子どもたちのいじめはSNSなどインターネット上で行われている。しかし、ネット空間は無限に広がっており、いじめなどの問題行為を確認するのは容易ではない。子どもたちを守るためにITのプロとタッグを組む学校が増えている。

 ツイッターなどソーシャルメディアの企業向けモニタリング事業を手がける「アディッシュ」が、学校向けに提供する「スクールガーディアン」が注目を集めている。

 監視対象はいじめや悪口だけではない。学校側の要望にそって、不用意な個人情報の書き込みやトラブルを招きかねない記述などもチェックする。

 自殺予告や犯罪被害、喫煙や飲酒などの不法行為、あるいは深夜徘徊などがわかることもある。いくつかの基準を設け、学校側に届けるべき内容かどうかを判断している。

 注意や確認が必要とみられる報告件数は1校あたり月平均で約6件。そのうち、いじめや中傷にかかわる案件が1、2件含まれている。

 学校側は、いじめにつながるような書き込みを専門企業が外部からチェックしていることを生徒に伝えている。

「ネットいじめはゼロにはなりませんが数としては減ってきているため、抑止効果があるとは思っています。その一方で(見えないところに)潜ってしまう懸念も。そうした葛藤は日常的にあります」(スクールガーディアン佐々木由起子事業部長)

 自殺しそうな生徒への対応に関与したこともある。ネット上で「死にたい」「学園祭で飛び降ります」などと遺書めいた書き込みを見つけた。

 発見したネットパトロールのメンバーは上長らに報告。緊急性が高いと判断し、すぐに学校側に伝えた。結果、生徒の無事を確認できたという。

「こうした投稿を見つけること自体が衝撃的です。目視をしているが、慣れているわけではない。このときは動揺しました」(佐々木事業部長)

 サービスを導入している東京都立川市の私立立川女子高校(桃井尚志校長、生徒数801人)を訪ねた。OGにファッションモデルで歌手のきゃりーぱみゅぱみゅがおり、かわいい制服で人気だ。

 同校が生徒のネット利用に危機感を抱いたのは5年ほど前。知らないうちに生徒の写真がネット上にあげられ、悪口が書かれていた。個人情報を漏らしているケースもあった。

 生徒指導を担当する米木望副教頭は「ネットの書き込みは誰が見ているかわからないということを生徒はわかっている。しかし使う段階では抜け落ちてしまう」と話す。

 導入前は、ネットに詳しい教師を中心に個々のペースで監視していた。しかし、教師によって技術力に差があり、特定の教師に頼るところが大きかった。外部のネットパトロールについては、ことあるごとに生徒に話している。

「“見張っているから悪口を書くな”ということではなく、“なんで見張っていると思う?”ということを生徒にはわかってほしい。ネットは便利だけど使い方しだい。顔をつき合わさずに言うことで、意図せずとも相手を傷つけることがある」(米木副教頭)

 導入後、報告があげられてきた中で指導に至ったケースは2件。生徒たちも、ネット上の不適切な振る舞いを意識するようになり、生徒から教師に教えてくれる場合もある。

 学校の業務を外注化することには戸惑いもあったという。しかし、桃井校長は「空いた時間を教員が生徒と向き合う時間に割り当てることができた。学校にとっても生徒にとってもよかった」と評価する。

 同社はこのほど、子どもたちがスマホでいじめを匿名通報できる新サービス「キッズサイン」の試験提供を始めた。

 最近では、無料通信アプリLINEなど外部に閉ざされたやりとりが増えている。そこで子どもたちの目撃情報や被害申告を受け、監視ではない方法でいじめを炙り出す。

「ネット上で見つけにくいものにどう向き合っていくかが課題。子どもたちから危険信号を出してほしい」(佐々木事業部長)

 子どもの命を守る学校&IT企業のタッグは続く。

〈ジャーナリスト 渋井哲也〉