【好評連載・フィフィ姐さんの言いたい放題】“保育園落ちた日本死ね!!!”というタイトルのもと、匿名にて訴えられた保育園不足の現状。仕事と子育てを両立しようとする世のお母さんたちが、いかに厳しい状況に立たされているのか、この一件から見えてくる問題点を自らの経験を踏まえながらフィフィは指摘する。
匿名の声は政府に届かないのか?
2月15日、はてな匿名ダイアリーに投稿された“保育園落ちた日本死ね!!!”というタイトルの記事が波紋を呼び、国会でも取り上げられました。
国会前での抗議活動もあり、最終的には待機児童の受け入れに関する政策を進める姿勢を見せましたが、当初政府は、匿名の記事のため内容が本当なのかどうか確かめようがないと弁明したんです。匿名だから信憑性がないという言い訳は、政府は匿名の声などは聞き入れませんといっているのと同じことです。
しかし世の中には、匿名だからこそ発することのできる本音の声というものもあります。
もちろん、この投稿の文章は、保護者の文章としては言葉遣いが過激すぎるといった問題点もあると思います。だけど、このような一種炎上商法ともいえる手法を取らなければ、声が広がっていかないということもまた事実なんです。
5、6年前に、私が「待機児童」問題に迫る番組の企画で江東区を取材した際に、保育士さんたちの待遇が良くないという声をよく耳にしました。
そして、あらたにマンションを建てるときに、その購入者を増やすため、マンションの下に保育所を積極的に設ける業者が増えてきました。本来は、政府や自治体がしなければならない対策が、すべて民間任せになっていたんです。
この頃と比べ、こうした状況が改善されているとは思えません。政府は早急に対応するとはいっていますけれど、果たしてどうなのでしょうか。
今回の件から見えてくる本当の問題点とは?
そして今回の件を受け、精神科医の香山リカさんは、毎日新聞に“私に子どもはいない。でも言わせてもらおう。保育園落ちたの私だ”というコラムを寄せました。
待機児童の問題は立場の違いに関係なく、何事も当事者意識をもってとらえるべきだという趣旨だったのかもしれませんが、精神科医として彼女が指摘すべきポイントはもっと別のところにあったはずです。
つまり、保育園に入れないという通知が来たときの、世のお母さんたちの心理的ストレスの大きさに目を向け、その発せられた危険信号の重大性こそを訴えるべきだった。
精神科医たるもの、心理を読み取り、危険なサインだと気がついて、それを政府や社会に訴えるべきなのに、今回のコラムでは単に政権批判に利用した印象になってしまったのは残念ですね。
以前、バケツに入った氷水をかぶって難病寄付を訴えていたアイス・バケツ・チャレンジのときと同じような印象をうけますが、こうして安易に便乗して騒ぐ人々が出てくることで問題の本質が霞んでしまうんですよ。
《構成・文/岸沙織》