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 3・11から丸4年、小泉進次郎復興政務官が力強く掲げる言葉─「前例なき環境には前例なき教育を」─を実践するまっさらな場が、4月8日に産声を上げる。

 福島第一原発から30キロ圏内の双葉郡広野町に開校する、中高一貫教育の県立高校『ふたば未来学園高等学校』。

「本校が120名を募集するに伴い、同じ郡内の高校5校は、募集を停止しました。5校の特色や伝統をどう受け継いでいけるか、開校までのタイトスケジュールの中で準備が間に合うのか、不安でした」

 立ち上げから関わってきた福島県教育庁高校教育課の大沼博文課長は「走りながら考えた」という決定から開校までの1年4か月を振り返る。放射能に関する説明には正直に、そして時間を割いた。

「放射線量に問題はなく、普通の学校生活は十分に安心して送れる」状態でありつつも、「万が一の不測の事態が起こった際には、どんな対応をするかも丁寧に説明を重ねてきました」と大沼課長。

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昨秋、福島県内の小学校で模擬授業する進次郎氏(上)と、ふたば未来学園高(県教育庁提供)

 受験生や保護者の不安解消と広報活動に力を入れた結果か、今年2月3日、試験会場に未来を夢見てやって来た受験生は152人。昨年9月までの志願者数は定員に程遠かったというが、フタを開ければ大人気。震災以来の再会を喜ぶ元同級生もいたという。

 初代校長に就任する丹野純一さん(48)は、

「この4年間、転校や避難生活で苦労している子、仮設住宅で暮らす子もいます。そういう子にも居場所を与え、安心と成長の場を与える学校にしたいと考えています」

 受験生が定員を大幅に上回ったことに対し、同県教育庁は、粋な計らいをした。

「臨時増員という特別措置を取り、全員を受け入れる環境を作りました」(大沼課長)

 同校の大きな特徴のひとつは、『アカデミック系列』『トップアスリート系列』『スペシャリスト系列』という3系列の教育内容。大学進学を目指す、オリンピックも視野に入れスポーツ実技や理論を学ぶ、職業人を目指す、といった個人の目標に合った授業を選ぶことができる。

 地域との連携、地域への意識を常に持ち続けるため、『ふるさと創造学』という授業も設けられる。学園の目玉だ。

「ふるさとの魅力を知り、今ふるさとが抱えている課題をどう解決していくのか考え、復興に向けて発信・実現していくためのカリキュラムです。

 ほかの一般科目でも、実践的な課題解決型の学習をする"アクティブラーニング"を展開します」(大沼課長)

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制服はAKB48の衣装も手がける茅野しのぶ氏がデザイン

 さらに同校の大きな魅力は、日本を代表する各界の第一人者らが結成した『ふたばの教育復興応援団』だ。小泉政務官が呼びかけ、作詞家・秋元康さん、俳優・西田敏行さん、劇作家・平田オリザさん、予備校講師・林修さんらが賛同。授業も担当するという。

 校歌の作詞・作曲はAKB48総合プロデューサーでもある秋元さんが手がけたという。

 平田オリザさんは、

「演劇を使いコミュニケーション能力を高めていくような授業を考えています。生徒たちが地元福島が抱えている課題を調べ、それを演劇にしていく実践的な授業にしたい」

と明かす一方、

「高校生ですから、あまり"福島福島"って背負わせるのもどうかと思っています。立ち向かえる心を持ってほしいとは思いますが、頑張りすぎず、3年間かけてのびのびと道を見つけていってくれれば」

 福島の桜が満開を迎える8日、開校ベルが鳴り響く。丹野校長が新入生、新学校にかける期待は大きい。

「この地域には課題が山積していますが、だからこそ、ゼロから出発して新学校をつくっていける。それを楽しみに入学してほしい。学びの場として、30年後も50年後も100年後もずっと、新しい社会を担う人材を育てていきます」

 100年後に咲き誇る桜並木を作るためには今、小さな苗木を植えなければならない。「復興は人の復興であり、そのためには教育だ」という小泉政務官の言葉が、応援団や生徒、地域住民と動き始める。