北海道から沖縄まで全国60か所にある薬物回復の施設『DARC(ダルク)』。かつて覚せい剤に手を出し、現在はダルクで暮らしている女性に話を聞いた。
高校を中退して、16歳からキャバクラで働き始めたというBさん。
「警察官やナースの格好で接客をするようなお店でした。19歳で出産しましたが、子どもは託児所に預けながら働いていました。覚せい剤を始めたのはそのころです」
きっかけは、もともとタトゥーに興味があって、彫り師と知り合ったこと。
「彼が彫る前に覚せい剤を打っているのを見て、好奇心で私にも打ってほしいとお願いしたんです。そのときは、子どもを産んだばかりだったので断られました」
同時期に、当時付き合っていた彼氏が四股をかけていたことが発覚。嫌なことが一気に重なった。
「何もかも忘れたいから覚せい剤を打ってほしい、と彫り師に改めてお願いしたんです。そしたら彼は“子どもがいるからやらせたくないけど”と言いながらも、結局そこで覚せい剤を使ってしまいました」
彫り師は毎回、大量の覚せい剤を打ち、1回につきティースプーン1杯分の量を使用していたという。
「その半分の量が、私が使う1回分でした。普通は使うとシャキッとするのですが、私の場合は量が多かったからか、気分が悪くなって、心臓がバクバクし始め、横になりたいといつも思っていました」
そのとき、別に暴力団関係の男と付き合い始めていたBさん。
「彼は親分に呼び出されることが多かったので、私はひとりになることがよくあったんですね。覚せい剤を使い始めたばかりだったので、ひとりになることが怖かったんですが、身体は気持ちよくて自慰行為などで使っていました」
しかし、気持ちいいだけではないと語る。
「覚せい剤を使うと、幻覚、幻聴、誰かに常に監視されていたり追われていると思ってしまう『追跡妄想』などの症状が出ることを私は知りませんでした。だから、それらの症状のせいで変なことが起こったとしても、それがすべて現実だと勘違いしました」
使い始めて1か月後には、自分が警察や暴力団に追われていると思い、マンションの5階から飛び降りてしまったそうだ。
「幸い、命に別状はなく、1週間ほどの入院ですみました。それから2か月間はやめられたのですが、また覚せい剤に手を出してしまいました。今まで2回、刑務所に入っています。不起訴や執行猶予を含めて4犯あります」
2回目の出所をして、昨年12月にダルクに入った。
「そのときのことはあまり覚えていません。いろんなことが目まぐるしくて、新しい生活に慣れるのに精いっぱいだったんです。今はやっと慣れてきました。ここにいてどれくらいまで回復するかわかりませんが、今後は少し環境を変えて療養することも考えています」
東京の渋谷あたりは、覚せい剤が売られている場所を知っているため、そういう場所の近くにいたくないと話す。
「地元に帰ったら元の自分に戻ってしまいそうで怖い。だから、全然知らない土地のほうが生きやすいかなと思っていますが、それは今後次第です。実は、私にはもうひとり、6歳になる子どもがいるんです。今は養護施設にいますが、ゆくゆくは引き取って一緒に暮らしたいと思っています」