今年の箱根駅伝で39年ぶりの完全優勝という偉業を果たした青山学院大学。その5区を走った主将・神野大地選手は三代目“山の神”と呼ばれ、2年連続の優勝に大きく貢献した。
そんな大地選手には幼いころから慕い、愛する祖母の存在が。ストイックで人一倍、努力家の彼を愛知県の名古屋から見守ったのが、祖母の磯部安江さん。
今でもマスコミから「おばあちゃんに連絡しましたか?」と質問されると、「アーチャンには電話しました」と答える。アーチャンに言われたことは絶対、守るのだ。
「小さいころから手のかからない子でしたよ。大地の兄が小学1年生で大地が年少さんだったときに、みんなでディズニーランドに行きました。まだ小さかったのでベビーカーに乗せようとすると“アーチャンが乗ったらいいよ! 押してあげる!”って言ってくれたんです。
それくらい歩くのが好きな子でした。抱っこしてほしいと言うどころか、自分からスタスタ進んでいって、長時間歩いていても平気な顔。むしろお兄ちゃんのほうが疲れていました(笑い)」
優しい心持ちは、誰に対しても同じ。母親が熱を出したときには、幼い大地選手は冷たいタオルを絞って額にのせて付き添った。
「家族思いなんですよ。誰も教えたわけではないのに、自然にできてしまう子なんです。電話をかけてきてくれるときも“アーチャン、身体大事にしてね。風邪ひかないようにね”って言ってくれますね」
今年の元日の夕方にも電話があったという。
「“アーチャン、明日走るよ”って。走るなら最後まであきらめずに走ろうねって言いました。私が現場には行けないのを知っているので“テレビで応援していてね”って言ってくれました」
体調は万全とは言えなかったが、箱根の険しい山道を上る5区で区間2位となる快走。往路優勝のテープを切り、2位以下に大差をつけた。
青山学院は2日目も好調な走りを見せ、スタートの1区から1度もトップを譲らない完全優勝を果たす。92回の大会史上でも6校目の快挙だった。
「監督さんにはすごく感謝していますよ。私も2年前の駅伝のときに挨拶に伺いました。でも、お話ししているときに大地の姿を見つけて、つい“大地~!”と叫んで走っていってしまいました(笑い)。
普通、大学生はみんなの前でこんなことをされると恥ずかしがると思うんですけど、ニコニコ走ってきて“アーチャン、ありがとね。監督さんに挨拶してくれた?”って優しく言ってくれたんです」