物忘れが増えてくると心配なのが認知症。しかし、実は認知症予備軍と言われるMCI(軽度認知障害)の段階で対応すれば、認知機能の回復も期待できるという。脳をイキイキさせる生活習慣について脳の専門医・田澤俊明先生(新都心たざわクリニック院長)に聞いた。
・15分程度の昼寝をする
睡眠不足は脳を疲労させ、老化の原因に。
「脳にも休養と気分転換が必要です。特に15分程度の昼寝は効果的。眠くなったらサッと目をつぶって眠りましょう。脳がリフレッシュし、働きがよくなります」
ただし、30分以上の昼寝は×。脳の働きがにぶるだけでなく、夜の睡眠の障害に。
・食後は必ず歯磨きをする
しっかり噛むことは、記銘力を上げ認知症防止に。
「虫歯があるとよく噛めませんので、きちんと歯磨きをして予防することが大事です。また、健康な歯でよく噛むことができれば、食事が美味しくなり、よりよい刺激を脳に与えることができます」
虫歯がある場合は、すぐに治療を!
・朝は日光を浴びて散歩する
大腿筋を使うウォーキングは、効率的に脳に刺激を与えられる運動のひとつ。加えて、
「明るい光を浴びれば、脳全体にセロトニンが分泌。朝から脳の働きがスムーズになります。また、同じ時間に散歩をすることで、人間本来のサーカディアンリズム(概日リズム)である1日=25時間をきちんと24時間にリセットすることが可能。脳も身体も健やかに過ごせます」
・毎日、化粧をする(女性の場合)
「美意識を刺激することは、脳にも効果的。毎日の化粧は前頭葉を鍛え、表情がイキイキし、より美しく行動的に過ごせます」
認知症患者に化粧を施すと、洗顔やトイレなど自分でできることが増えるとも。
「まったく化粧をしなければ、脳の機能が低下するだけでなく、うつ病など精神面のトラブルにつながることがあります」
・鏡の前でニッコリ
気持ちを明るく持つことも脳を若々しくするポイント。笑顔をつくると、通称“快感神経”と呼ばれる神経が刺激されてドーパミンが分泌。やる気がグッと湧いてきて、外出や習い事など脳に刺激を与える生活につながっていく。
「表情筋を動かすこと自体も脳によい刺激を与えてくれますよ」
・ミカン、レモンなどの香りをかぐ
嗅覚は、脳の内側にある大脳辺縁系にダイレクトにつながる感覚。
「特に、柑橘類で嗅覚を刺激することは、記憶力回復の近道になります」
また、柑橘系だけでなく、好きな香りを見つけて楽しむのも◎。幸福感が得られてストレスが軽減し、脳にとってよい状態となる。
・朝食に甘いものをプラス
脳の栄養源はブドウ糖。特に朝食では、脳を元気で働かせるべく甘いものを加えて。
「ハチミツや果物を積極的に取り入れるようにしましょう」
また、魚を多く食べる人はアルツハイマー型の認知症の発症が少ないとも。
「DHA、EPAを多く含むイワシやサバなどを食べることはよいですね。でも、もっとも大切なのは、栄養のバランス。偏食なく食事をするのが健康な脳をつくりますよ」
◎教えてくれたのは脳の専門医・田澤俊明先生
新都心たざわクリニック院長。日本脳神経外科学会評議員・専門医。脳外科医として3000例という豊富な執刀経験を持つ。現在は脳卒中防止のために尽力。日本体育協会公認のスポーツドクターでもある。著書に『脳は死ぬまで進化する』(主婦の友社)など