「みんなで自宅に遊びに行ったことがあります。部屋中にアニメのポスターが貼ってあって、男子が好きそうな『けいおん!』でした。アニメオタクだった。お母さんは外国人で彫りの深い顔をしていました。粗暴だとかワルという感じはなかったですね」
中学時代の後輩の女子生徒は、中3当時の少年Aの素顔を、そう明かす。Aは、上村くんが通う中学から自転車で15分ほどの中学校出身だ。2月27朝、弁護士を伴って神奈川県警川崎署に現れたマスク姿の少年A(18)。
「Aの関与を疑う情報は、早くからつかんでいる報道機関もあり、逮捕前から自宅前に張り込んでいましたね」と民放社会部記者。Aの父親は、弁護士を通し 26日夜「Aは事件に関わっていない」とするコメントを発表したが、その翌日、少年B(17)、少年C(17)ともども殺人容疑で逮捕された。Aは「何も話したくない」と供述していたものの、28日夜から「暴行をチクられた」などと話し、容疑を認める供述を始めている。
少年Aは定時制高校に通っていた。当該高校の教諭は、
「何も答えられません。在籍しているかも含めて」
アニメオタクだった中学生は、わずか3年の時を経て、殺人鬼に姿を変えたのか。
「中学生のころから夜遊びをしていて、キレるとちょっと怖いところもありました。彼とトラブった友達はカッターナイフを持って追いかけまわされたし、別の友達はケンカになった時に、顔が変形するほどボコボコに殴られた」
身長170センチ、やせ型の身体に潜んでいた凶暴性を、中学時代の同級生はそう証言する。
事件後、少年Aは姿を消した。Aや上村くんと面識のある中学生グループはいぶかしんだ。LINE(無料通信アプリ)で「ヤツを探せ」というメッセージが拡散された。
逮捕前、上村くんのことに関しては口を開かなかった中学生グループは、上村くんと仲がよかったということがわかった。みんなで相談して決めたのか、後日、本誌の取材に応じてくれた。彼らは少年Aに直談判をしに出向いたことがあったという。
リーダー格の1人が明かす。
「カミソンは俺らに、自分から困っているなんてことは、言ってこなかったし、まったくそんなそぶりは見せなかった。俺らに心配をかけたくなかったんだろうし、いつもニコニコしているヤツでした」
ところが、今年に入り、顔に青タンができた上村くんを見て、中学生グループは、年上のAに噛みついた。
「カミソンは何も言わなかったけど、顔のアザを見て気づいたから、やったヤツらを止めにいったんです。"もうやめろ、これ以上やんないように"って。事件の1か月くらい前だったかな。その時は"わかった"って。"もう絶対やらないし、本人に謝る"って言ってたんだけどね。本気で思ってなかったんだろうね。だから、こんなことになっちゃったし」(別の中学生)
仲間たちは、最後まで上村くんに寄り添っていた。
「もう、あいつらとなるべく関わるな」「もしなんかされたら、連絡しろ」。
そう何度も何度も伝えたという。少年Aの人間像については、
「カスですよ。ゴミみたいなやつですよ」
と木っ端みじんに打ち砕く。
「18歳で年下の中学生を連れまわして、家にも帰らせないし。何やりだすかわかんないヤツですよ。エアガンでハトを撃ったり、変な武器とか、警棒とか鉄パイプとか持ってたし。変わったヤツでした」
そんな少年の理不尽な暴力で、上村くんは傷を負い、恐怖の真っただ中で命を落としてしまったのか。
「カミソンにはもっと助けてくれって言ってほしかった」
その声に、仲間たちが静かにうなずいた。