20160719_10P_7

 国立西洋美術館が、7月中に世界遺産に正式決定されることが濃厚だという。国内では20番目となる世界遺産の誕生を記念して、美術館や博物館の魅力をアート通有名人に聞いてみた。

■お目当てだけを見る“大人の”鑑賞法

 17歳からモデルを始め、多方面で活躍するはなさん。上智大学比較文化学部比較文化学科では東洋美術を専攻。大の仏像好きとしても知られる。

「美術館や博物館ってたくさん歩くし、いろいろ見たい気持ちもわかるんですが、全作品に真剣に向き合うと疲れちゃう。だから、私は興味のない作品はビューッと飛ばし、見ません。そして最後にもう1度、好きな作品に戻るんです。すると、とっても後味よく帰れます。

 最近、実践しているのが自分の見たい1点だけを決めて直行。そこでじっくり気のすむまで見たら、ほかは何も見ないでサッと帰るという、かなり贅沢な鑑賞法です。私は、仏像展に関しては4回行きます。4回会いにいけば、だいたい仏像と仲よくなれるんです。

 仏像の見方ですか? 人と会うのと同じように挨拶をしたら、あとは好きなように。仏像は心が広いから、難しく考えなくて大丈夫です。お寺と違って、博物館は雰囲気のあるライティングで、いろんな角度から見られるのも魅力だと思います」

■上から目線で、ひとつ買うならどれかな?

 武蔵野美術大学油絵科在学中にモデルデビューし多方面に活躍している城戸真亜子さん。洋画家としても精力的に活動。近年は子ども向け美術教育も行っている。

「“みんな、花や景色はただ“キレイだね”で楽しめるのに、絵となると理由を知りたがる”。これ、ピカソなんかも言った言葉なんですけど、ドキリとしませんか? “この作品のよさがわからなかったらどうしよう”なんてプレッシャーを感じる必要はなく好きなように見ればいいと思います。

 “ひとつ買うとしたら、どれを買おうかな”と、上から目線で鑑賞するのもオススメです。どんな巨匠の有名作品であろうと“ウチの壁には大きすぎるからいらない”“ウチのインテリアには合わない”とバッサリ切り捨てながら(笑)。想像上でも自分が買うわけですから、真剣にもなるし、リラックスした気分で楽しめます。

 絵は自分本位に見ることで、自分自身を再発見するきっかけにもなります。“この絵を見ると、なぜか元気になる”なんて1枚に出会えたら、とても豊かな気分になると思いますよ」

■生で見て、価値の理由を知る

 社会風刺コント集団『ザ・ニュースペーパー』のメンバーで、世界遺産検定1級、美術検定2級を持つ“美術芸人”の福本ヒデさん。

「やっぱり、生で見ないと!『ザ・ニュースペーパー』も舞台のDVDを出していますが、“DVDのほうがおもしろい”って言う人はまずいませんから(笑)。

 そして、美術館の絵には2通りあります。今見ても“すごい”と心から思える絵と、そうじゃない絵。例えば、『モナ・リザ』は肖像画ですが、写真がなかった当時は“まるで本物の人みたい!”と誰もが驚きましたが、今はもっとリアルな絵はいくらでもある。

 なのに、今なお価値がある理由はダ・ヴィンチが初めてやったスフマート(筆跡を残さないでぼかす手法)が非常によく表れている作品だからなんです。

 価値ある絵には、理由があります。大昔に描かれた絵が、はるばる遠い日本で大事に飾られているってことは、もうそれだけで価値ある作品であることは間違いありません。その価値が何なのかを知ることも楽しいと思います」

■ペタンコ靴で自由にウロウロすべし

 情報サイト『All About』美術館ガイドも務める美術ライターの浦島茂世さん。著書に『東京のちいさな美術館めぐり』などがある。

「美術館って順路はありますが、逆走してもいいし、1回見た後でまた戻ってもいいんです。好きなように館内をウロウロしてほしいですね。鑑賞時に打率10割を狙う必要はありません。気楽に楽しむのがいちばんです。

 “いいな”と思う作品を見つけたら、名前だけ覚えて帰って、ネットで情報を調べてみるといいと思います。そして、その作家の展覧会が開催されたら行ってみるとか。少しずつ積み重ねていくと、広がりが出てきます。

 注意点? 歩きやすい靴をはくことくらいかな。ヒールだと疲れるし、カツカツと音も響くので。また、ミュージアムショップには、おしゃれなオリジナルグッズがいっぱいです。値段も他人にはわからないから、お土産に最適(笑)。定番の絵ハガキはもちろん、紅茶やクリアファイルなどバラエティー豊かなので、ぜひのぞいてみてください」