防災には準備が欠かせないことぐらい知っている。でも、何をどうすればいいの? できれば、お金や労力はかけたくないし……。
そんな人たちにもってこいの防災教室が、8月19日、神奈川県横須賀市の主催で開かれた。その名も『防災ピクニック®』。“自分で考え、楽しく備える”がモットーのNPO法人『ママプラグ』のメンバーで、自治会の自主防災会長なども務めた、宮丸みゆきさんが講師だ。
「防災ピクニック®では、参加者が避難グッズや非常食を持ち寄って試し合ったり、クイズ形式のゲームで頭と身体を使いながら防災意識を高めてもらいます。仲間と交流する中で、自分では気づかなかったアイデアが生まれることが魅力のひとつです」(宮丸さん)
この日、宮丸さんが取り出したのは防災リュック。
「約60点ほど入っていますが、重さは女性でも背負える5キロ弱くらい。2、3日過ごせる程度の水と食料や日用品を詰めています。大切なのは“わが家の場合”のさまざまなイメージを膨らませることです。
“おばあちゃんはカンパンだと噛めないからレトルトのおかゆにしよう”“なわとびの1本でもあれば、避難所で子どもがぐずらず、何かを縛るのにも使えるかも”といった具合に。子どもも大人も1人1つリュックを用意して」
そんな基本を押さえたうえで、イチオシなのが、
「レジャーシート。避難所で寝る際の助けになるし、ポンチョも雨よけのほか寒さしのぎや避難所での着替えの目隠しにできておすすめ。食品用ラップも優秀。お皿や器に敷けば洗わずにすむし、包帯がわりに止血にも使える。折りたたみ式ヘルメットやシリコンカップ、水がなくても歯が磨ける『歯磨きナップ』なども便利ですよ」
参加者は広げたアイテムに興味津々。2人の息子と来ていたKさん(38)は、
「災害対策は水の備蓄しかしていません。ポンチョの多様性には驚きました。防災ってどうしても面倒なイメージがあったけれど、必要なものってどれもすぐに準備できるものなんですね」
と、目を丸くした。
オリジナル持ち出し品をそろえよう
防災ピクニック®は屋外で開催されることも多い。その際には、想定避難経路を歩きながら危険箇所を探っていく訓練もするという。
「通学路や出勤コースの“防災マップ”を作ることをおすすめしています。地図にブロック塀、はがれた看板、傾いた電柱など注意スポットのほか、災害別の避難所や公衆電話の位置などを書き込みます。実際に親子で街を歩くと、“ここは坂道が多くて避難リュックが重いとつらいかも”“1本裏の道を通れば公園に逃げられるね”など新たな発見ができることが多いんです」(宮丸さん)
頭で考えているだけでは、いざというときにできること、できないことが見えてこない。公衆電話の前に立ったとき、ドアの開け方や使い方がわからない子どもが何人もいたという。Kさんの小学1年生の息子も、「僕も知らない」と首を傾げていた。
まずはできることから。下のリストを参考に、自分に合ったグッズをそろえてみることから始めよう。
★どんな人に?厳選おすすめグッズ
・女性ならでは → 生理用品、携帯用ビデ、ブラジャー、化粧品、髪留め
・小さい子ども → 母子手帳と健康保険証のコピー、簡易栄養食、玩具
・高齢者 → 常備薬、お薬手帳、紙オムツ、ゼリーなど水分の多い食品
・妊婦、新生児 → 新生児グッズ、抱っこひも、脱脂綿、さらし、おしりふき
・ペット → 最低3日分のフードや水、ケージ、トイレ用品、写真
・メガネ使用者 → 予備メガネ、コンタクトレンズ
・ニオイに敏感な人 → マスク、アロマオイル、消臭剤
・音や光に敏感な人 → アイマスク、耳栓など安眠対策できるもの
※宮丸さんへの取材をもとに本誌作成
<プロフィール>
◎宮丸みゆきさん NPO法人ママプラグのアクティブ防災(R)ファシリテーター。ママプラグの新著『被災ママ1089人の声に学ぶ 子どもを守る防災手帖』(KADOKAWA)が発売中。