2015年の訪日外国人観光客数は1973万7000人と過去最高を記録。小売店をはじめ、観光バス業界、ホテル業界などがうれしい悲鳴をあげる一方、「うるさい」「マナーが悪い」など困惑の声も……。
爆買いを楽しむ中国人の姿も見慣れたものになってきたけれど、2020年東京五輪に向けて、まだまだ増え続ける外国人観光客と私たちはどう向き合っていけばいいのだろうか。笑顔で“おもてなし”をするために知っておきたい日本の“宿題”とは?
「今年の春節(2月8~13日)はドン・キホーテ全体として、昨年の春節期の倍にあたる来客数でした。特徴的なのは、韓国のお客様の増加割合が最も高かったこと。客数構成費では中国を上回りました。
以前から『パーフェクトホイップ』や『休息時間』『キットカット抹茶味』が代表的な売れ筋でしたが、最近『キットカット日本酒味』や『桜さらさら』(リキュール)など日本色の強いものや、トミカなどのおもちゃの人気も伸びました。
サービス面では、決算サービスの『アリペイ』を導入し、決済の迅速化、消費金額の透明化が進み好評をいただいています。また今回、道頓堀店では和風装飾のVIPルームを設け、高額品をお求めになるお客様の接客対応もできるようになりました。
今後も、海外からのお客様が、アミューズメントとしての買い物を楽しめるようなおもてなしを課題と考えております」(御堂筋店フロアマネージャー・藤井さん)
「当初、外国人のお客様は年間4000人ほどでしたが、台湾をはじめとするアジア各国でPR活動を行った結果、2万人、5万人と増え続け、ここ数年は10万人超のお客様が来館するようになりました」
こう語るのは、オープン11年目を迎える新横浜ラーメン博物館の広報担当・八巻香奈子さんだ。
「以前は団体が多かったのですが、ここ数年は個人のお客様も増えています。台湾からはリピーターの方が多いですね」
外国人客向けのサービスとしては、各国語のパンフレットや食券機のメニューに合わせた翻訳ボードを用意しているほか、ベジタリアン向けにベジタブルラーメンを出す店舗もあり、外国人客に好評だという。
「1階には、パネル展示で海外のラーメン店の紹介を展示していますが、年表などはまだ日本語だけなんです。今後、博物館としては外国語も併記するようにしてラーメンの知識を共有していきたいですね」
関西圏と東京で美容室などを展開するフォーサイスでは、3年ほど前から外国人観光客獲得を目指しさまざまな取り組みを行ってきた。まず取り組んだのは美容師やアシスタントの語学力アップ。
英語レッスン担当の浜井恵美子さんによれば、「1週間に1クラス1時間のレッスンを、各店舗を対象に、直接出向いたり、また遠方の場合はSkypeを使って行っています」
そのかいあって、'14年に350人だった訪日客が'15年には700人を超える見込み。
「中国、香港、オーストラリア、台湾からのお客様が中心です。ホテルに英語のパンフレットを置くと効果がありますね。旅行中でもヘアスタイルは気になりますから。また、クラブで行われる外国人の交流イベントなどにも参加してヘアカットを披露し、親しくなって来店されることもあるようです」
次の目標は、東京オリンピックだと言う。
「選手村に美容室を設置したい。世界中の五輪選手のおしゃれに貢献したいと張り切っています」
全国に139店舗を展開する寿司・焼き肉・デザートなど最大130種以上が食べ放題の『すたみな太郎』チェーンでは、年間で約40万人もの外国人観光客を受け入れている。経営する(株)江戸一の岩月賢治営業企画部長はこう語る。
「国籍別だと台湾が6割で、タイ、中国、韓国が1割。全国の主要国道に面し駐車場もバス4~5台は駐車できるので、大型クルーズ船で来られるお客様にも対応できるうえにメニューが豊富なので、さまざまな好みにも応えられるのがポイントです」
食べ放題だから一番人気は寿司か焼き肉なのかと思いきや、そうではないらしい。
「いや、人気ナンバーワンは、綿菓子なんですよ。外国の方は自分でやってみるという体験が好きなんです。2位は豚カルビで、3位は卵焼きといなり寿司。そういう原価の安いメニューが人気です(笑い)」
バイキングという手間のかからないスタイル、さらに「体験できる食」が、外国人客の家族連れにも人気を集めている。
レーザー治療で知られる美容皮膚科のシロノクリニックでは、中国語版のホームページを作ったことがきっかけで中国人客が増えたという。さらに、中国のSNS『微信』で情報を流したことで、毎月10人以上の中国人観光客が訪れるようになった。
「1回の平均単価は50万~60万円。みなさん顔のたるみやシワをとるコースを選ばれますね。中国で同じ施術をすると、この2倍~4.5倍の料金になるらしく、2、3か月に1度のペースでいらっしゃるお客様も」(広報・藤垣貴子さん)
このため、クリニックでは、新たに中国人の通訳を雇用し、また大阪などの店舗でもSkypeを使った通訳サービスを利用するようにしているという。
「今後は、待ち時間に治療の様子をムービーで見ていただいたり、Wi-Fiを完備したり、さらにサービスを改善していく予定です」