映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』でタイムマシーンに改造したデロリアンが1985年から飛んできた未来、2015年10月21日がやってきた。その日は映画と同じ場所、ロサンゼルスに多くのファンが集ったし、日本でも東京・お台場や広島など、あちこちでいろいろなイベントが行われた。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』はマイケル・J・フォックス演じるマーティーとクリストファー・ロイド演じる相棒、ブラウン博士（ドク）が2015年にタイムトラベルするSF映画だ。1989年に公開されたが、タイムマシーンとして使われたのは、「デロリアン」というクルマ。映画のなかでデロリアンは残飯などゴミを燃料にしている。
デロリアンとはわずか1モデル、幻の名車とされる「デロリアン DMC-12」を開発・販売した自動車メーカー。また、「デロリアン DMC-12」の通称でもある。世界で3番目に作られたというこのクルマは1981年に発売されたが、翌年に会社が倒産。ただ、熱心なコレクターも多く、いまも世界中で愛されている。
映画評論家の有村昆さんが所有していることでも有名。日本にも100台ぐらいあるものの、実際に動くデロリアンは稀であるという。
2007年から日本EVクラブ広島支部の藤井智康代表が、そのうちの1台を電気自動車化するプロジェクトをスタートさせた。マツダのOBや電気配線の専門家など仲間と協力しながら、2009年3月には車検を通して公道を走らせることに成功。その後も映画のようにバナナやビールなどの残飯を燃料にすることを目標にして、開発を進めている。
今年の9月には、EV化から関わっている、水素エネルギーを研究している広島大学大学院の市川貴之准教授に市販の発電機を水素で動くように改造したものを提供してもらい、ボンネットに設置した。
残飯を発酵させて水素をつくる技術は開発されているので、これで、ドクの作ったデロリアンに近づいたことになる。ちなみに、EVになったデロリアンは、世界で3番目につくられたという。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』で30年後の未来、2015年に出てくるのは、デロリアン型タイムマシーンのほかに宙に浮くスケートボード「ホバーボード」。これはトヨタの「レクサス」の開発チームが磁力を使って実現している。
音声で指示を認識するコンピューターはiPhoneのSiriなどでおなじみだし、テレビ電話での会議はSkypeなどで普通に行われている。
指紋認証や顔認証もしかり、3D映画、持ち運び可能なタブレット式のコンピューターなどなど……実現したものが多い。
30年という年月があっという間だったような気もするが、技術の進歩はものすごい。
いまだったら、どんなものを30年後の未来に設定するのだろうか？
自動運転の車は当たり前になっているだろう。また、動く歩道もチップを持っていれば、自動的に目的地に着くことができるなんていうことも可能になるのかもしれない。もちろん、車椅子に座っていても目的地に着けるから、歩けないボクでも大丈夫。iPS細胞の実用化が進めば、見えない目も傷ついた肌もきれいに治る。自分の細胞だから副作用もない。パソコンもロボットも着用することが普通のことになっているからマニュアルモード、普通の人間の能力にするモードを選んで、何かをすることも一般的になっているかな。そんな世の中かもしれないな。
広島のデロリアンは10月25日に広島マリーナホップで開催される「クリーンエネルギー展」でデモンストレーションをするという。
お近くの方はぜひ見に行ってほしい。
ドクとマーティーの影が見られるかもしれない。
〈筆者プロフィール〉
神足裕司(こうたり・ゆうじ) ●1957年8月10日、広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代からライター活動を始め、1984年、渡辺和博との共著『金魂巻(キンコンカン)』がベストセラーに。コラムニストとして『恨ミシュラン』（週刊朝日）や『これは事件だ！』（週刊SPA!）などの人気連載を抱えながらテレビ、ラジオ、CM、映画など幅広い分野で活躍。2011年9月、重度くも膜下出血に倒れ、奇跡的に一命をとりとめる。現在、リハビリを続けながら執筆活動を再開。復帰後の著書に『一度、死んでみましたが』(集英社)、『父と息子の大闘病日記』（息子・祐太郎さんとの共著／扶桑社）、『生きていく食事 神足裕司は甘いで目覚めた』(妻・明子さんとの共著／主婦の友社)がある。Twitterアカウントは@kohtari