちょっとべらんめぇ口調で男っぽくなりますけどね。ただ、羊ちゃんは礼儀がキッチリしているんで、酔っていてもハメをはずすことはないですね」
さらに、こんなエピソードを明かしてくれた。
「僕は昔、車でパンの移動販売をしていたんですが、ポスターを作ろうと思って、まずは行きつけのラーメン屋さんで常連客に相談したんです。そうしたら趣味でカメラをやっている人が写真を撮ってくれることになって、それならと羊ちゃんにモデルをお願いしてみたんです。そうしたらこころよくOKしてくれて。すぐに撮影をして、ウチのポスターにしました」
これは吉田が事務所に所属する前のこと。彼女も当時はバイト暮らしだったわけだが、ギャラについては「いらないです」と言われたという。
「そういうわけにはいきませんからね。言い値でしたが、1万円か2万円は渡しました。今はそのポスターは使えないことにはなっていますが、新たにまた羊ちゃんを起用したいですね。今のギャラは想像つかないですが(笑い)」