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 9月5日に肺炎のため、95歳で亡くなっていたことがわかった原節子さん。

 昨年、記者が隠居生活を行う鎌倉の自宅へ行ったところ、甥の男性が「ここには住んでいますが、基本的に外出はしません」といいつつも、病気なども特になく、元気に過ごしていることを教えてくれた。

 それゆえ『秋日和』や『小早川家の秋』といった小津作品での共演以来、引退後も長らく親交が続いていた女優・司葉子は、こうコメント。

「残念です。原さんはお元気な方でしたが、骨折しても病院に入らない人でしたから、肺炎をこじらせたのでしょう。大女優である反面、プライベートでは非常に普通の感覚を持っていた。出会えたことは幸せでした」

 今年の初夏に、電話で冗談を言い合った話を明かした。実際に昨年、本誌が原さんの近況を聞いたときも、彼女の健在ぶりをこう教えてくれたのだった。

「特に時期は決めていませんが、したくなったときに電話をする感じです。いつも1時間くらいは話すでしょうか」

 また、13歳下の女優・岡田茉莉子からは、初共演した際の思い出を直接聞くことができた。

「とても気さくで、ざっくばらんな方でしたね。あのころ、私はまだコーヒーが飲めなかったんですが、原さんはコーヒーを飲みながら“コーヒーなんか飲めなくたって、別にかまわないわよ”って声をかけてくださって。ご自分はビールがお好きなんだけど、私に“茉莉子さん、あんまり飲むと太るわよ”とチクリ。またあるときは、タバコを吸いながら“タバコも肌によくないから、吸わないほうがいいわよ”なんて言われたこともありましたね」

 映画『秋日和』クランクアップ後の食事会で最後に会ったときも、楽しそうにビールを飲んでいたという。

「結局、“ずっとおきれいなままの原節子さん”というイメージを残しておきたかったんでしょうね」

 しかし、そうでない意外な一面に遭遇できた人もいる。ノンフィクションライター斎藤充功氏だ。今から35年ほど前、月刊誌の仕事で引退後の原さんについて調べることになり鎌倉の家に行くと、なんと庭に本人がいるのを発見。

「今は家の周りを濃い生け垣で囲ってしまっているようだけど、当時はちょっと背伸びすれば中が見えたんですよ。上品なおばさん、というか、ご婦人が庭にいるのが見えてね。ちょうど裏木戸が開いていたのでそこから入っていって、写真を撮ったんですよ。そしたら“どちら様ですか? フィルムを出していただけませんか?”と言われたんです。怒っていた感じではなかったんですが、金縛りみたいになってしまって、気がついたらフィルムを渡していました」

 ところが半年ほどがたち、再び取材を命じられた斎藤氏。鎌倉へ行くと、またしても庭にいる原さんと遭遇。

「このあいだは、フィルムをどうもありがとう」

 と声をかけられたという。

「それでもう1度謝ったら、ちょうどお昼の12時を過ぎたころだったんだね。“お昼ご飯は召し上がったの?”と聞かれたので“いや、まだです”って言ったら“カレーだったらありますけど、召し上がりますか?”って。そんないきさつで、カレーを振る舞ってもらい、縁側に座って一緒に食べました。レトルトじゃなくて、ジャガイモとニンジンがたっぷり入ったカレーでしたよ」

 いたって普通の、家庭的な野菜カレーだったようだ。とはいえ、マスコミで原さんと話したのは、彼が最後と言われている。