『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』と『一流の育て方』(ミセス・パンプキンとの共著)が合わせて21万部突破の大ベストセラーになった「グローバルエリート」ことムーギー・キム氏。
彼が2年半の歳月をかけて「仕事のIQの高め方」について完全に書き下ろした最新刊『最強の働き方――世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ77の教訓』が、発売わずか2週間で7万部を超えるベストセラーになっている。
本記事では、ムーギー氏が「世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ教訓」の数々を、『最強の働き方』を再編集しながら紹介する。
「頭の良さ」と「話し方のスキル」はまるで関係ない
「この人、頭はいいのに、どうやったらこんなに下手な話し方で、つまらない話ばかりできるんやろう……
世界中の職場で働いてきて感じることは、「頭の良さと話し方のスキルはまるで関係ない」という厳然たる事実である。
頭はキレて学歴も高いのに、話がつまらない人は驚くほど多い。その一方で、学歴や職歴はパッとしないのに「この人は、本当に魅力的な話し方をするな……」と感心する人も数多く存在する。
頭脳明晰とはほど遠くても、話し方が魅力的な人は「会話が上手い」というだけで、頭のIQや学歴でつくわずかな差より格段に大きな仕事と報酬を、がっぽり持っていってしまうのだ。
今回は、世界中の「話し方」がうまい人、下手な人を観察してたどり着いた「一流と二流の分かれ目」を紹介しつつ、では「仕事のIQ」が高い「一流の話し方」はどうすればできるのか、その秘訣を解説したい。
「永遠に二流の人の話し方」で真っ先に思い浮かぶ特徴は、「相手が聞きたいことも、自分が話したいこともわかっていない」ことである。
あなたの話は「独り言」ではありませんか?
【1】「相手の興味・ニーズ」を理解せずにペラペラ話す
会話能力が低い人は往々にして、「相手が何に興味をもっているか」を見事なほどに察知しない。
彼ら彼女らは退屈な話をいかにも「全人類の共通関心事項」ないし、「自分の話すことはすべて、世紀の一大発見」であるかのように、ポイントレスに話し続ける。
検索エンジンが発達したこのご時世、人と話すときに重要なのは、相手のニーズ・関心事項を事細かに聞きながら進めることである。ネットとグーグル、ヤフーのおかげで、会話において人は関心のあるトピックにどんどん飛んでいく傾向が強まっており、ダラダラとポイントのない的外れな会話に対する聞き手の怒りは、容赦ないものになっている。
「相手のニーズを理解しないで進める話は、もはや完全に独り言で、コミュニケーションでも何でもない」と肝に銘じなければならない。
【2】「的外れな自己アピール」をしまくる
二流の話し方しかできない人は結果的に、相手の興味を踏まえないので、「的外れなアピール」をしまくって周囲を唖然とさせる。
同じ商品・サービスを売るにしても、相手のタイプによって「どんなストーリーが刺さるか」は変わってくる。相手のニーズや価値観を踏まえたうえで、それに応じたストーリーを奏でないと、相手の心には響かない。
これは私たちが、狙っている意中の相手にアプローチするときを考えるとわかりやすいだろう。
もし相手が重視するのが「家庭重視の男性像」なら、いかにあなたが奥さんに尽くすタイプで、週末は子どもをディズニーランドに連れて行くのが夢であるかをアピールしなければならない。
反面、相手が求めるのが「経済的な安定性」なら、その彼女に「ディズニーランドうんぬん」をアピールしても無駄である。むしろいかに貯蓄志向で、リスクを嫌い、安定運用を心がけているか、隙あらば貯金が趣味だという「相手のツボにはまるストーリー」を打ち出さなければ、彼女には響かないのだ。
人によって「刺さるストーリー」は変わることをくれぐれも忘れてはいけない。相手のニーズや興味を無視した「的外れの自己アピール」では、相手の心に響くわけがないのだ。
また、二流で終わる人の話し方で多いのは、「マッキンゼー本の形式のマネばかりして、論理構造だけは立派なものの、いかんせん内容がない」ということである。
星一徹もビックリの、怒りの鉄拳制裁を
【3】MECEで論理的だが、内容が超絶につまらない
コンサルかぶれの二流の人ほど、「理由は3点ありまして……」などとロジカルぶった話し方をするものである。
ビジネスパーソンの中にも、昨今のコンサル本ブーム、マッキンゼー本ブームのせいか、やたらと「MECE」「ロジックツリー」「ゼロベース」「フレームワーク」などの単語を「問題解決の魔法」のように振りかざす人も少なくない。
しかしながら、MECEもフレームワークも、使い方を間違えれば、たんなる「抽象的で退屈な使い古されたゴミ箱」である。
「MECEにまとめて」「フレームワークは何?」「ロジックツリーが組めていない!」とばかり言ってくるコンサルかぶれの上司には、心の中で「巨人の星」の星一徹もビックリの、怒りの鉄拳制裁を食らわせようではないか。
「マッキンゼー本を読んで論理的ぶっているが、中身はゼロないし他人の時間を無駄にするのでマイナス」であることは、少し話すとすぐ相手にバレるものだ。
コンサルのケース面接でもない限り、「当たり前でつまらない論理」より「面白い実例」をひとつくれたほうが、よほど人は話をしていて楽しく学べるものである。
【4】そもそも「伝えたい内容、気持ち」がない
最後に、「一流と二流の話し方」を分ける最重要ポイントは「そもそも伝えたいことがあるか」という一点に尽きる。
会話能力が低い人は、「テクニック」うんぬんよりも、そもそも「伝えたいことがない」ことも多い。頭がよくて真面目な人の中にも、こういう話し方をする人は少なくないのだ。
二流の人は、ひたすらありきたりな「知識」や「事実」をたっぷり時間をかけて、実に論理的に、つまらなく説明しただけで終わる。情報やデータはあるが「伝えたいメッセージ」がなく、それゆえ「感情を揺さぶる驚き」が一切ないのだ。
人の脳は退屈な話は覚えないように出来ている。それに、相手の心を動かそうと思ったら、そもそも自分自身が話す内容に「情熱」を感じている必要があるのは当然ではないか。
会話で人を動かすのは、往々にして「事実」や「情報」ではなく「自分の熱い情熱」だということを、いつも忘れないようにしよう。
では、どうすれば、「つまらない話し方」の呪縛から逃れ、「魅力的な会話」ができるのか。その秘訣は、実は驚くほど簡単な2つの基本にある。
「一流の話し方」をするための2つの秘訣
1. いちばん大切な基本は「相手に興味をもつ」こと
「いい会話のいちばん大切な基本は、相手に興味をもつことだ」というのは、長年CNNでアンカーマンを務めていたラリー・キング氏の著作に書かれていたことだ。高校生のときに読んで以来、私が胸に抱きつづけている真実のひとつである。
米国の臨床心理学者カール・ロジャースは、相手の言葉をすすんで「傾聴」する姿勢や態度、聴き方の技術を「アクティブ・リスニング」と称しているが、会話を単なる「情報交換」ではなく「信頼関係構築の機会」にするには、この「相手に興味をもち、傾聴する姿勢」が最も大切である。
よい会話とは、自分が話したいことを一方的にぶちまけるのでは当然ない。相手のニーズや想いを聴き出し、「この人は自分の話を聞いてくれた」という信頼感を勝ち得ることなのだ。
2. 「どうしても伝えたい」ことをきちんと持つこと
会話が上手な人には、往々にして、そもそも心の奥底からほとばしる、どうしても伝えたいことがひとつある。
テレビ朝日で長年アナウンサーとして活躍してきた友人(別に差し支えないと思うので言うと、以前対談でもご一緒した松尾由美子さん)に、「うまいプレゼンにいちばん必要なことは?」と聞いたことがある。すると、奇しくも私がそう思っていた「どうしても伝えたいという情熱があるかどうか」だという言葉が返ってきて、私も大いに納得したものである。
頭のいい人がやりがちな「事実」「データ」「情報」を羅列しただけ、無味乾燥なデータや骨格だけの、ガリガリな「ガイコツトーク」では、永遠に人の心を動かすことなどできないのだ。
さあ、「一流の話し方」を追求する、親愛なる同志のみなさん。謎のマニュアル主義からご自身を開放して、太古からの「会話の基本」に立ち戻ろう。
うまく話すための秘訣は、謎の話し方講座に通うことでもなければ、お腹に力を入れて一生懸命発声練習することでもない。本記事で紹介したように、意味ある会話の基本は「相手の興味をきちんと踏まえること」と「どうしても話したい内容をまず自分がもつこと」の2点が重要なのだ。
それができたうえで「自分が言いたいことを、相手の聞きたいフレームに落とし込んで話していける」かどうか――それが「一流と二流の話し方」を分ける決定的な差になるのである。
(イラスト:岸 潤一)
《著者プロフィール》ムーギー・キム ◎1977年生まれ。「東洋経済オンライン」でフランス、シンガポールおよび上海での生活を書き綴った人気連載「グローバルエリートは見た! 」は年間3000万PVを集める超人気コラムに。 著書に、2冊ともベストセラーになった『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』(東洋経済新報社)と『一流の育て方』(母親であるミセス・パンプキンとの共著、ダイヤモンド社)がある。『最強の働き方』の感想は著者公式サイトまで。