「初回視聴率(12・4%)では、北川景子の『家売るオンナ』(日本テレビ系)がトップですけど、不動産業界の裏話やお仕事的な内容は全部排除。1話完結で老若男女が気楽に楽しめる作りになっています。
"私に売れない家はない"と無表情で言い放つ北川が、ブスでやる気ゼロのイモトアヤコや、純な工藤阿須加といった部下をこき使い、凡庸な上司の仲村トオルをオロオロさせながら、わかりやすく問題解決。
『家政婦のミタ』とある種同じ手法で、独自の世界観で快刀乱麻に話が決着する作りになっていて、深く考えず見たい層にはうってつけ。SNSを楽しむのと同じレベルまで敷居を低くすることで、集客率を高めることに成功。昔ながらのドラマ好きから見ると"これが今シーズン№1の高視聴率作品?"と首を傾げたくなりますが」
『好きな人がいること』:携帯恋愛ゲームのような仕上がり
同じような層を取り込もうとしているのが、『好きな人がいること』(フジテレビ系)だそう。
「優しい三浦翔平、ドSな山崎賢人、やんちゃな野村周平というイケメン3兄弟に囲まれるドジな桐谷美玲がなぜかモテモテという、少女マンガでおなじみの設定。さらに面倒な描写は全部すっ飛ばして、胸キュンシーンだけの抜粋に特化。
今の視聴者はドラマの余韻部分なんか見ちゃいませんから。結果、ドラマというより、携帯恋愛ゲームのような仕上がりに。大の大人が、面白くないとかつまらないとかマジメに批評するのもためらわれる、そんな作品です」
滝沢秀明と武井咲が不倫ドラマに挑戦した、ティファニー全面協力という『せいせいするほど、愛してる』(TBS系)は、「ラブストーリーとして一切、身を委ねられない!」と、バッサリ。
「お互いが好きになっていくきっかけが安易で、物語の稚拙さに感情移入できない。超高額のハイヒールをプレゼントとか、ヒロインを突然お姫様抱っことか、まるで往年の石田純一みたいな古いハンサムとして捌かれるタッキー。
とうとうタッキーもオッサンの部類に入ったのかと、『魔女の条件』を知る世代には感慨深かったです。巷で失笑を買っているエアギターシーンといい、こんな人物が副社長という設定の作品に提携を許可してしまったティファニーが不憫で。
実際に店舗にも行って確かめてみたんですが、店内にはタイアップのタの字もありませんでした(笑)。たぶん世界的ブランドの社史に残る汚点になるんじゃないかと。視聴側も制作側も出演者も、誰ひとりとしてせいせいできない、しょんぼりドラマ」
そして「、愛」のタイトルがかぶった『はじめまして、愛しています。』(テレビ朝日系)。
「重いテーマより、まずウザい妹役の坂井真紀が、これどっかで見たことあるなぁと思ったら、同じ遊川和彦脚本の『偽装の夫婦』で演じていた役とまったく一緒。わざとなのか、忘れてるのか。そんなことより本筋です。
特別養子縁組を描いていますが、子どもが欲しいとも思っていなかった尾野真千子と江口洋介夫妻が、たまたま紛れ込んできた子をすぐに養子に希望。里親になるまでの逡巡をすっとばし、1話目ですぐ決意という浅薄さ。
話を進める道具として里親制度を使っているだけ。今後はピアニストの尾野の奏でる音楽の力が、奇跡を起こしてどうこうっていう、予定調和な感動話になっていくと思いますよ」
『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』:死体のキャリーオーバー
いつもは丸かぶりになりがちな刑事ドラマだが、今期は3つと少なめ。
「東山紀之の『刑事7人』(テレ朝系)は第2シリーズで、好きな方はどうぞといういつものテレ朝ドラマ。
今期から始まった高島礼子の『女たちの特捜最前線』(テレ朝系)は、高知東生の事件があったせいか、物見遊山の人たちで思わぬ高視聴率に(苦笑)。
高島が警察官でありながら、捜査に関係ない総務部のおばちゃんで、ある意味、情けない役柄だったので、視聴者から"あの人も大変ねぇ"と同情票が集まりやすく、雨降って地固まる結果になったのは幸いでしたね。
もしカッコいいキャリア役だったらと思うとゾッとします。宮崎美子と高畑淳子という脇も味わい深いですから、シリーズ化もありうるかも。
波瑠の『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』(フジ系)は残虐な殺され方をした死体の描写が衝撃的ですが、本当に、ただそれだけ。波瑠演じる主人公の刑事は、犯人の内面を知ると"とても興味深い"とつぶやく怜悧なキャラ。最近のドラマは、決めゼリフを無理やり入れようとすることが多いけど、流行らないと見ていてつらい……。
そして、犯罪の内容も犯人もトリックも、大きな謎については伏線を張ったまま1話で完結せず。次回を見る気が全く起こらないガッカリサスペンス。
共演の関ジャニ∞の横山裕が先輩のベテラン刑事役で"関西弁の軽いアンちゃん役はもう卒業や!"みたいな意気込みが見て取れるんですが、無骨でコワモテな役どころは彼にはまだ早い気が。
ほかにも世間を震撼させる連続殺人鬼役に佐々木希と、なかなか背筋の伸びる配役で、未解決事件の恐ろしい死体だけが累積してどんどんたまっていくという、完全なるキャリーオーバードラマですよ」
ほかにも、お粗末と嘆きがあがったのが、堤幸彦監督・原案、向井理の『神の舌を持つ男』(TBS系)と、『時をかける少女』(日テレ系)。
「『神─』は小ネタが面白いでしょ? という堤ワールドをウリにしてますが、すべてが内輪ウケに終始してスベってる。舌にのせたものの成分が即わかる特殊能力を持つ向井と、佐藤二朗、木村文乃の3人組の旅が主軸なんですが、毎回、温泉街で車がガス欠→タダで1泊→入った温泉をなめる→事件解決の繰り返し。
このルーティンが面白いでしょ、このカオスがセンスいいでしょ、という押しつけだけが空回りして中身がまったく伴っていない。"堤ワールド"のブランドに寄りかかって、深く考察しないまま、見切り発車で作っちゃったんだろうな、という感しきり。
『時をかける少女』は切ない運命の初恋を通して、人生の中でとても短い"少女"という時間を描く、青春モノの金字塔なんですが。初恋とまったく関係ないクラスメートの身の上話や、学園祭の出し物の描写が延々と。
『時をかける少女』を名乗っているのにその世界観は皆無で、詐欺にでもあったような気分に。あらかじめ5話(8月6日放送)で終わるらしいですが、知らない人は打ち切りだと誤解するかも」
『営業部長 吉良奈津子』:フジテレビによる女優のための"接待ドラマ"
松嶋菜々子が3年ぶりに連ドラ主演する『営業部長 吉良奈津子』(フジ系)は、初回10・2%という期待はずれ。
「広告代理店の花形クリエイティブディレクターだった松嶋が、産休後に売り上げ不振の営業部の部長にされてしまうという話で、なんと3年も産休してたという浮世離れした設定にビックリ。
働く母の話なのか、広告業界の話なのか、不気味なベビーシッターが絡むサスペンスを描きたいのか、どれもこれも中途半端で消化不良。
松嶋は高級なお召し物を身にまとい、感情移入も全然見えないままの女王様演技。昔、世話になった女優をチヤホヤして気に入るように撮影するだけの"接待ドラマ"を見せられる視聴者はたまったものではないです。
フジは今クールの"土ドラ"は安田成美、8月13日スタートの『ノンママ白書』では鈴木保奈美・菊池桃子と、深夜に時期をずらして目立たぬようにこっそり接待。そんなにコソコソやるくらいなら作るなよ、と言いたいです。
なぜ作られるのかといえば、剛力彩芽の『グ・ラ・メ!〜総理の料理番〜』(テレ朝系)。どんなに低数字でも、懲りずに制作が続くゴリさんドラマと視聴者の戦いはもはや根比べの域に……」
日曜夜の三つ巴の戦いは、フタを開けてみれば、寺尾聰の『仰げば尊し』(TBS系)が一歩リード。
「裏番組がヒドいので消去法での勝利かと。寺尾のイイ人キャラは主役感に乏しいし、弱小吹奏楽部が全国大会へ行く話なのに練習シーンはお飾り程度でドラマとしての吸引力に欠ける。
『ごくせん』が始まったかと思うような村上虹郎と真剣佑らのヤンキーとの絡みばっかり。初回冒頭に寺尾が亡くなっているのを匂わせる描写があったので、後半は難病モノのお涙ちょうだいの予感大。結局、音楽のシーンは少ないままで終わりそう。
藤原竜也の『そして、誰もいなくなった』(日テレ系)は海外の映画やドラマの描写・設定をいろいろと拝借しまくり。そのわりには稚拙な展開で大風呂敷を広げるだけ広げ、説得力あるオチが用意されている予感は皆無。寂しい数字とタイトルが見事にリンクするという皮肉な結果に」
そして、今期のワーストは『HOPE~期待ゼロの新入社員』(フジ系)に決定!
「舞台になっている一流商社の描き方のありえなさ、橋田壽賀子が考えたような年寄り目線の若者像。あれだけ叩かれたというのに懲りずに韓流ドラマを原作に持ってきて結果、大コケと、目に映るすべてが今のフジを象徴するような負の連鎖でした……」