及川眠子さんといえば、あの『残酷な天使のテーゼ』の作詞家です。社会現象にもなったアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のテーマ曲『残酷な天使~』は大ヒットし、及川さんに巨万の富と名声をもたらしました。
そんな彼女が稼いだ大金のうち3億円が泡と消え、今や7千万円の借金を背負う身に。その原因が18歳年下のトルコ人男性、Eとの結婚です。一般人には想像もつかないスケールの金と愛、そして嘘に彩られた13年間の結婚生活を赤裸々に告白した衝撃の書が『破婚』です。
この結婚そのものがウケ狙いだった
いま、13年間の結婚生活を振り返ってどうですか?
「ひと言でいうと面白かった。だって終わったことだから。終わってなくて渦中にあったらつらかったり悲しかったりするんだろうけど。
テレビでも話したんですけど、この結婚自体が、ウケ狙いというか、周囲がウケるだろうなと思った部分はありました。18歳年下のトルコ人と結婚、ですから(笑)。
そうしたらもう、目論見どおり。というか、こちらが目論んだ以上のことをEはしでかしてくれたなあと(笑)。こうやって本のネタにもなってくれたし。男に3億貢いでバカな女だと言う人もいますが、それはそれで構いません」
超年下夫となる男性Eさんと及川さんが出会ったのは旅先のイスタンブール。当時41歳の及川さんは、相手の強引なアプローチについほだされ、肉体関係をもちます。
「日本に恋人もいたし、毛深いのも好きじゃなかったし、何より面倒くさいことになるとは思ったんですけど、これも“名所見学”のひとつかな、という気持ちもあって(笑)」
どこか非日常な感覚のまま始まった関係でしたが、航空券の支払いや日本に来るビザのための資金など、経済的な要求は最初からつきまとっていたと言います。
「騙されている。貢がされている。バカな女だ。いろんなことをいろんな人から言われました。このまま一緒にいるとずっと金を搾り取り続けられるんじゃないかという不安もあった。でも、彼と一緒にいると、ギャンブルみたいな緊張やひりひりした感じがあって、それが快感だったのかもしれません」
及川さんと出会ったとき、女性体験もほとんどなかったというE。仕事でも恋でも自分のキャリアに及ばない年下の男を育て上げたいという野心が及川さんに芽生えたと言います。
「よく男が自分色に女を染めたいと願うでしょ。私もEを自分好みの理想の男に仕立てあげたいと思ったのね。日本に連れて来てからも、箸の上げ下ろし、敬語、ビジネス、対人関係、すべて私がイチから教えた。彼はいい生徒だったし、私は厳しい教師だったと思う」
及川さんの期待に応える一方、Eは事業のための資金を際限もなく要求してきます。旅行会社の設立、会社の運転資金、さらには、世界遺産地区のホテルの建築……。
「『エヴァ』関連で6億ぐらい入ってきたと思うけど、税金とトルコに大半が消えました。とにかく信じられないような嘘をついて金を引っ張るんです。トルコの会計士や経理担当もグルでした。毎日毎日、金の工面で電話が鳴って。“最後のお願いだから”と。私の口座は、常に2000万円以上の残高をキープしてたんですが、それが3万2千円になったときは、さすがに震えがきましたね」
3億ぐらいくれてやっても構わない
やがて、夫婦関係は冷え切り、イスタンブールでの出会いからは予想もできない状況となります。
「嘘つきでペテン師なのは出会ったときからわかっていたんです。でも、それを凌駕するものが彼にはあった。それは人間的な面白さであったり、彼からの愛情や、ユーモア感覚の共有だったり、いろんな理由や要素があった。介護入籍って言い方をしたこともあるけれど、これだけ年下なら先に死ぬこともないから看取ってくれるだろうと計算したのもあるんです」
及川さんの期待を次々と裏切ったうえ、アキレるを通り越してア然とするような詐欺と裏切りを重ねるE。普通なら精神的に参ってしまうと思うのですが、及川さんはこう語ります。
「私は愛情に手加減できない女なんですよ。私が書いた(やしきたかじんの)歌に《もしもあんたがくれと言うなら、今夜命をあげる》というフレーズがあるんだけど、このまんまの女(笑)。自分を下げてでも徹底的に相手を愛し抜こうとする。それは自分で決意してそうしてきたこと。だから今も後悔はありません。
何しろ私の情念はハンパないから、受け切れる人間というのはなかなかいない。いままでも、うまくかわす人はいました。私の扱いがうまい人はね。でも、Eはそういう意味では扱いは下手なんだけど、私の情念の全部を受け止めた。13年間、私の濃い情念を受け切ったEには、3億ぐらいくれてやってもまあいいかと思う(笑)。
読者のみなさんには、3億を男に溶かしたバカな女がいて、それでもしぶとく生きてるって思ってもらえればいい。100万の借金で自殺してしまう人もいるけど、未来は自分の意思で変えられるんだから」