九州から伊豆にクルマで移動も、むなしく

 "決死の思い"で車を運転し続けた男の旅路は、ゴール目前であえなく"強制終了"されてしまった……。

 7月19日、静岡県磐田市内のガソリンスタンドでガソリンをだまし取ったとして、県警磐田署は長崎県佐世保市生まれの住所不定無職、山田孝容疑者(64)を現行犯逮捕。

 同日の午前8時15分ごろ、ガソリンスタンドで約29リットル(販売価格約3400円)を自分の軽乗用車に"満タン"給油。しかし、代金を支払う意思や能力がなかったため、詐欺の疑い、いわゆる"ガソリン詐欺"で逮捕されてしまったという。

「容疑者は調べに対し、"九州から車で出発し、伊豆の友人に会いに行く途中だった"と供述しています。伊豆は容疑者の元勤務先があり、そのときの同僚に会いに行くところだったそうです」(捜査関係者)

 逮捕された当時、そうとう生活に困窮していたのか、所持金はわずか数十円。財布にお金が入っていないとわかっていながら、給油することは許されない。

 九州を出発し海を越え、山を越え、何泊もしながら遠路はるばる車を運転してきた山田容疑者。逮捕された磐田市から目的地の伊豆市内までは約150キロほどの距離だ。出発時、お金は足りる計算だったのかもしれないが、思いがけず手持ちの現金が底を尽いてしまったのか。

「容疑者は"クレジットカードはないので現金でお願いします"と、スタンドで給油してもらいました。しかし支払い時には、従業員に"お金がありません。警察を呼んでください"と話し、110番通報をしてもらったそうです」(前出・捜査関係者)

 住所不定で車上生活をしていたと思われる山田容疑者。

 家やお金、頼る人もおらず、元同僚が最後の頼みの綱だったに違いない……。

 自ら警察を呼ぶように頼んだところを見ると、逮捕されて楽になりたいという気持ちがあったのかもしれない。容疑者の"心のガソリン"も尽きてしまったのだろうか。