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 EXILE、三代目J Soul Brothersのパフォーマーとしてステージで輝きを放ちながら、俳優としても着実にステップアップを続ける岩田剛典。 彼にとって特別な作品のひとつとなった初主演映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』が6月4日に公開される。

「今朝はサンドイッチを食べました。用意していただいた。最近、料理はしないですね。今年に入ってから包丁を手にしたのは、カラスミを切ったときくらい(笑)」

《よかったら僕を拾ってくれませんか? 噛みません、しつけのできた良い子です》

 仕事もプライベートもうまくいっていないヒロインのさやか(高畑充希)が、マンションの駐輪場に空腹でうずくまる樹を拾うことから始まるラブストーリー。原作の有川浩曰く“豆柴のよう”な愛らしさを持つ岩ちゃんが見せる樹の無邪気な笑顔で、一瞬にして作品の世界に引き込まれていく。

「“拾ってください”って、自分なら言えないです。というよりも、あそこはファンタジーの部分なので(笑)。樹って、比喩を使った甘いセリフが多いんです。それを、いかに会話の中で自然に話すかということには苦労しました。

 僕なら、まず思い浮かばない言葉だし、“素”ではとても言えない(笑)。ふだんは、どちらかと言えばストレートな表現をすることが多いです」

《頑張れさやかって、入浴剤が言っているよ》

《好きなのって、オレの料理だけ?》

 キュンとする言葉だけでなく、植物オタクの樹は家事も万能。野草を使った料理で、身体も心も元気づけてくれる。

「今回、いろいろな方から料理の質問をされるんですが、申し訳なくなるくらい、最近は何もできていなくて。時間があるときは、得意なカレーを作ったりしていたんですけど。ひとり暮らしなので、当然、家事全般はやります。中でも、洗い物は得意。小さいころ、食べたあとの洗い物は兄弟と一緒にやっていたので、手際はいいと思います」

 そう謙遜するが、作品の中で披露している料理シーンは、なかなかの腕前。

「料理人っぽく見える動きや仕草は研究しました。料理のシーンは、アップで使われているものも全部、僕の手。そのぶん、何回も作りましたね。腕が筋肉痛になるくらい。何テイクも炒め物をしたし、オムレツは50個くらい作りました」

■逆にリアルな感じでいいのかな

 作品を見ていて羨ましいと思うのが、樹がさやかのために作る、四季を感じる愛情あふれるお弁当。これまで、誰かにお弁当を作ったことは、ある?

「ないかもしれない。自分のためにもないです。この作品で作ったものが、初めて。学生のころは、母親が作ってくれたお弁当をよく食べていました。料理上手な母のきんぴらが定番で入っていた。今回、改めてお弁当っていいなと思いました」

 今作の樹のように、料理のできる女性に惹かれると言う。

「一見、できなさそうなのに、筑前煮とか作れちゃうギャップのある人には、特に」

 初主演映画で、初のお弁当作り。そして、さやかの誕生日には、初生歌の披露となるバースデーソングでお祝いするシーンが。

「確かに、僕の歌声が聴けます(笑)。なかなかないことなので、恥ずかしいです。あのシーンは、いま見ても緊張しているのが伝わってくる。それが、逆にリアルな感じでいいのかなと思って(笑)」

 半年という期間限定の同居人であるふたりの距離は、時間を重ねるごとに近づいていく。それでも、樹はさやかに野草の話はしても、名前以外のことは秘密にしている。

「樹のバックボーンに共感できる部分はありました。1度きりの人生だから、自分の道を歩みたいっていう気持ちは、ひとりの男として純粋に理解できる。それに、自分自身をレベルアップさせるために時間を使うことは、まったく悪いことだとは思わない。でも、やり方次第ですよね。僕は、樹みたいな行動はとれないです」

 お互い心にブレーキをかけながらも、あふれ出てしまう思い。そして……。この場面で見た、今作の中で特に印象に残るシーンのひとつが、三代目JSBの『C.O.S.M.O.S.~秋桜~』のミュージックビデオの場面と重なったことを伝えると、こんな返事が。

「あぁ、懐かしい。カメラ目線のところに、布がふわっとかかっていて。確かに、そうですね。監督から、こういうシーンをやるのが初めてでしょって言われて“2度目です”って言った記憶があります(笑)。

 あの場面、セリフがほとんどなくて、ほぼアドリブだったんです。だから、現場の空気感がもろに出ている。ちょっと恥ずかしいシーンでもあるんですが、試写で初めて見たとき、芝居に見えない感じがして、すごく自然だなと思いながら見ていました。台本を読んだときは、こんなに印象的なシーンになるとは思わなかった」

■俳優は場数を踏んでいくことが必要

 今作を「見たら恋をしたくなる映画」と語る。まさに、そのとおりの作品となった。

「樹という役は、いましかできないキャラクターだと思う。だからこそ、こういう役柄に挑戦させてもらえたことは、俳優としてステップアップできる、プラスの経験になった。初主演作で、この映画に出会えてよかったと強く思います。

 やればやるほど、俳優って、場数を踏んでいくことが必要だと感じます。僕は、(役柄への)“当て感”って言っているんですけど、経験値が上がるほど、それがわかってくる。

 声のトーン、表情、視線。画面に映っているときに無駄な動きをしないとか、俳優のみなさんが当然のようにやられていることが、ようやく少しずつできるようになってきたと思っています」

 撮影が行われた昨年の6月から7月にかけては、三代目JSBの初のドームツアーの真っただ中。パフォーマーと役者の切り替えは、大変だったのでは?

「こうやってというものはないんですが、なんとなく切り替えていました。役者としての経験が浅いからか、撮影現場に行っても本番になるまで完全に役に入り込めないんです。監督から“テストをすると心配になるときがある”って言われるくらい(笑)。本番ギリギリまで動きを考えたり、監督と話をしていました。

 役者もパフォーマーも、極めるにはすごく険しい道だと思う。まだまだ遠いですが、誰かの勇気や希望になれる“スーパースター”という夢に、少しずつ近づいている気はします。

 今回、女性が憧れる王子様のような役を演じたことで、このキャラがひとり歩きしてしまわないかって少し心配もあります。でも、次の映画『HiGH&LOW THE MOVIE』(7月16日公開)が、まったく印象の違う作品なので、ラッキーだなって。もっといろいろな役柄を演じて、表現の幅を広げていきたいです」

映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(6月4日全国ロードショー)

 クランクインは、昨年6月13日。約1か月半かけて行われた撮影。大人気のふたりが主演ということで、天候不良でスケジュールが延びると大変なことに! ピリピリとした現場だったのでは? と思うのだが、違ったよう。ふたりの人柄のような、温かな空気に包まれていた。

撮影/廣瀬靖士