7・28は、世界・日本肝炎デー。
「健康な人には、なかなか伝わらないんだよね。それがひとたび、家族の誰かや自分が肝炎になって、症状が進んでしまっていたとき、“助けてください”って言っても、お医者さんが助けられないことが多いんだよ」
肝炎に対する理解を深めることを目的として、平成23年からスタートしたキャンペーン『知って、肝炎プロジェクト』。このプロジェクトで、杉良太郎は、厚生労働省 肝炎総合対策推進国民運動 特別参与を務めている。
日本では、年間約3万人が肝臓がんで死亡しており、さらに、この肝がんの原因の約8割がB型・C型肝炎ウイルスによると言われている。
「キャンペーン活動も含め、肝炎の現状を知らない人が多いと思う。これからです」
そう、杉が語るように、実は、現状、慢性肝炎ウイルス感染者(B型肝炎・C型肝炎ウイルス感染者)は300万~370万人いると推定されている。しかし、“沈黙の臓器”と呼ばれる肝臓は、自覚症状がないまま病状が進行していくことが多く、重症化してから診断され、つらい治療を受けることも多い。
「“まず、検査を受けてくださいね”と、広報していきましょうと動きだして、5年。僕は、強く訴えているんだけれど、自分の身体なのに検査に行かない人が不思議でしょうがない」
無料で検査ができるなど、国がバックアップ態勢をとっているのは、幼少期の集団予防接種によるB型肝炎ウイルスに感染させられたB型肝炎訴訟や、血液製剤フィブリノゲンなどによる薬害C型肝炎訴訟などが起こったからだけでなく、肝炎は検査を受けることによる早期発見・早期治療で、肝硬変、肝がんへの悪化を防ぐことができる病気であるからと続ける。
「放っておいて、あとで苦しむのは自分。自分だけじゃなくて家族もみんな巻き込まれていくんです。芸能界でも、このケースで亡くなった方は、何人もいるんですよ。昔は、偏見のようなこともあったと聞いています。病気を隠そうとして治療に踏み切れず、残念な結果になったりした。そういうことが、今後はないようにしていかなくてはいけない」
妻・伍代夏子の闘病に直面し心を決める
妻で演歌歌手の伍代夏子もC型肝炎を克服したひとり。ちょうど、伍代が苦しい闘病生活を終えるころ、このプロジェクトに参加することを決意したという。
「検査を受けて、伍代がC型肝炎であることは以前からわかっていたんです。薬もよくなったし、ゆくゆく肝硬変になる可能性が高いから治療を受けないかと言われて、踏み切りました。
1年の予定でインターフェロン療法と服薬の治療を始めました。相当の副作用が起きましたね。髪の毛も抜けて、うつ病にもなりました。突然、高熱が出たり、身体がだるくなったり。そうなると、思うように歌えないんです。ステージに立ったあとは、何もできなくなってしまう」
熱が出たときには、少し冷やしてあげる。そんなことくらいで、あとはそばにいるしかできなかったと語る。1年の予定だった治療は半年延び、夫婦力を合わせて、なんとか乗り切ることができた。
「これはやっぱり、広く伝えていかなくちゃいけないと思ったんです。医学の進歩って目覚ましいんですよ。5年ほど前に、伍代が1年半かけて治療したことが、いまは1日1回薬を飲むだけ。約3か月で治療は終了する。その薬も、1錠6万円ぐらいするけれど、保険が適用されますから」
小室哲哉が肝炎対策大使に就任
杉と気持ちを同じく『知って、肝炎プロジェクト』に参加する著名人も、増えている。
今年から、自身も平成24年にC型肝炎を発症し、半年後に完治した小室哲哉が肝炎対策大使に就任した。
「プロジェクトに参加してくれているみんなが、とても協力的なんですよ。このサポーターたちが、全国各地に行ってキャンペーンを行う予定です。今回は、小室さんが、いちばん得意だからということで、キャンペーンソングを作ってもらって、ミュージックビデオも制作しました。EXILEのTAKAHIROとか小林直己とか、歌わないけれどビデオには参加してくれています。中には、歌わなくてもいいんじゃないの? と思うような人も(参加者は下に記載)。僕も歌わない。歌が下手だから(笑)」
そんな冗談で笑わせてくれた杉だが、昨年12月に大動脈弁狭窄症のため、人工弁置換手術を受けている。その直前には、大ヒットしたドラマ『下町ロケット』に出演。偶然にもドラマの内容も心臓弁に関するものだった。
「夜中までドラマの撮影をして、そのまま病院で手術。マンガみたいな話でしょ(笑)。(昨年8月に)心不全を起こして入院しているときに“出演依頼が来ている”と知らされて。だから、“オレ、いまどこにいるの?”って言ったの。“病院でしょ”って。それから、“セリフを少なくして”って条件を出したんです(笑)」
いまの体調について尋ねると「もう、いいですよ」と、うれしい言葉を返してくれた杉。幸せを感じる瞬間はどんなときかを聞くと、
「唯一、楽しいと思うのは、テラスなんかで育てている温州みかんとかイチジクとか、レモンがうまく育って、また実をつけてくれたとき。虫とか病気に気をつけて剪定して、元気に育ってくれたときに、いちばん幸せを感じる。愛情をかけると、生き物はまっすぐに伸びていくと思うんです」
多くの人をときめかせた温かく力強い眼差しで語る。
「育てるのが好きなのかな」と微笑みとともに周囲に愛を注ぎ続けていく─。
【大使・スペシャルサポーター ラインナップ(順不同)】
伍代夏子、徳光和夫、小室哲哉、石田純一、岩本輝雄、w-inds.、上原多香子、AKB48、EXILE、小橋建太、コロッケ、島谷ひとみ、清水宏保、瀬川瑛子、田辺靖雄、夏川りみ、仁志敏久、平松政次、堀内孝雄、的場浩司、山川豊、山本譲二、ほか。