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 共働き夫婦の増加などを背景に、“孫育て”に奮闘する祖父母世代が増えてきた。親世代とのしつけの違いや、お互いへの不満の解消などを目的に、シニア向け指南書を発行する自治体もある。両世代が歩み寄り、協力し合って子・ 孫を育てていくために大切なことは?

 祖父母世代が、介護の必要性がなく元気であればこそできる“孫育て”。自分たちも子育て経験者だけに、率先して手助けしてくれる。

「子育て法は年々進化している。祖父母こそ、今の時代の子育ての仕方に合わせるべきだと思います」(子育て本を執筆している立石美津子さん)

 例えば、昔は、あせもの予防にベビーパウダーが使われていたが、現在、産婦人科はすすめない場合も。立石さんが解説を加える。

「昔は衛生用品も多くなくパウダーくらいしかありませんでした。今では赤ちゃんの毛穴がふさがってしまうため使用しないほうがいいという医者もいます。子どもは皮脂が少ないので乾燥が激しい場合は粉状のものより保湿クリームが必要なこともあるくらい。

 栄養価が高いからと、以前は積極的に取り入れるようにいわれていたハチミツは、1歳前には食べさせてはいけません。生ものですから、まだ消化器が完成していない0歳児には負担が大きく、食中毒になるリスクもあるためです」

 子育て中のママからはこんなあきらめの声が。

「ベビーパウダーの使用をめぐって、毎日、義父母にいわれて面倒くさくなった」

 またこんな悩みも。

「私がシンプルなものが好きなのでネイビーやグレーの洋服を着せていたら、もっとかわいいものがいいんじゃない、とピンクの服ばかりを勝手に買ってくる」

 女子=ピンク、という祖父母世代の発想がわからないという声なども寄せられた。ベビーパウダーの件などについては、こう話す子育て中ママも。

「注意が書かれた雑誌などをコピーし、蛍光ペンで読んでほしいところに線を引いて渡します。よりたくさんの有識者の意見を集めて納得させます」

 対処法もあるが、ピンクの洋服となると、趣味の押しつけでしかない。立石さんはこうアドバイスする。

「商品券にするか、一緒に買い物に行って好きなものを選ばせるほうが双方の関係に波風が立たない」

 このような世代間のトラブルの原因を、棒田理事長は、「情報共有がなされていないことにある」と指摘する。

「“家族だからわかってもらえる”という思い込みは間違い。互いを理解し合うために、きちんとコミュニケーションをとることが非常に重要です。“孫がすくすく育つように”という思いは両親も祖父母も同じなのに、トラブルが起きるのは残念です。

 方針は変わっていくことがあります。そのつど軌道修正すればいいのです。子育ては、家族の一大プロジェクトですから、みんなでベクトルを合わせないと」

 口で伝えることができないことでも、ちょっとした工夫が役立つという。

「祖父母は年賀状や卒業・入学祝いなどにカードを送り、ひと言添えてみる。“今度、バアバと一緒に○○に行こうね”“今年はたくさん一緒に○○できることを楽しみにしているよ”とすれば意思疎通が円滑にできます」(NPO法人孫育て・ニッポンの棒田明子理事長)

 祖父母のベストポジションは、孫の「逃げ場、癒しの場」であるのだが、それは決して甘やかすことではないという。

「一貫性のないしつけは子どもを混乱させます。母親が甘い物を制限しているのに祖母があげては、子どもは人を見て行動するようになってしまう。2世代でうまく育てるには、みんなでルールを決めることがいちばん大切。禁止事項や“子どもが××の時はこう対応する”など場合によっては紙に書いて貼るなどしてもよいでしょう」(立石さん)