「うちは健康飲料をとっているけど、配達の人は何も言ってなかったわね。でも、販売所は化粧品も扱っていて、その担当の人が"うちでレインコートを盗まれた"と言ってたわよ。確かにニオイが強いものだけど、それを嗅いでたなんて薄気味悪い話よね」
と近所の主婦がしかめっ面で話す。そして、
「盗んだ男性は30歳でしょう。配達の女性は40~50代が多いのにね。熟女好きなのかしら」
と、いぶかしがった。
事件は今年5月下旬、千葉県警茂原署が、アルバイトの男(30)を逮捕したことで明るみに。4月下旬、茂原市の健康飲料会社の販売所に侵入して、レインコートなど計4点を盗んだ容疑だった。
男の自宅からはレインコート29着と、そのフード48枚が押収されたが、そのほとんどが同じ健康飲料会社の雨天配達用の女性ものばかり。周辺の複数の地域で同様の犯行が繰り返し行われていたようだ。
その動機については、「小さいころからレインコートに興味があった。合羽を見たり、ニオイを嗅いで興奮した」と自供しているという。
それにしても、聞いたことのない奇妙な犯行だ。ニオイフェチなのだろうか……。
まず、先の健康飲料会社に犯行の様子や、従業員の声などを尋ねてみたが─。
「なにぶん今回は事件ですので、ノーコメントということで」(広報担当)
男の自宅を訪ねた。外房・九十九里浜の潮の香りが漂う町。あいにく留守だった。近くに住んでいる男の親族が首をかしげる。
「昔から口数が少なくておとなしい子だったのに何があったのか、まったくわからんのですよ。7月上旬から公判も始まっているし、本人もひどく反省しているので、もうそっとしてあげてください」
時間を空けてもう1度訪問すると、公判中だというのに、なんと本人が応じた。
「ええ、販売所だけをピンポイントで狙ってやりました。千葉市まで車で90分かけてアルバイトに通っていたので、土地勘はありましたから」
と淡々と語り始めた。それにしても動機は何なのか?
「ホントに昔からレインコートのニオイを嗅ぐのが大好きで、あのニオイがたまらないというか……。手口は鍵をこじ開けてやったので、普通の泥棒と一緒ですけど。
ネットでも変態だとか叩かれて、大炎上してるみたいですけど」
被害に遭った女性は迷惑しているし、怖がっているのでは、と尋ねると、
「いまとなっては申し訳ないことをやってしまったと思っています。1回うまくいったら、そのときのスリルもあって火がついた感じになってしまって。でも、こんな大きな事件になるとは思わなかった……」
レインコートと一緒に押収されたフードについては、
「あれはもともと下の服の部分があったけど、破けたり壊れたりしちゃって、下の部分は捨てたので残ったんです」
それにしても、とんでもないコレクターであり、ニオイフェチである。