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 NHKスペシャルの放送をきっかけに、広く知られるようになった『腸内フローラ』。最近は、テレビ番組や雑誌で『口内フローラ』『肌フローラ』が取り上げられ、目にすることが増えている。

「腸内細菌の種類は、赤ちゃんが生まれてから1年以内にほぼ決まります」

 そう教えてくれたのは、“腸博士”として知られる東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生。

 これまで、腸には100種類100兆個の細菌がいるといわれていたが近年、遺伝子解析によって3万種類1000兆個がすんでいることがわかった。

「100種類は(実験で)便を培養して、生えてくる菌の数でした。しかし、培養しても生えてこない菌が驚くほどいることがわかり、しかも重要な働きをしているということが、ここ数年で明らかになってきました」

 腸内細菌には、善玉菌の乳酸菌・ビフィズス菌、悪玉菌のブドウ球菌、大腸菌(有毒株)のほか、日和見菌といわれる嫌気性レンサ球菌、大腸菌(無毒株)などがいる。

 生後1年以内で決まってしまう腸内細菌は、その後、ほぼ一生変わることがないが、食事などで、バランスを変えることはできる。

 理想的な割合は、善玉菌・悪玉菌・日和見菌が2・1・7とされる。菌の重さは、成人で2kgになる。

 腸内細菌は、年齢とともに変化して、生後10か月ごろをピークに増え、成年期、老年期でバランスが変わってくる。加齢によって、悪玉菌は増える傾向があり、大腸がん、糖尿病、認知症、高血圧、肥満、アレルギーといった、さまざまな病気の原因になっている。

「腸内細菌は、自分の縄張りを荒らされないために、いろんな病原菌を追い出し増殖させないようにします。細菌が少ないと、病原菌を追い出すことができないので、病気を引き起こします。

 もうひとつ大事な働きにビタミンの合成があります。腸でしかできないので、細菌が少ないと、肌あれや神経痛の原因になります」

 病気にならないためには、腸内環境を整えるのが大切で、カギとなるのが、細菌のエサとなる食べ物だ。

 善玉菌が好むのは、低カロリー、高食物繊維の食材。野菜や果物、豆類、海藻、きのこ類は、腸の蠕動を促し、便秘になりにくくする。

 納豆、チーズ、ヨーグルトなどの発酵食品、はちみつや、バナナなどオリゴ糖を含む食品も、善玉菌のエサとなる。

 一方、悪玉菌が好むのは、高カロリー、低食物繊維の食べ物。例えば、揚げ物過多の食事や食品添加物を摂取しすぎるのは要注意。動脈硬化や糖尿病などの生活習慣病につながる可能性が高い。

 喜寿を迎える藤田先生は、55歳のときに重度の糖尿病と診断された。それをきっかけに、主食のごはんや、好物のチャーハン、ラーメンなどを控える糖質制限食に変更した。その結果、血糖値が下がり、糖尿病が改善し、現在も続けている。

 そうした自身の経験から、こう語った。

「炭水化物は、アスリートや子どもをつくる世代には、必要ですが、50歳を過ぎたら控えたほうがいいです」

◎教えてくれたのは藤田紘一郎先生

東京医科歯科大学名誉教授。医学博士。東京医科歯科大学卒業。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。著書に『脳はバカ、腸はかしこい』(三五館)『最新!腸内細菌を味方につける30の方法』(ワニブックス)