「原告の請求をいずれも棄却する」
6月4日、東京地方裁判所で行われた、家賃未払いのため立ち退きを求めて争われていた裁判。畠山の勝訴が伝えられると、詰めかけた報道陣からはどよめきが起こった。
「昨年2月に第1回口頭弁論が行われてから、畠山側が不利という見方が大勢を占めていました。今年2月に行われた本人尋問でも、原告側弁護士の鋭い質問に、畠山さんはしどろもどろ。ですので、まさか被告の全面勝訴とは思いませんでしたね」(傍聴したスポーツ紙記者)
畠山といえば、’62 年のデビュー曲『恋は神代の昔から』がいきなり150万枚のミリオンセラーに。3曲目の『出世街道』は250万枚という記録的ヒットを飛ばした。
「畠山はヒット曲の印税で東京・高輪の高級住宅地に約115坪の土地を購入し、16部屋ある大豪邸を’70 年に完成させたんです。’73 年には吉永小百合が3階客室で結婚式を挙げるなど、この家がどれだけ立派かを物語っていますよね」(テレビ局関係者)
そんな順風満帆だった畠山を襲ったのが、バブル経済の崩壊だった。株に多額の投資をしていたが、それが一夜にして25億円ほどの借金を背負うことになったのだ。
「借金返済のために畠山さんは40か月間、1日も休まずに働き、’11 年には借金を完済したことを明らかにしました。利息分も含めると、36億6000万円も払ったそうですよ」(芸能レポーター)
高輪の自宅も借金返済のために銀行から競売にかけられたこともあった。だが、さらに借金をしても何とか守り通してきたのだ。
「決して手放さなかったマイホームですが、’11 年にその土地と建物を担保にローン会社から2億円もの借金をしたんです。なんでも、知人から持ち込まれた介護施設への投資話に乗って2億円を出資したのです。ですが、その事業は頓挫し、資金は戻ってこなかった。その件での別の裁判は畠山さんが勝訴しているのですが、貸した相手がすでにお金がなく結局、出資金はほとんど回収できなかった。またも借金返済に追われることになったのです」(芸能プロ関係者)
このままではローン会社に自宅を差し押さえられてしまうと考えた畠山は、知人の紹介で前出のA社に助けを求める。A社は3億円を貸すのではなく、彼女の土地と建物を買い上げ、それを賃貸する契約を提案。そして3億円に手数料を加えた額を払えば、再び彼女が買い戻せる契約を’11 年11月に合意している。
「畠山さんは’11 年12月から’13 年7月までは家賃を払っていたのですが、それ以降は1円もA社には支払われなくなった。A社の言い分としては、契約書どおり賃料を払えなければ立ち退くようにと、裁判を起こしたのです。これに対し畠山さん側は、この契約書は3億円を融資してもらうための便法で、実質的には売買はしておらず、立ち退きは無効だと主張。そして、その言い分を裁判所は全面的に認めたのです」(前出・スポーツ紙記者)
判決文は12ページにも及び争点に関する裁判官の判断理由が記されている。
だが、専門用語が多く、素人が読んでもなかなか理解できるものではない。 そこで、今回の判決について、当事者ではない法律の専門家にわかりやすく解説してもらうことにする。債務問題に詳しい『弁護士法人・響』代表の西川研一弁護士は、今回の判決をこう見ている。
「今回の判決文を読むと、畠山さんが現在も変わらず自宅に住んでいるという事実から、買い戻しができる売買契約を結んでいても、実態は譲渡担保契約であると裁判所は判断したということです。畠山さんが払っていたのは賃料ではなく、賃料名目で利息を支払っていたと認定されています。そういったことから、原告側が訴えていた賃料不払いを理由にした自宅の明け渡しは棄却されたのです。
とはいえ、世間一般の常識とは、ちょっと異なった判断を裁判所はしたといってもいいんではないでしょうか。証拠関係を拝見していないので、はっきりとは言えませんが、もし、原告側が控訴したら、高裁では違う判決が出る可能性もあると思います」