小池都知事が政府の国家戦略特区諮問会議で、2歳以下しか預かれない小規模保育所の年齢制限撤廃を訴えた。
小池氏は都知事選で、待機児童の解消策として「小規模保育の規制緩和」「空き家などの活用」を掲げていた。「今年度内に効果を出す」などと意気込んでいる。
小規模保育所の年齢制限を撤廃するよう国に求めたことは公約どおりの動きといえる。
安倍首相は小池氏の要望に対して、「迅速に実現を図りたい」と答えたという。
0〜5歳児を20人以上預かる「認可保育所」に対し、国が昨年度から認可した「小規模保育所」は、0〜2歳児に限って6〜19人預かることができる。保育士の有資格者がスタッフの過半数を占めればよく、園庭がなくても開園できる。雑居ビルの一室などを借りてもいい。しかし、3歳で卒園となる決まりだ。
「厚生労働省の目論見がはずれてしまった」
小池氏の提案はアリなのか、ナシなのか。
都内と仙台で小規模認可保育所を運営するNPO法人『フローレンス』の駒崎弘樹・代表理事は「結論から言うと素晴らしいことだと思います」と評価する。
「厚生労働省が2歳児までに限定した当初の理由は、待機児童の約8割が0〜2歳児といわれるほど多かったから。しかし、卒園した3歳児を受け入れるとみていた幼稚園も認可保育所も受け入れることはなく、簡単に言えば目論見がはずれてしまったんです。
現場ではお母さんたちが“保育士さんとの関係もできているし、この園にずっといたいのに、また保活しなくちゃいけないの?”とおっしゃいます。私たちも預かってあげたいのに制度が邪魔をしているんです」(駒崎氏)
いわゆる“3歳の壁”だ。
「3歳児以降の発育には集団生活が必要?」
しかし、一方で年齢制限の撤廃に反対する声も。主な論拠は「3歳児以降の発育には集団生活が必要だから」というもの。
駒崎氏が反論する。
「何人から集団とみているのか判然としません。ざっくりと“集団がいい”というんです。しかし、実は答えが出ています。クラスサイズについてアメリカで、ある実験をしたところ、少人数のクラスのほうが成績はよかった。そもそも小学校の話になると、みんな“少人数学級がいい”というじゃありませんか」
都内の待機児童数は増加しており、今年4月時点で8466人。なんとか解消しようと知恵を絞る自治体もある。
既存の幼稚園を活用、小規模保育所と認可保育所の橋渡し
練馬区は昨年9月、既存の幼稚園を活用する『練馬こども園』を創設した。保育所の機能を併せ持つスタイルで、現在13園が認定されている。
「区内に私立幼稚園が多いんです。ただし、幼稚園が園児を預かるのは基本的に午前9時から午後2時まで。夏休みなど長期休暇もある。そこで『前後の預かり時間を増やして1日11時間、長期休みもなしでやってほしい』と要望しました。職員体制などで負担をかけるので区が補助金を上乗せしています」(練馬区こども施策企画課)
来年から3園増えるという。
小池氏のお膝元である豊島区は、小規模保育所と認可保育所の橋渡しに奔走する。小規模保育の卒園時に園児を受け入れてもらう狙いがある。
「近隣の保育所に連絡を取って園庭開放や夏祭り、ハロウィンなどにまぜてもらうんです。長い目で見れば園児を確保できるので保育所にもメリットがあると考えています」(豊島区保育課)
待機児童の解消が急がれる。