結婚15年目で子供が3人います。私が子どもの勉強を教え始めると、夫は「市によってはランクが違う。僕の出た市はランクがいい」などと子供をばか呼ばわりし、それでも子どもが覚えられないと子どもを叱咤(しった)し、殴る蹴るが始まります。
私がかばうと私を殴り、肩を痛めたこともありました。ならば夫から教えてもらえるように仕向けると、お前は子どものことを考えていないと、またののしります。近所から児童相談所にも連絡が行くほどです。
私が不在時には整理整頓名目で、部屋や台所をかたづけてくれるのですが、自分が気にくわない洋服などを勝手に捨てたり、リサイクルに出してしまいます。あらゆる物がなくなり、最初は夫の仕業と気づかなかったので「知らない?」と尋ねると、私の整理整頓が悪いからとまたしかられます。何度も注意して、ようやく止めてもらえるようになっても、また気が変わると繰り返し。子どももお気に入りの服がいつ捨てられるか、気が気でないようです。
夫の暴力は物にも向かい、機嫌が悪いと物に当たって壊します。掃除機、扇風機をはじめ陶器類・はしなどは序の口で、机なども破壊寸前のガタガタです。買い足してもすぐに壊される不安で購入する元気もなくなり、わが家は壊れた家具類だらけです。この家庭に出口はあるでしょうか。
投稿者:いつかどこかで(仮名)
私はこのコラムに寄せられたご相談に対して、自分の年の功をかさに着て、一方的に自分の価値観で判断した答え方にならないよう、随分注意しております。そんな私ですが今回はあえて、今のままだと、あなた方夫婦に希望は無いと断言できます。あなたも気の毒ですが、何よりも子どもさんたちが負うであろう心の傷が心配です。
21世紀の先進国日本では、衣食住さえ保証されればあとは耐え忍べという時代ではありません。あなたの夫君は、家族の人生のホームベースとなる家庭を作るどころか、前世の敵だった人の妻子に復讐しているような敵意に満ちた夫であり父親をしています。
何らかのショック療法をきっかけに彼が変わろうと努力するなら別ですが、このままだと家族全員の不幸が待っているだけです。
子どもの将来も奪う、親の暴力
「貧しいながらも楽しいわが家」という言葉がありますが、この言葉には本当に奥深い意味が込められています。子どもが毎日安心して楽しく過ごせ、健やかに育つ家庭作りは、裕福であることとは別問題で、親の人生観一つということです。
愛情豊かな親に育てられた子どもの多くは素直で誠実です。人を欺くことを知りません。親を愛し尊敬し、感謝することを知る子に育つものです。それは子どもが社会に出て築く人間関係にも影響せずにはおかないものです。そして人生でもあらゆる場面で、その心持ちが力となり財産となるのです。
病院へ行けば病人がいっぱいいるように、このコラム欄を読んでいると、世の中は家庭問題で悩んでいる人ばかりに見えます。ですがあなたの夫君に是非とも少しでも学んでほしいと思う夫・父親像の方が、実は周囲に満ちあふれているのです。大多数の夫婦は相手を警戒せず、信頼し支え合って生きているのです。
妻子は何かが出来るから愛おしいとか出来ないから憎いではなく、存在するだけで大切な存在であるのが、まず人の本能です。年を重ねながらお互いが向上するよう助言はしますが、すること成すことにけなしたり暴力は振るいません。
生活ができるだけ便利で楽しく豊かであろうとする親の努力や価値観は、家具その他の調度品でも表現されます。それらに囲まれて育った子どもたちは、美しいものを美しいと認められるセンスを養ったり、かけがえのない思い出をそれらに重ねるものです。
うれしいときに共に喜んだ感動、困難にあったときに励まされた思い出など、それらは生涯に渡って、人生の節目節目や、何かの拍子に思い出す原風景の一部になるものです。原風景がしっかりしている人ほど、困難にぶつかった時に、それに打ち勝つ力も大きいと言われますが、あなたの子どもさんたちの原風景を想像しますと、かわいそうでなりません。
夫君がしていることは、今現在、妻子を脅かしているだけでなく、あなたや子どもたちの将来に渡って、深い傷を刻んでいることになるのです。壊れた電化製品や家具、陶器やおはしで暮らし、勉強の覚えが悪いといっては殴られ、それを止めに入った母親が、目の前で殴られる子どもたちの心境と将来を、考えてみてください。夫君の罪の大きさが分かろうというものです。
夫が改心しない限り、同居は無理と覚悟を決める
あなたの箇条書きのようなご相談文を、勝手に少し直させていただきました。あなたの切羽詰ったご心境、お察し申し上げます。同時に私の知人が思い出されてなりませんでした。
彼は妻の性格が大嫌いで離婚したくてしかたがないのですが、それが想像できないほど、いつも妻に優しいのです。理由をきくと、彼の父親が母親にとても優しく、自分もそのような優しい振る舞い以外は、覚えてこなかったからだというのです。あなたの子どもさんたちが、嫌いでもない伴侶に、暴力でしか意思伝達ができなくなるかもしれない可能性をうかがわせるエピソードです。それほどあなたの家庭は、異常事態が続いています。
ここは夫君が変わらないなら、壊れても惜しくない家庭だと、あなたが覚悟をくくることです。あなたはかなり限界にきておられ、このまま大きくなっていく子どもたちも、あらゆる面で心配です。子どもたちが何かでつまずいたとき、あなたも子どもたちを守らなかった責めで、ますます苦しむかもしれません。大げさかもしれませんが、何かコトが起きてから行動を起こしても、遅いのです。
これは私の悪い想像でしかありませんし、むしろ父親を反面教師に母子の絆が深まることも想像されますが、それでも、現在の家庭事情は、あなたにも子どもさんたちにもひどすぎます。
夫君の友人か親戚を介して、あなたが限界に来ていることや、この環境で子どもを育てて予想される現在と将来の弊害を彼に説明し、彼の改心がなければ今の家庭が崩壊することを、説得してもらえないものでしょうか。
あなたが覚悟さえできれば、家庭裁判所が一番いいと思われます。このまま続いても、結局は彼にも不幸しか待っていませんから。
《著者プロフィール》ミセス・パンプキン:『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』(東洋経済新報社)の著者ムーギー・キム氏の母。海外各国に住む子供を訪ねて、北米、香港、フランス、日本を移動しながら生活。一般的な家庭ながら、子供を国際弁護士、国際金融マン、海外著名大学教員、公認会計士に育て上げた。立命館大学卒業。共著に『一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』(ダイヤモンド社)。