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 千葉県館山市で女性専門の依存症からの回復施設・NPO法人『SARS(サーズ)千葉』の代表を務める千葉マリア。

「こちらに来る女性は特別な人ばかりではありません。かつて部活で剣道をやっていたり、大学を卒業して一時は主婦をやっていたり、見た目は普通の女性ばかりです」

 40代後半で経験したがんの手術で自身が歩んできた人生を振り返り、当時は東京・目黒にあった自宅で家族相談を始めた。

「私もよそのダンナの子どもを産んだくらいの依存症体質でしたし、今までさんざん好き勝手やってきたので、その埋め合わせをしようと思いました」(千葉)

 そのうち女性のための施設が必要だと感じ、周囲からも求められて、60歳になってから始めたのが『サーズ千葉』。館山に場所を移したのは3、4年前で、現在は40数人の女性が利用している。

 これまで多くの覚せい剤に手を出した女性たちを見てきたが、若い女性は友達から、年ごろの女性は異性からすすめられて覚せい剤を始めるケースが多いそう。

「最初は、楽しいよ、気持ちいいよ、すごく楽になるよ、という感じで、コップが空いてなくてもお酒を人にすすめるのと同じ心理です。多幸感があるので自分の大切な人にすすめたくなるし、信頼している人から言われると、やってしまうのかもしれません」(千葉)

 全員が1回だけ、もしくは途中でやめられると思って覚せい剤に手を出すが、快楽は脳に記憶され、その脳自体の構造も変質するので、自分の力でやめることはできない。

「幼いころから自分の居場所がなかったり、他人とうまくいかなかった人が、覚せい剤を使ったら一時的に明るくなれたり、開放的な気分になれたりすることがありますが、シラフになると寂しくて悲しくてすごく苦しい」(千葉)

 なので、また覚せい剤をやり、次第にコントロールができなくなり、ボロボロになるまで続けてしまう。

「男性よりも、女性のほうが脳の構造的に依存をしやすい。欲求が活性化するのが早くて、脳が壊れるのも早く、壊れ方もひどいんです」(千葉)

 覚せい剤に支配されると、覚せい剤を手に入れるためなら、どんなことでもするようになるという。

「刑務所に入っても、出所すれば再びやります。あらゆることを経験し、生きていくことがどうにもならなくなって、『サーズ千葉』にたどり着くのは、だいたい15年間ぐらい覚せい剤をやっていた女性が多いですね」(千葉)

 今はインターネットでも覚せい剤を入手できるが、それだと足がつくので、最初に教えてもらった人から直接売ってくれる人を紹介してもらい、どうせ自分でもやるならと、気がつけば売人になっているケースも。

「何が原因で覚せい剤に手を出すことが多いのか、正直わかりません。普通に育って、男性を好きになり、家庭を持ち、それから覚せい剤をやってみたらよかったという人もいるんです。幼いころの環境に問題がある人もいますが、悪いと言われる家庭環境の人がみんな覚せい剤をやるわけではないので、一概には言えません」(千葉)

 女性が覚せい剤にコッソリ手を出していた場合、日常の行動に異変が起きてから家族は気がつく。だが、周囲の目を気にしてか、家族一丸となって女性をどこかに囲い込み、女性本人を世間から隠そうとする傾向が見られるという。

「それによって症状はさらに悪化します。そうなる前に本来なら勇気を持って、われわれのようなプロに相談してほしいのですが、家族が共依存の関係になっていると、それも難しい。覚せい剤は犯罪なのですが、精神的な病気だということも、みなさんに理解してほしいですね」(千葉)