芸能生活35年を迎える原田知世。女優・歌手としてキャリア十分の原田を、脚本家の北川悦吏子は「この年齢で、この可愛さ、少女のような透明感! 嫌味がないのは奇跡」と称する。“時をかける”エイジレスな魅力とは──

20代から自分探しを始め、40代は実りの時期

ドラマ『運命に、似た恋』でヒロインを演じる原田知世 撮影/森田晃博

「年を重ねることは悪いことではなく、その年齢にしかない自分らしさがあるので、いつも今がいちばん幸せだと思っています。体力には自信があって、気力があれば大丈夫と思っていましたが、最近、だんだん無理がきかなくなってきています(笑)」

 14歳のときに『時をかける少女』でスクリーンデビュー。『愛情物語』『天国にいちばん近い島』『私をスキーに連れてって』などヒット映画に主演。女優だけでなく、歌手としても活動し、芸能生活35年のキャリアを迎える原田知世。

「14歳でとても幸せなデビューをして、気がついたら、たくさんの作品に出演させていただいてきました。

 忙しさに追われるなか、20代から自分探しを始め、25歳からは大好きな音楽を本格的に始めました。そうして女優とは違う自分を見つめ直すことができ、等身大になれるようになり、それが実ってきたのが30代だと思います。ファンの方は私を丸ごと応援してくださる方ばかりだったのですが、女優の部分ではなく、音楽だけを聴いてくださる方も増えました。年下の方と交流する機会が増えたのも、このころからです。 

 40代は、実りの時期ですね。芝居と音楽の両方がうまくかみ合うようになって、心地よく走れるようになった感じがします。もうすぐ40代も終わりますが、充実していたな、と感じています。

 これから先? どうなるんでしょう。ゆっくり、楽しみながらいきたいですね。とくに“野望”はないですよ(笑)」

 年を重ねて、自身の恋愛観に変化は?

「若いころの恋愛は、“あの人、素敵、タイプだわ”と、見た目に惹かれることが多いと思います。私もそうだったかも。今は恋に憧れた時代は過ぎ、人柄をいちばんに考えるようになりましたね。恋愛にも大切なのは、やっぱりハートだなと」

年下イケメンとの恋愛は“ファンタジー”だけど…

原田知世 撮影/森田晃博

 主演ドラマ『運命に、似た恋』(NHK総合金曜夜10時)では、40代女性の気持ちを投影した、45歳のヒロイン・カスミを好演している。

「久々の連続ドラマだったので、体力的に“大丈夫かな?”と不安がありました。これは初めてのことでした。撮影がお休みの日にはマッサージに行き、演じる緊張でこわばった身体をほぐしてもらってリフレッシュしていました」

 大人の純愛を描いた話題作で、バツイチのカスミはカリスマデザイナー、ユーリ(斎藤工)と恋に落ちる。

「40代だからこその心の余裕や深い愛情、そして自分の人生を人と比べないところ、ブレないところは、素敵だと思ったし、共感できました。

 斎藤さんとは初めてご一緒させていただいたのですが、斎藤さんの声や自然な演技で、ロマンチックなシーンも楽しくお芝居できました。

 物語は、キュンとする部分もありますが、後半になるにつれて、愛や魂の救済について描かれていて、テーマも深くなっていきます。ご覧になったらきっと、人を愛するとはどういうことか、考え直したくなると思います」

 年下のイケメンとの恋愛は“ファンタジーですね”と笑うが、カスミの恋愛模様から感じることもあった。

「愛をもらうと、こんなに人は強くなれるんだ、愛のある人生は素敵だなと思いました。男女の恋愛だけでなく、家族や友人の愛も大切にしたいですね」

恋敵とのケンカシーンに初挑戦!

原田知世 撮影/森田晃博

 脚本は“ラブストーリーの神様”の異名をとる北川悦吏子。原田は昨年、スペシャルドラマ『三つの月』で北川作品に主演している。

「こんなに早く、またご一緒できると思わなかったので、うれしかったです。また北川さんの作った“船”に乗って旅に出よう。どこに着くかわからないけれど、きっといい旅になる、と。完成した台本をいただいたときは、すぐに物語に引き込まれました」

 執筆前に資料を読み込み、キャストの個性を生かして“あてがき”した北川作品では、“新しい自分”との出会いも。そのひとつが、ユーリをめぐって、恋敵のマホ(山口紗弥加)とのケンカシーンに初挑戦したことだ。

「本当に、取っ組み合いました(笑)。そんなことは、私生活はもちろん、演技でもやったことがなかったので、“私にできるかな?”と思ったんですが、できました! (見ている方には)今まで見たことのない姿だと思うので、楽しんでもらえると思いますし、面白い仕上がりになったと思います」

 撮影期間中はどのシーンも演じる喜びを感じながら、日々を過ごしたという。

「ワンシーン、ワンカットでも逃したくないと思っていたんです。台本は何回も読み、セリフを録音して何度も聴きました。物語の流れを自分なりに箇条書きにして、カスミの感情を考えたりする作業も細かくやりました。

 そして、臆することなく、今ある自分を全部出しきりたいと、夢中で演じました。そうしたら、例えば激しいケンカのシーンなど、開けられなかった扉まで開くことができたんです。悔いなく、すべてを出しきれたと自負しています。

 演じていて、こんなに強く揺り動かされた作品は、今までになかったんじゃないかしら。ユーリのセリフの中に、“君じゃなきゃだめだ”というのがあります。私はスタッフ、キャストの方々全員にそう思いました。北川さんの“船”に乗っていた人たちは、愛にあふれた人たちばかりで、これだけの人が集結したのは奇跡です。一生忘れることのできない宝物のような作品になりました」

 カスミは少女時代に出会ったアムロとの出会いをずっと大切にしてきたが、原田が大切にしているのは、人との出会いだという。

「今の私があるのは両親や家族の愛、そして人との出会いのおかげだと思います。人生を振り返っても、絶妙のタイミングで、とても素敵な出会いがありました。今回の北川さんの作品との出会いも忘れることができません。魅力的な人や作品との素敵な出会いで、次の道を開いていただいたからこそ、ここまでこられたんだと実感しています」