ぜいたくしているつもりはないのに貯蓄が増えない、夫が自営業で退職金ゼロだから老後が心配……という人は少なくないだろう。そこでお金のプロが問答無用のダメ出し&貯まるテクを伝授してもらった。
「“お金では幸せは買えない”。もちろんそうですが、左右することはあります!」
そう断言するのは、ファイナンシャルプランナーとして今まで1000件以上のお宅の家計見直しを行ってきた黒田尚子さん。充実した人生を送るためのツールであるはずのお金が、多くの家庭を振り回している。
「保険や投資、節約術……。巷にはお金に関する情報がたくさんありますが、やみくもに飛びついてはダメ。各家庭のマネープランに合ったものを取捨選択しなければなりません」
上手にお金と付き合えている家庭は、家計管理がとてもシンプルだと黒田さんは言う。
「貯蓄に具体的なゴールを設定して、あとは計画どおりに貯めていくだけ。すると、まっすぐ貯蓄に突き進んでいけるものです。また自分のマネープランがはっきりしているから、保険や節約方法などでも最善のものをスムーズに選べるようになります」
【コツ1】月収から費目別の適正支出を知る
「手取り月収にパーセントをかけて、各費目の適正出費を出してみて。お金をかけすぎている費目が一目瞭然!」(黒田さん)
当たり前に思っていた出費が実は高すぎている場合がよくある。
「例えば、保険料や教育費などは少なすぎるのも心配ですが、家計を圧迫していては意味なし。払いすぎの費目は適正出費に抑え、余った分はすべて貯蓄へ。“見直し費目”を探し出して!」
子どもの年齢によっては、割合が変わる費目も。
「お子さんが小学生以下なら上の表(※Webでは削除)どおり。ですが、中高生以上になると教育費は12%に増え、貯蓄は8%に減ります。これは中高生以上になると教育費がかさむため、貯蓄を減らさざるをえないということ。子どもが中学生になるまでが、しっかり貯蓄できる時期と思ってください」
【コツ2】ざっくりでもいいから各費目の支出を知る
「理想の家計バランスと自分の家計を比べようと思ったけど、そもそも毎月どれくらいお金を使っているのかわからない……。そんなお宅は、要注意ですね!」
ちゃんと貯蓄できないいちばんの原因は、家計のバランスが大きく崩れているから。なぜバランスが崩れてしまうのか? それは、毎月の支出を把握できていないからだと黒田さんは言う。
「支出を把握するのにもっとも効果的なのは、やはり家計簿づけですね」
“三日坊主で終わった”という、苦い経験のある方も多いのでは?
「では、買い物したら必ずレシートをもらう習慣を身につけてください。それを月末に費目ごとにノートに貼って、合計金額を出してください。1円単位できっちり計算する必要はありません。最近では使い勝手のいい家計管理アプリもあるのでオススメ。自分がラクにできるものなら何でもいいのです。大事なのは、ざっくりでもいいから各費目の支出を知ること!」
おおよその支出状況が把握できるようになると、“今月は外食に行きすぎかも”など自分なりに出費をセーブできるように。
「とりあえず今月分の支出を出してみて。“コンビニでこんなに使っていたの!?”なんて、気づきがあるはず」
費目ごとに封筒を作り、レシートを入れていくと仕分けが簡単に。
「少し手間をかけるだけで、あとがとってもラクです」
【コツ3】固定出費を見直して削れるところを探す
毎月、必ず出ていくお金を固定出費という。
「月3000円カットすれば、年間で3万6000円と効果は大きいです!」
まずは通信費から見直していくのがおすすめ。
「固定電話代にネット代、スマホ料金で、月数万円も支払っている家庭もあります。スマホの料金プランを見直す、ネットとスマホのセット割を活用するなど、できるだけ圧縮すべき」
携帯電話を今流行の“格安スマホ”に変えるだけで、出費が5~6分の1に。電話番号も変わらないので、検討してみる価値あり。
“子どものため”と膨らみがちな教育費が家計を圧迫しているケースも多いと黒田さん。
「気持ちはわかりますが、教育費がもっとも自分たちの老後のお金を脅かす費目のワースト1位! 予算の範囲内で収まるよう進学コースや塾を選ぶのは難しいでしょうが、常に費用の上限を意識するように心がけて」
また“住宅ローンの金利が低いうちに買ったほうがいい”と、頭金ゼロでマイホーム購入に走る人が続出。
「毎月のローン返済ができなくなり結局、手放す家庭も少なくありません。無謀なマイホーム購入より、賃貸で頭金をコツコツ貯めること。そのほうが圧倒的におトク!」
【コツ4】貯蓄の具体的なゴールを明確にする
「“とりあえず貯蓄しとけばいいんでしょ”と思っているあなた! ちょっと甘いかもしれませんよ」
しっかり貯蓄している家庭のほとんどがやっている習慣があると言う。
「それは、貯蓄に『目標金額』『期間』『目的』を明確にしていること! 具体的なゴールを設定すると、貯蓄のモチベーションがずっとキープできるんです」
家計簿をつけるとムダな出費に気づくように、貯蓄も具体的なビジョンがあると見えてくるものがある。
「例えば、子どもが大学に行くとき、遠方の学校であれば生活費の仕送りが必要な場合も出てきますよね? 予想していなかった“将来の支出”に気づき、それに備える─。家族の夢から逆算して具体的なイメージを持って貯蓄していくことが幸せへの近道なんです」
イラスト/シライ カズアキ