毎週のようにぐったりした女性を抱き上げ、アパート3階の自室へと運んでいた栗田良文容疑者。
「酔いつぶれた妻を介抱しているのかと思っていた」と近所の住人は言う。
「私ね、何度もあの男が女性を運ぶのを見たけど、毎回グデングデンになった奥さんを介抱しているんだと思っていた。だから“ダンナさん気の毒になぁ”って思っていたの」
女性を監禁した容疑で逮捕された神奈川・相模原市の派遣社員、栗田良文容疑者(33)の“監禁アパート”の隣に住む女性は、そう振り返る。
「6月4日から5日まで被害者を被疑者宅に監禁したとして逮捕しました。被疑者は“自宅に連れて行ったことは間違いない”と容疑を認めています」(神奈川県警本部)
東京・足立区在住の会社員女性(28)は4日早朝、帰宅するためJR新宿駅から山手線に乗車した、はずだった。
記憶はそこで途切れる。次に意識を取り戻したのは、翌5日未明。見知らぬワンルームで、強面のロン毛の男がいる……。女性はすきを見て脱出し、近くのコンビニに駆け込んだ。店員が振り返る。
「服や靴、カバンは身につけていて泣き叫ぶとか、ひどく取り乱した様子はありませんでした。飲み物とタバコを購入し、公衆電話はないかと男性従業員に尋ね、しばらく外でタバコを吸っていました」
ほどなく戻って来ると「ケータイがないので貸してほしい。都内で飲んでいたはずなのに気がついたら知らない男の家にいた。通報したい」と頼んだという。従業員が110番をし、女性に代わった。
「電話を終えると腰が抜けたかのようにしゃがみ込んでしまって。警察の到着までは店内で保護しました」(店員)
容疑者は泥酔した女性に狙いをつけ、“お持ち帰り”に及んだ。神奈川県警本部によると、「睡眠導入剤を飲ませた」と供述しているという。冒頭の女性が証言する一連の連れ込みケースと、睡眠導入剤が重なる。
「女の人はベロンベロンなのか、眠っているのか、具合が悪いのか……。“人はここまで酔えるもんかね”と思うくらいグターッとしていました」
■近所や職場の同僚が語る“手口”と“素顔”
女性住人が最初に容疑者の“お持ち帰り”を見たのは2年半ほど前の朝9時半ごろ。
「タクシーから降りてきた容疑者がまず女の人の荷物を持って3階の部屋まで行って、その後、女の人を“お姫様抱っこ”して上がっていきました」
以来、この女性はそのような光景を何度も目撃しているという。
「少なくとも7回以上は、女の人を運び入れるのを見た。毎回タクシーで、品川や横浜ナンバーもありましたね。息子が把握している分と合わせたら、軽く10人以上は連れ帰っているかもしれない」
そのことは、「被疑者との関連が疑われる事案5件の情報が寄せられています」という県警本部の広報内容とも重なる。
明らかに連れ去り常習犯であるこの男。二枚目でモテそうな印象はなく、同じアパートに住む30代の男性は「体格がよく、ロン毛で無精ひげ。(テレビで見た)逮捕時と同じ」と、さえない感じを描写するが、連れていた女性は美しかったと記憶をたどる。
「タクシー内で寝ている女性をちらっと見たことがある。ヘアメイクをし派手なドレスを着て、きれいな人でした」
容疑者が、ミニスカートの女の人をお姫様抱っこかおんぶしている姿を何度も見た、という目撃者の女性の息子は、こう話す。
「周りをにらんで歩いているようなタイプ。捕まる前日の昼間にも、茶色のTシャツに土色のスウェット姿でした」
175センチあるがっしりした背丈で女性を抱え、階段を上る音がアパートに響き渡る。
「2人分の体重がかかりゴーンと響く。だからすぐわかる」(目撃者の息子)
さらに半年前の、重要な記憶を語ってくれた。警察が容疑者を以前から怪しんでいたことを、裏づけるものだ。
「警察官が2人、アパートの前にいたことがありました。“(JR横浜線の)淵野辺駅で、死んでいるように見える女の人を車イスのようなものに乗せ運ぼうとしている男がいる”って通報が入ったんだって」(目撃者の息子)
そんな包囲網も知らずに、
「ひどいときには毎週のように連れ込んでいたときもあった。平日や深夜にも見かけた」(目撃者の息子)
ゴミ捨てマナーは悪く、近隣の小学生は怖い人と怯えていた。
「“容疑者の家は人の出入りが多い”“水商売の女性を連れ込んでいるようだ”などと近所で話題に上ることがありました」
70代女性は顔を顰める。とはいえ、毎回別の女性が監禁されていたとは誰も夢にも思わない。
容疑者は建設機械製造会社を退社後、自宅から徒歩5分強の電子機器製造会社に勤めていた。周囲との関わりを避けていたのか「交流はありません。同僚とほとんど話さない人だったと聞きました」と以前の勤め先の従業員。
「そういう(女性を連れ込む)タイプには見えなかった。みんな驚いている」(現在の職場の同僚)