役者人生ひと筋、これまで数多くの作品に出演し、唯一無二の存在感を放ってきたベテラン俳優・柄本明(67)。
「年をとるごとに、自分の仕事がますます何かわからなくなっていく。経験を重ねれば、役者というものが何なのか、理解して簡単になっていくと思っていたんですが……。どんどん難しくなっていくもんです。でも、その“わからない”っていうのがまた面白い!」
映画『モヒカン故郷に帰る』では、余命わずかの頑固親父という役柄ながら、悲哀と滑稽さを織り交ぜたコミカルな演技で魅了する。
――今回、瀬戸内海のとある島で撮影されたということですが。
「島での撮影は1か月くらい。のどかな場所でしたね。僕が中学校の吹奏楽部員に指揮するシーンがあるんですが、その部員役も島の子たちに協力してもらいました」
――初めての指揮ということですが、いかがでした?
「もともとクラシックが好きなので、“指揮者ってカッコいい!”って、気持ちよく棒を振っていたんですが、その撮影から1か月後くらいに右手が痛くなっちゃって。時間差でガタが来ましたね(笑い)」
――作品では、“永ちゃん狂”のお父さん役。ご自身が好きで好きでたまらないものって何ですか?
「シンガー・ソングライターの高田渡が好きでした。もう亡くなりましたけど。追っかけやっていましたよ。歌うんだか歌わないんだかわからない、でもそれが魅力! あと映画が好きで、よく見に行きます。映画館が好きなんです。それは息子も同じで、映画館でバッタリ会ったりも」
――柄本さんと言えば、長男の佑さん、次男の時生さんも俳優として大活躍。
「活躍しているかどうかは、世間様が決めることでしょう。でも需要があるっていうのはすごくありがたいこと。役者っていうのは“潜在的失業者”。そんな中で仕事をいただけて、ただただ感謝ですね」
――佑さんは今年、エランドール賞で新人賞を受賞されました。おめでとうございます。
「ありがとうございます。嫁さん(安藤サクラ)も日本アカデミー賞(最優秀主演女優賞)をいただいたということなので、近所でごはんでも食べようって話はしているんですが、まだ実現してなくて。近々お祝いしたいと思います」
撮影/坂本利幸