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 18歳が初めて選挙権を得る参院選が、22日に公示された。 週末の渋谷駅前。政治家の街頭演説カーが通り過ぎた。スマホをいじっていた大学生の直人(19=仮名)は一瞬、顔を上げるが、再び視線を手元に戻す。話しかけると、政治には関心があるが、参院選が近いことは知らなかった。

「うちは裕福ではないし、奨学金を借りている。だから将来、そんなに明るく考えていないですよ」

 ネットニュースをチェックすることもあるが、支持する政党も政治家もいない。

「政治家の話を聞いても何を言っているかわからない。丁寧に説明してほしい。ただ、そんな機会があっても、わざわざその場に行かないって思いますけどね」

 遊ぶ約束をした友人と待ち合わせていた大学生の沙優里(20=仮名)も初めての選挙だ。投票に行くのかを尋ねると、「たぶん、行かないと思いますよ」と話し、こう続ける。

「両親は投票に行けと言います。でも、どの党がどんなことを言っているのか違いがわからない。投票しても、変わるように思えない」

 医療や社会福祉には関心があるが、政治のイメージと結びつかないと言う。

 18歳と19歳を対象にした共同通信社の世論調査(6月17日)では「政党が若い人に政策をわかりやすく訴えているとは思わない」と回答した人が88.3%、政治に「関心がある」「ある程度ある」を合わせて49.6%。投票には「必ず行く」「行くつもり」が52.2%。

 初の“18歳選挙権”が注目され、高校生による安保反対デモが開かれるなど若者の政治参加が話題を集めるわりには、当事者の関心は高くない。冒頭の2人が特別ではないことがわかる。

 では、若者たちを取り巻く環境にはどんな課題があるのだろうか。

 10代、20代の若年女性の支援をしているNPO法人『bond Project』の事務所はJR日暮里駅前にある。荒川区から委託された相談事業をしている。

 女の子たちからメールや電話でSOSが送られてくる。「つらい」「苦しい」などの心の叫びが多く、自殺願望があることも。いじめや不登校などの学校に関するもの、親からの虐待、家に居場所がないという家族の問題も相談がある。ほかにもデートDV、性暴力、妊娠中絶など幅は広い。

 相談以外でも、街角パトロールで気になった子に声をかける。代表の橘ジュンさんは、「話を聞かせてくれる子がすぐに相談に結びつくわけではないです。街角で出会う女の子たちは、積極的に援助を求めないのですが“何かあったら”と、連絡先を交換する」と話す。

 終電後に声をかけた少女の中に、レイプ被害者で、恋人からDVを受け、親からの精神的虐待を受けていた子がいた。

「ネットで出会った人の家を転々としているそうです。居場所がないんでしょうね」

 『bond Project』では今後、移動相談カーで話を聞くことも検討中。気軽に相談できるよう試行錯誤している。

 支援している女の子たちと橘さんは話をするが、政治の話はほとんどしない。

「女の子が事務所に来ているとき、外から街頭演説が聞こえることがありますが、聞いていない感じです。“どうせ自分たちの声は反映されない”と思っている。“声を聞いてもらえる”という希望はないんでしょう。あきらめているんだと思う」

 女の子をとりまく政治課題は多い。自民党を中心に『女性の健康の包括的支援に関する法律案』が2年前に提出された。しかし、性暴力被害者支援の観点がないと指摘されている。

「健康とは真逆なのが性暴力被害です。当事者にも伝わる法律じゃないといけないと思う」(橘さん)

 野党も民進・共産・おおさか維新・生活・社民の5党は共同で「性暴力被害者の支援に関する法律案」を6月に提出した。現在は自民が賛成しない限り成立しないが、参院選次第では情勢も変わるかもしれない。

 また、若年女性の自殺も深刻だ。自殺者数は1998年から一時期3万人を超えたが、昨年は2万4000人ほどまで減った。しかし、20代の死因1位が自殺という状況は続く。

「若年女性の自殺率は高い。相談もしにくい。そんな状況を変えたい」

取材・文/渋井哲也