首が埋もれるほどの肩パッド、ショルダー型の携帯電話、太眉にソバージュ、鮮やかで主張の強い口紅。バブル世代が「懐かしい」と叫んでしまういでたちの平野ノラさんは、バブルネタで大人気の芸人だ。

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「当時はみんなこんな感じで、ディスコで舞ってたんですよね。私はまだ小学生で、実際に踊ってはいなかったけど、父親が不動産業をやってたんですよ。だからバブル語として印象に残っているのは“土地転がしてる?”のひと言。朝シャンして、生乾きの髪をかき上げながら、挨拶がわりに“土地転がしてる?”って、なんだか景気がよくていいですよね。

 あとは“ヤッピー”。これも挨拶用語。私も多用していて、“おはようございます”より、みんな笑顔になってくれます。1度、仕事現場で言ってみたら、みんな笑ってくれたので、挨拶に使っても許されるんだと自信を持ちました。

 3番目が“げろげろー”。リアクション語といえばいいのかな。誰かが言うことを聞いて“なんだ、それ”のかわりに“げろげろー”。自分がミスって、ヤバいと思ったときも言いますね。やってられないわと思ったら、ため息まじりで吐き出すように“げろげろ”。バージョンアップは“げろげろのげー”(笑い)。

 4番目は“ぶっとびー”。当時、宮沢りえさんがドラマでよく言ってたんですよね。あのころはリアクションがいちいち大げさ。これに身振り手振りがつくからいちいち派手で(笑い)。でも会話が盛り上がる。バブル語のいいところです。

 そして、私の中ではぶっちぎりの一番なんですが“おったまげー”。バブル世代は、お葬式でもこの言葉をつぶやいていたんじゃないでしょうか。“ぶっとびー”と“おったまげー”は微妙に違う。おったまげるのほうが少し強いというか……。特別なときは“おったまげのぶっとびー”とも。これが最上級(笑い)。

 ほかにも“イケイケ”だの“やるっきゃない”だの、威勢がいい。時代を映し出しているなぁと思います。

 土地を転がしてた父親は今、タコ焼き屋でタコ焼き転がしていますが(笑い)。

 私は知り合いに“バブルのかほりがする”と言われたことがきっかけで、バブルネタをやるように。今ではバブル世代はもちろん、若い女性は新鮮なのか、おもしろがってくれます。

 私はバブル語が大好き。当時の会話には色気があります。“頼りにしてるぞ♪”とか“うれピー”なんてかわいいと思う。自分の感情を隠さずストレートに出すよさがありますよね。

 “24時間戦えますか”というCMがある一方“5時から男”なんてのもあって、仕事も遊びも全力投球。言葉の節々にものすごい勢いを感じる時代ですよね。

 今は少し空気を読みすぎる時代になりました。それでも、私は思うんです。あなたが今いる場所がお立ち台なのだから、そこで舞いなさい、そうしたら絶対に輝けるのだから、と」

取材・文/亀山早苗

〈プロフィール〉

平野ノラ 1978年東京都生まれ。OLを経験後、結婚も出産もできないことを覚悟して30歳で芸人を志す。「OKバブリー!」「おったまげー」などの決めゼリフとともに髪を左右に振り乱しながら、バブル時代のあるあるネタを披露。現在、テレビを中心に人気急上昇中。毎月第2火曜日は、中野Vスタジオにて単独ライブ「バブリー物件」を開催中。