10万人に1人の割合で罹患する、珍しいがん

妻・クラウディアさんが梅宮辰夫の黄疸に気がついて早期発見につながった

「6月中旬に検査を行い、十二指腸乳頭部がんだと診断され、7月下旬に手術を行いました。8月11日に退院し、今では自宅でスクワットをしていますよ」

 父・辰夫の病気について、9月7日に会見を行った梅宮アンナ。がんのステージはⅠ~Ⅱの間で比較的初期段階だったが、手術は12時間にも及び、78歳という高齢から体力がもつか懸念されたという。

「もしかしたら、これでバイバイかもと思いました。“いってらっしゃい”と送り出したものの、もう会えないかもと不安でしたね」(アンナ)

 幸い手術は成功し、予後も良好のようだ。では、この一般的に聞き慣れない十二指腸乳頭部がんとはどのような病気なのだろうか。

「すい頭十二指腸領域がんの一種です。すい臓はオタマジャクシのような形をしていて、その頭の部分近くにできるがんです」

 こう語るのは、大手町アビエスクリニックの早田台史医師。10万人に1人の割合で罹患する、珍しいがんだという。

「胃より先にある十二指腸という部位は、指を12本ぶん横に並べた程度の長さの、小腸の一部です。十二指腸には、肝臓からのびている胆汁が通る胆管と、すい臓からのびるすい液を通すすい管とが交わり、それぞれの管を通って十二指腸へ流れ出ます。その2つの管が交わり、十二指腸内に顔を出した部分が乳首のように隆起しているため、十二指腸乳頭部というのです」(前出・早田医師、以下同)

 取れるなら『膵頭部十二指腸切除術』と呼ばれる手術で、すい臓の頭部を摘出するのが主流の治療法だ。

「ほかにも十二指腸、胆のう・胆管を摘出し、多くは胃の一部も切除します。切っただけでは飲食できないので、小腸をほかの臓器につないで再建します。吻合は3~4か所。消化液が出る臓器もあるため、手術は極めて難しく、一般的に7~8時間ほどの大手術となります」

家族の心構え「信頼がおける情報は何かを知ること」

 がんといえば最も身近な大病。近年は“死”の印象こそ薄れてきたものの、患者はもとより、家族にも大きな不安をもたらしてしまう。その点について、医療法人嘉健会思温病院院長で、薬局経営も手がける狭間研至医師は“3つの不安”を指摘する。

「1つ目は患者本人の病状や予後に関する不安、2つ目は今後の患者さんの治療に対する不安、3つ目は経済不安です。近年は特に“情報の洪水”に陥ることが多く、正しい情報の取捨選択が必要になります」(前出・狭間医師、以下同)

 というのも、どこの病院に行けばよいか、どんな薬を処方されたのかなど、気になることがあればすぐにインターネットで調べられるからだ。

「検索上位にヒットする情報が、必ずしも正しい情報ではないのです。ひどいものだと、残念ながら怪しげな商品を買うように誘導されてしまうことなどもあります」

 さらに、数多くの情報のなかで、ドクターショッピングが始まってしまうことも。

「例えば、がんの手術後、人工肛門の装着をすすめられたとします。それが嫌な人はセカンド・オピニオンを取りますよね。そこでも人工肛門を推されたら、別の病院、また別の病院……と、インターネットで検索して病院を変えていき、その間に手遅れになってしまうこともあります」

 そうならないための、家族の心構えはあるのか。

「まずは、情報に過敏になりすぎないこと。信頼がおける情報は、国立がん研究センターや都道府県規模のがんセンターになると思います。また、主治医との信頼関係も大切。知っておくべき情報は、どこの部位にできたがん細胞なのか、ステージは何期のものなのか、5年生存率は何%なのか、などです」

家族ならではの第六感「なんかおかしいね、どうしたの?」

今年2月に胃がん手術を受けた渡辺謙、3月に乳がん手術を受けた南果歩。南のすすめで渡辺が人間ドックを受けた。現在、闘病中の小林麻央は、市川海老蔵とともに受けた人間ドックで乳がんがあることが発覚した。

 そして何より、予後を左右するのは発見のタイミング。そこでも、家族がカギとなる。

「“なんかおかしいね、どうしたの?”と、お母さんが子どもの発熱に気づくことはよくあります。家族ならではの第六感や、ふだんの様子と異なるなど、不調を察しやすいのは家族だといえるでしょう」

 辰夫の場合、'74年に睾丸腫瘍を患っている。その際、がん細胞が肺まで転移していたため、普段から検査は念入りだった。また、早期発見できたのは妻・クラウディアさんのおかげだ。彼女は夫の白目が濁っていることに気づき、受診をすすめたのだという。

「毎日顔を合わせていたからこそ、黄疸に気づいたのだと思います。いつも同じ家の中にいるとはいえ、結婚から40年以上たっていれば、それなりにお互いの存在がないがしろになりますから(笑)。そんな中で、夫にある“違和感”を指摘できたのだから、素晴らしい夫婦愛を感じました」(芸能プロ関係者)

 この夫妻は、辰夫の後ろをクラウディアさんが歩くという、亭主関白だという。

「料理好きな辰夫さんが自宅で料理をするときは、一から丁寧に作るので、クラウディアさんは“リクエストするのが申し訳ない”と思っていたそうです。テレビ番組で、彼が初めて妻のリクエストを受けたとき、クラウディアさんがとても喜んだといいます」(前出・芸能プロ関係者)

 ほかにも、自宅に帰る35分前に必ず電話をする習慣が。

「それでクラウディアさんが炊飯器のスイッチをオンにするんだとか。夫婦間での会話なども少なくないようです」(前出・芸能プロ関係者)

 このような日々の絆が早期発見につながり、辰夫の命を救ったのだ。それは、この夫婦だけに限らない。

「渡辺謙さんと南果歩さん夫婦は、南さんのすすめで人間ドックを受診し、渡辺さんのがんが発覚。それによって南さんも受診し、乳がんを早期発見できました。市川海老蔵さんと小林麻央さんも、2人で人間ドックを受けたことが乳がん発覚のきっかけです。パートナーへの気づきや声かけが健康につながるのです」(芸能レポーター)