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 話は遡る。七夕の夜、東京タワーの真下でトークイベントがあった。元日弁連会長の宇都宮健児氏(69)が聴衆を前にマイクを握っていた。

「2008年のリーマンショック後、多くの派遣労働者が派遣切りされ、寮や社宅を追い出された。私たちは労働組合と一緒になって、日比谷公園にテント村をつくって炊き出しをしました。年越し派遣村。厚労省の目の前です。厚労大臣は舛添さんでした」

 宇都宮氏はマイクを握り直して続けた。

「政策の失敗で失業者がたくさん出て、野宿を余儀なくされていた。厚労大臣が真っ先に飛んでくるべきでしょう。現場を視察すべきです。そして支援する。必要なことはないか、と聞いて回るんです。

 ところが舛添さんは1回も来なかった。厚労副大臣だった大村さん(現・愛知県知事)はちょくちょく来て、朝の炊き出しも手伝っていた。えらい、冷たいやっちゃなあと感じましたね」

 福祉のプロを自認する舛添氏をこのとき、“怪しい”と思ったという。

 ご存じのとおり、宇都宮氏は告示直前に都知事選出馬を断念した。「保守の候補者が分裂している中、都民にやさしい政治に転換する千載一遇の機会」(宇都宮氏)と泣く泣く身を引いた。'12年は猪瀬元知事に敗れ、'14年は舛添前知事におよばなかった。しかし、いずれも90万票以上を得て次点だった理由がわかるまっすぐなトークだった。

 都知事選は31日の投開票に向け、候補者の舌戦が展開されている。舛添氏の悪口を聞かせてくれ、というつもりはない。ただ、豪華海外出張や公用車による別荘通い、政治資金の私的流用など一連の問題をどう受け止めているかは具体的に聞きたい。その評価によって見えてくる候補者の人物像があるからだ。

 宇都宮氏と話し合い、野党統一候補として選挙戦をたたかうジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76)は都知事選が告示された14日、JR新宿駅前で街頭演説の第一声。いきなり舛添批判から入った。

「都民ひとりひとりが汗水たらして働いて得た報酬から、税金というかたちで都や都議会を運営するためのお金を出している。この税金がはたしてちゃんと使われているか、出したほうも、受け取ったほうも、あんまり意識していない。典型的な例が舛添さんの問題ではなかったでしょうか!」

 ごった返す聴衆から「そうだ!」の掛け声が飛んだ。

「舛添さんはひどいことに海外出張のとき、何の考慮もせずファーストクラスで行きました。税金払っているのに許せますか? スイートルームに何日も泊まってどんどん無駄遣いした。私たちの税金をどれだけ正しく受け止めて、ちゃんと使っているか。そのことが今回の選挙の大前提です。いいですか、みなさん。この大前提を忘れないでください」(鳥越氏)

 報道現場を51年歩き、真実を嗅ぎ分けて伝えてきた。東京の何が問題か。都民の声に耳を傾けるという。

「私の最大の長所は、聞く耳を持っていることです。おそらく舛添さんは持っていなかった。猪瀬さんも持っていなかった。石原慎太郎さんはもっと持っていなかった!」(鳥越氏)