さまざまな現場でレスキューされてきた猫は、障害をもっている子も少なくない。片目が見えない、全盲、足を切断している、自力排泄ができない……。ただ、こうしたハンディを持っていても、里親が見つかり、幸せをつかむ猫もいる。
例えば、フリーライター・姫野ケイさんの家で暮らす小雪ちゃんは、足の大腿骨を9か所骨折、自力で排泄できるものの、一生、後ろ足にマヒが残るといわれていた。生まれて間もなく、腰骨を強打したためといわれている。山本さんも、保護したときのことをよく覚えている。
「子猫で下半身マヒがあるのに、よろけながらも歩こうとしていたんです。愛嬌もあるから、シェルターにデビューさせたら、よたよた~っと歩くようになりました。その様子がまた可愛くて。動画でも記録して、公開しました」と振り返る。
ちょうどそのころ、取材でシェルターを訪れた姫野ケイさんが、仕事とは別に、里親になりたいと申し込んだ。ただ、そのときはまだ、もらい受ける猫を決めていなかったそう。では、数多くの猫のなかから小雪ちゃんを選んだのは、なぜなのだろうか。
「飼うなら、三毛か白茶模様で、メスがいいと希望していたんですが、そのときに考えていた条件にぴったりの小雪に会ったんです。ものすごく顔が可愛くて、しかも抱っこしたらゴロゴロとのどを鳴らす。悩むことなく一目惚れでした」という。
とはいえ、実際に里親になるまでは、迷い、悩んだ。
「今は問題がなくても、将来のことはわからないですし、面談時にも厳しいことを言われました。それでも大丈夫と信じて決断しました」と姫野さん。
その後、姫野さん宅に無事、引き取られた小雪ちゃんは、メキメキと歩行能力を向上させ、今では足の不自由さをまったく感じさせないほどの動きを見せるという。
「家に来て1年ちょっとですが、今では高さ190センチくらいある本棚の上へ、ヒラリと上ります。足に障害があるといっても、普通の人はまずわからないくらいの運動能力です」と驚くほどだ。
姫野さんの暮らしも変わった。飲み会があっても、気が乗らなければ、「猫が待っているから」とすぐに帰宅するように。実家で飼ってきた猫たちと違い、甘え上手で抱っこが大好きな小雪ちゃんと過ごす時間はかけがえのないものだ。
「家にいるときは、ひざには乗るし、冬はお布団で一緒に眠るし、ずーっとベタベタしているんです」とノロケる。早朝起こされても、わがままに振り回されても、愛おしい猫のいる暮らしはやめられそうにない。