大河ドラマ『真田丸』で豊臣秀吉(小日向文世)、真田昌幸(草刈正雄)を夢中にさせる花魁・吉野太夫を演じた中島亜梨沙。あふれでる色香から「あの女性は誰?」とにわかに注目を集めている。
「吉野太夫は最初、第15回の1回だけの出演だったんですが、第18回も出るというので“ラッキー!”と思って(笑)。それからまた3回(第28回~30回)増えて。しかも注目されるような面白い脚本、展開になっていて、ありがたいなと思います。いつ需要があってもいいように準備してきたつもりなので、素直にすごくうれしいです」
中島は2003年から2009年まで宝塚歌劇団に在籍し娘役で活躍。舞のシーンではその経験をいかんなく発揮している。第29回(7月24日放送分)で昌幸が吉野太夫をぐっと引き寄せるシーンでも、中島の美しい身のこなしが印象的だった。
「第30回(7月31日放送分)のシーンは監督のこだわりがあって何回も撮り直しました。時代的にもお着物ですし、すごく色気のあるシーンとセリフになったなと。全国の昌幸さんファンに怒られてしまうと思うんですけど。“変わって!”って(笑)」
どうやったら吉野太夫のように色気が出るのか? 聞いてみると、
「そうですね……私も色気がないほうだったので(笑)。舞台をやっていた頃も、色気のある役が少なくて、入水自殺する役とか、夢の中に出てくるお母さん役とか。吉野太夫を演じているときは不思議と余裕というか、ゆっくりした間みたいなものが全体にありました。所作指導と振付をしてくださった先生から、“京の太夫格は本当にゆっくりでいいんだ。誰よりもここの遊郭の主だという心構えでいなさい”ということを言っていただいて。“余裕と自信”みたいなものでしょうか」
ターニングポイントになった吉野太夫という役に恵まれ、その縁に感謝していると話す。
「去年今年と続けてお伊勢さんに行って、お礼参りも行きました。あと、お財布の中に5円玉をためてるのがよかったのかな(笑)」
連続ドラマ『ON』ではシングルマザー役を熱演
一方、波瑠が民放初主演し話題になっているドラマ『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』(フジテレビ系 火曜夜10時)の第3、4回(7月26日、8月2日放送分)で、猟奇殺人鬼・都夜(佐々木希)に命を狙われるシングルマザー・吉田佐和役で出演。吉野太夫と異なる女性像で、振れ幅も大きい。
「主人公の藤堂比奈子は感情が欠落していて、都夜は猟奇的。佐和は2人とは全然違って、子どもに対して厚い情がある。ほんわかした親子関係を出して落差が出せればいいなと思いました」
劇中では主人公の比奈子とともに、都夜によって手足を縛られ、監禁されるシーンが衝撃的だ。
「猟奇殺人がテーマの韓国や日本のドラマを5、6本見て勉強しました。監禁シーンでできたあざが今も残ってるんです」と痛々しいあざを見せてくれた。「本当に縛られていたからこそ、リアルに殺されるっていう心境が作れましたね」
佐和はバレエ教室のインストラクターということで、劇中はレオタード姿も披露。宝塚を辞めてからは継続的に習っていたわけではないので、役作りのために何度かレッスンを受けたという。
「久しぶりのレオタード姿は、すごく恥ずかしかったです(笑)。佐々木さんもCMでバレエを踊られているので、現場ではその話をして。一緒に柔軟したりもしました」
今は結婚する気はゼロ、仕事に全力投球
宝塚退団後、映像の世界に移ってしばらくは、勝手の違いに慣れず、自分が出演したドラマも直視できなかったそう。
「芝居の面では宝塚というある意味特殊な場所にいたので、辞めてから映像の芝居を一から勉強し直しました。長く経験されてきた方からすればまだまだなんですけど。これからも精進を忘れず、もっともっと上を目指していきたい。自分はキャラクター俳優ではないので、“この人だったんだ!”みたいな役をこれからもどんどん増やしていければいいなと思います」
今では撮影現場で学べることはすべて学ぼうと、女優として貪欲に成長している最中だ。
「今、結婚とかはまったくする気がなくて、仕事がすごく楽しい。今まで生きてきた中で一番アグレッシブになっていますね。芝居がすごく好きなので、苦しいんだけど面白いです」
オンのときは芝居に一点集中の中島だが、オフのときは「スライムみたいになってます」と笑う。家ではゲームや小説にふけっているそうで、かなりのインドア派。
「小学生のころから本が大好きで、図書館っ子だったんです。ミステリーとファンタジーのジャンルが大好きです。宮部みゆきさんのシリーズはほとんど読んでいて、最近のお気に入りは貴志祐介さん、阿部智里さん。上橋菜穂子さんの『精霊の守り人』シリーズや、小野不由美さんの『十二国記』も好きです。違う世界に入り込むのが好きなのかな? だから夢を見るのも好き。寝るのが好きなんです(笑)」
【プロフィール】
◎中島亜梨沙(なかじま・ありさ)
1982年生まれ。北海道出身。2003~2009年に宝塚歌劇団に所属し、在団中の芸名は羽桜しずく。多数の舞台でヒロインを務め、’08年度宝塚歌劇団新人賞受賞。退団後はカナダ留学を経て、『世界ふしぎ発見!』(TBS系)にミステリーハンターとして出演。情報番組のリポーターも務める。’13年のNHK大河ドラマ『八重の桜』、連続ドラマ『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』などのほか、映画、CMに出演。’16年秋公開予定の映画『ハピネス』(SABU監督)にも出演している。
(取材・文/小新井知子)