先日、最終回を迎えたTBSドラマ『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』。中谷美紀演じる主人公、アラフォー婚活女子が好きな人と結婚するために奮闘する姿が話題を呼んだ。今や「結婚したい!」という思いに、年齢もタイミングも婚歴も関係ない時代。20代から70代までの婚活女子が探し求める「出会い」、そして「幸せ」とは?
「ここ2、3年は男女問わず、20代からのお問い合わせやお申し込みがグンと増えましたね。そのせいか、最近では20代女性からの申し込みでも断られるケースが出てきて、若いという理由だけでモテる時代は終わったのかと相談員仲間で大きな衝撃を受けました」
そう語るのは、結婚相談所『ララストーリー』のベテラン仲人、須坂るみさん。結婚相談所は、正式なお見合いをさせてくれるところだが、費用は通常10万円以上。
数千円で参加できるお見合いパーティーや、ネットで相手探しを行う“結婚情報サービス”に比べると高価なために、これまではいろいろなサービスを利用した後に頼る“最後の砦”というイメージがあった。
しかし今や、20代の早いうちから相談所に入る女性が増えている。お見合い以外のより安価な婚活には、さらに多くの若い層が参入し始めているようだ。
「今の職場で出会いがあるとは思えないから」(25歳・講師)
「恋愛下手なので、今後恋愛ができるとは思えないから」(29歳・メーカー)
「30代で独身の先輩たちを見ていると、婚活に苦労しているから」(24歳・IT)
などの理由で、20代女性は婚活を始めている。
私が結婚や恋愛について取材を始めたのは2005年だが、当時は「結婚よりも恋愛」のニーズがより高かった。「恋愛の先に結婚がある」と素直に信じる人たちが多く、「まずは恋愛を」というムードの中、書店には「モテ本」が並んでいた。
しかし未婚率の上昇が指摘され始めたのと時を同じくして、「恋愛が自然発生するのを待っていては、いつまでも結婚できない」とする考えが広まり、婚活という言葉が生まれ、さまざまなサービスが選べる状況になっている。
■移住ツアー婚からミスチル婚まで!?
イマドキの婚活はどんなサービスがあるのだろうか。真剣度と費用の高低を加味して図にしたのが上の表である。真剣度・費用ともにいちばん高いのが結婚相談所(お見合い)で、初期費用として10万円以上、成婚料などを含めると結婚までに40万円前後かかるのが普通。
ちなみに、最近のお見合いは仲人さんが相手を見繕う従来のスタイルから発展、複数の相談所同士がネットワークでつながり、会員を共有することで数万人の中から相手を探せるシステムになっている。
一方、ネットを通じて相手探しを行う「結婚情報サービス」は月会費3000~5000円台が中心。1回ごとに参加できるお見合いパーティーや街コンの参加費も女性は3000~5000円程度。よりカジュアルなスマホを使った出会いサービスは、女性無料を謳うところも多い。
だが男女の参加費に著しく差のあるサービスは、婚活には不向きな面もある。例えば女性の参加費が安価なものは、若い女性を呼び込みたいとの狙いがあり、結婚目的というより、単に「若い女性と知り合いたい」男性が多く参加する。
逆に、女性の参加費が高い「医師や弁護士など高収入男性」の参加を謳うパーティーは、男性の参加費が無料に近く、「好みの女性がいなかったら、また来ればいい」(36歳・歯科医)と真剣度の低い男性の参加が多くなる。
そのほか、参加した男女が親密になれるように、一緒に作業をする“料理婚”や“ワイン婚”、“ゴルフ婚”など趣味やスポーツを押し出したサービスや、お見合いバスツアーや地方男性との結婚を視野に入れた移住ツアーなども話題になっている。
さらに、異性と接するのが苦手な人向けに、好きなアニメについて語り合う“アニメ婚”や一緒にゲームをする“モンハン婚”、特定アーティストにちなんだ“ミスチル婚”なども生まれている。
■「出会う」から「知り合う」へ
しかし婚活サービスの種類が増えても、実際の結婚率は上がらない。'10年の国勢調査では50歳時点での未婚率を表す“生涯未婚率”が男性約2割、女性1割に達した。婚活に疲れを感じる人たちも現れており、「婚活疲れ」なる言葉も生まれるほど。
自身も婚活を経て、結婚相談所『きららマリッジ』を開いた山本結子さんはこう語る。
「婚活は受験や就活などと違って、いつまでにやめなければならないというものではないので、結果が出なくてもエンドレスに続けられる。だから、疲れがたまりやすい。また“お断り”の理由が本人に伝えられないので、自分のすべてが否定されたように思えてダメージを受けやすいんです」
山本さんはくじけがちな婚活女性を対象に、相談所の活動とは別に去年から『恋愛力アップ朝会』を開き、相談に乗り始めている。
悩む男女が増えたのは、婚活が長期化する傾向になったためでもある。その理由のひとつは、婚活を「出会いのツール」ではなくて、「人を選別するツール」のごとく扱ってしまう人がいるからだろう。人と人との関係は本来、時間をかけて築きあげてゆくものだが、1回で答えを出そうとする婚活では、相手を「いい」「悪い」の直感で一刀両断しがちになる。
その背景には、「大勢の参加者がいたほうが儲かる」という業者の思惑もあるだろう。とりわけ男性は、「大勢の女性に会えたほうがお得」と考える人が多く、業者の思惑を後押ししがちだ。
こうした状況の下、営利にとらわれない自治体の動きにも注目が集まっている。国が'14年の補正予算で、少子化対策として30億円を投入したため、各地で行われていた婚活支援の規模が大幅にアップしたのだ。
例えば、新潟県では、前年までの婚活支援予算が100万~200万円台だったのに加えて、'15年度には4600万円のプロジェクトを追加。
「以前から行っている『にいがた出会いサポート事業』では、カップル成立から成婚に至る割合が低かったので、成婚に結びつけるためにはアフターフォローを含めた“世話焼き”が必要だと考えました」(新潟県福祉保健部)
地方自治体が行う婚活支援は、地方創生の要素もあるため、より熱心に取り組まれている。若者の移住や定住を促すための工夫を組み込む支援も多い。
また、婚活当事者の世話を焼く“第三者”を介在させる取り組みは、自分で相手探しをするのが売りだった結婚情報サービスなどの民間でも出始めている。
昨年はYahoo!JAPANがパートナーエージェントと提携して“相談機能”をつけた『Yahoo!婚活コンシェル』というサービスを開始。『ゼクシィ縁結び』も結婚相談カウンターを設けた。
一方、一期一会となりがちな婚活の弱点を補うべく「何度も会う機会を提供する」婚活サービスも注目を集めており、複数回の参加義務がある趣味の講座や教室、「どんな人生を送りたいかを真剣に考える」ライフプラン講座などが新たに登場してきている。
さらに、結婚相手紹介サービス大手『ツヴァイ』広報担当の才村さんはこう話す。
「相談員や仲人が介在する昔ながらのお見合いは、50代以上の層に見直されているんですよ」
50歳以上の会員数は、'00年度から'15年度までにおよそ4倍に増えているとか。このほか、シングルマザーを対象としたお見合いパーティーも盛況だ。
取材・文/にらさわあきこ 図/イケウチリリー