2017年4月に迫る消費税10%時代。収入に占める食料品の割合が大きい低所得者層の負担感を減らすために政府・与党間で議論されているのが、軽減税率の導入である。
公明党が主張する軽減税率の対象は「酒を除く全飲食料品」。一方の自民党は当初、「加工食品を含めるのは難しい」としていたが、国民の大多数の声は「全飲食料品」も、さらには「外食」もだろう。
軽減税率が導入されれば、街中には消費税率8%と10%の商品やサービスが出回ることになる。食料品が8%のままでも、スマホ通信料、日用品、交通費、衣料品などは一律10%課税される。
支払額は定価プラス1割。5000円なら5500円、1万円なら1万1000円。3000万円のマンションは、プラス300万円を出さなければ購入できない。300万円の“消費税ローン”の返済に、何年かかるのだろうか。
「どうしても軽減税率を導入したいのなら、イギリスのように生活必需品の税率をすべてゼロにすべきでしょう」(経済アナリストの森永卓郎氏)
東京・有楽町で街の声を聞いた。軽減税率対象にしてほしい品目として「生鮮食品」のほか「光熱費」や「通信費」を挙げる人が多かった。
30代の女性会社員は「外食やお酒・タバコ、洋服などは欲望を我慢すれば出費を減らせるだろうけれど、生きていくうえでの必需品に高い税率がかかってしまうのは厳しいですね」と表情を曇らせる。
20代の女性会社員は将来のマイホーム購入について「税金がバカらしくて夢さえ持てなくなりそう」と、半ばあきらめぎみだった。
賃金が十分上がり、家計の収入が増えていれば、街の声もまた変わってくるだろうが、アベノミクスの好循環は今のところ、全国津々浦々にまで行き届いていない。前出の森永氏は、こう一喝する。
「景気の後退や参院議員選挙を控える政治家の心理を考えると、8割以上の確率で消費税の引き上げはないと考えています。そもそも法人税の引き下げをしなければ、消費税増税の必要はありません」
東京・有楽町で集めた声の中に、こんな訴えがあった。
「10%になることによって、どれくらいの打撃を受けるのか読み切れないのが怖い。常に財布の中身が頭をよぎりながら生活するのは、ストレスでしかありません」