セブン‐イレブンの人事騒動や、ファミリーマートとサークルKサンクスの9月統合などで話題を集めるコンビニ。顔ともいうべきPB(プライベートブランド)商品の人気の秘密を検証した。

「セブン-イレブンのテレビCMのキャッチフレーズでもわかるように“あいててよかった”という緊急購買から、“近くて便利”な日常使いに変化したコンビニは、一律で横並びだった印象から、消費者ニーズに合わせて変わってきています。特にシニアや働く女性向けになっています」

 そう話すのは、流通アナリストの渡辺広明さん。

 シニア層と、子育てや仕事に忙しい女性たちを意識したものとして、近年、コンビニ各社が力を入れているのが地域密着型の業務。インターネット通販や宅配弁当、ご用聞きサービスなどを展開している。

 例えば、セブン-イレブンの『セブンミール』は、ネットでの登録が必要で、入会金や年会費などは無料。500円以上の注文から無料で自宅に配達してくれる。1人前から注文でき、弁当、惣菜セット、PB商品のセブンプレミアムが買える。店舗によっては、ネット注文した商品を店頭で受け取ることができる。

 “ローソンのネットスーパー通販”『ローソンフレッシュ』は、ネットで会員登録し、生鮮食品、日用品、医薬品がそろう約13000商品から注文ができ、利用料や月会費は無料。首都圏の場合、5000円以上の注文で送料が無料になる。配送は、最短で翌日だが、曜日や時間指定ができる。

 高齢者向けサービスについても充実を図っている。

 ファミリーマートは、子会社が運営する高齢者専門の宅配弁当『宅配クック123』で、東京(豊島区、文京区)や神戸市などの12店舗でサービスを展開する。

 注文は電話で、1食だけでも可能。宅配料は無料。弁当と一緒に、専用カタログに掲載されたファミリーマートの商品や高齢者には負担が大きい米や水の重い物以外に、電球や大人用おむつなども届けてくれるうえ、見守りの安否確認も行っている。

 ローソンは、店内に介護相談窓口とサロンを併設した店舗を、埼玉県、新潟県、大阪府、山口県、福岡県で6店舗を展開。ローソンの標準的な品物に加えて、介護食や小分けした惣菜、生鮮品、菓子などをそろえている。

 また、高齢化や過疎化が進む地方自治体と提携して、広島県や佐賀県では、食品や生活用品を取り扱う移動販売を実施し“買い物難民”解消に取り組んでいる。

 超高齢化時代に、買い物難民は地方だけでなく都会でも社会的な問題になっている。そのため政府は、商店の建築が原則禁止されている「第1種低層住居専用地域」でのコンビニ出店規制緩和の方針を示した。

 しかし、閑静な住宅街に、利便性がよくても、24時間営業のコンビニができるのは、課題もありそうだ。

 宅配や見守りサービスに加えて、行政サービスも利用可能に。

 店内に設置されたマルチコピー機では、一部エリアの行政の各種証明書(住民票217市区町村、本籍地の戸籍証明書2市)の交付を取得できる。今後、マイナンバーの普及とともに拡大が見込まれ、ライフラインの役割も担う。

「業態だけでなく、会社や売り場、PB商品にも変化があります」(渡辺さん)

 業界NO.1のセブン-イレブンは、人事をめぐって“コンビニの父”といわれた鈴木敏文会長の電撃退任で注目された。カリスマの引退や業界再編の動きで、競争が激化することが予想されている。

 ローソンは、スリーエフと資本業務提携し、スリーエフの一部店舗を新ブランド『ローソン・スリーエフ』に転換する。

 ファミリーマートは、9月をめどにサークルKサンクスと経営統合する。その結果、『サークルK』『サンクス』の看板が消えることに。経営統合によってセブンの18572店に次ぐ店舗数になり、ローソンを抜いて2位になる。

 追い上げを受けるローソンでは7月から、1店舗で扱う商品をこれまでより500品目増やして、約3500品目にする。商品の充実を図り、消費者ニーズに応えるとともに、ライバルに対抗する。

 独自路線を走るのはミニストップ。創業以来、コンビニエンスストアと、店内加工ファストフードを融合させた“コンボストア”という業態で、ほかのコンビニとの差別化を図ってきた。

 ソフトクリームやパフェ、ホットドッグなどのオリジナルファストフードが人気だが、今後は、健康を軸として商品の品ぞろえを強化。食品以外に、無添加の石けん、シャンプー、オーガニックの嗜好品などの展開を予定している。

 売り場の変化では、各コンビニでイートインコーナーを設ける店舗が増えたり、店内を、女性をターゲットにしたレイアウトに変更する動きがある。

「最近は、個店別対応になりますが、店頭での野菜販売を強化したり、花を販売したり、お酒の種類が豊富だったりと、地域顧客に合わせた個性的なコンビニも増えています」(渡辺さん)

■首都圏中心に拡大するミニスーパー

 セブン-イレブンが、'07年から展開するPBブランド『セブンプレミアム』をきっかけに、大手メーカーと組んで開発された商品を、手ごろな値段で買えることから人気を集めたPBは、各コンビニで主流になった。

「PBは差別化するためだったが、各社、横並びになった結果、パッケージが均一化し、同質化してしまった。いち早く新商品が並んだコンビニならではのワクワク感や宝探しのような魅力が消えつつある」(渡辺さん)

 最近はNB(ナショナルブランド)といわれる大手メーカー名を表記する『ダブルチョップ方式』が取り入れられている。

「コンビニでは毎年、5000品近い新商品が発売されています。入れ替わりが激しく、NBでも商品棚に残れないので、PBと組むことで、安定して中長期的に商品を販売することができます。

 一方、ダブルチョップ方式のPBは消費者にとってなじみのNBの商品を独占的に取り扱うことができるので、コンビニ側にとってもメリットがあります。ただ、メーカーにとっては、培ってきたブランドの魂を売ることにもなります」(渡辺さん)

 渡辺さんによると今後、食品ミニスーパーが、コンビニのライバルになる可能性があるという。

 飲料や食料品を中心に生鮮3品(野菜果物・肉・魚)を扱う小型のスーパーマーケットで、首都圏を中心に展開し、ミニストップと同じイオングループの『まいばすけっと』や、サークルKサンクスと同じユニーグループの『miniピアゴ』などがある。

 '05年創業のまいばすけっとは、'15年には600店突破、3000店体制に向けて出店を加速させている。

「例えば、同じジュースがコンビニで150円のものが、ミニスーパーでは90円前後で買える。コンビニより小さめだが、70~80円台のおにぎりが売れているなど、価格の安さは魅力だと思います。今後、全国展開していけば、コンビニを脅かす存在になるかもしれません」