今年7月、大腸がんのため亡くなった世界的ピアニストの中村紘子さん。2年前の手術では、がんがすべて取りきれなかったそう。ステージ2と公表し、闘病しながら演奏活動を続けていた。腹膜への転移が余命を短くしたのでは、ともいわれている。
「大腸がんは、ほかのがんに比べて進行が遅く、切除もしやすい。タチはいいがんです。ただし、転移してしまうと、完治は難しくなります」
と、新宿大腸クリニックの後藤利夫先生は話す。大腸がんとは、大腸の粘膜にできるがん。
「以前の日本人は直腸やS状結腸など、大腸の中でも肛門に近い場所にがんができていたのですが、最近は欧米人のように、大腸の奥にもできるようになってきました」
女性のがんによる死亡者数1位は、大腸がん。男性は3位で、'60年代ごろから急激に増えたという。
「食生活が欧米化したためです。大腸がんは、脂肪が多く、食物繊維が少ない食事に高いリスクがあるとされています。米、魚、野菜中心の和食を食べていた時代、大腸がんは少なかったんです。ゆえに、遺伝要素よりも食生活習慣の影響が大きいと考えられます」
自覚症状はなく、肛門からの出血などの症状が出たときには、かなり進行している可能性も。
「大腸がんの5年生存率はステージ2で8割、ステージ3でも7割と非常に高く、治せるがんなんです。なのに、勝手に痔だと思い込むことで放置し、亡くなる方は多いんです」
大腸がんといえば、人工肛門というイメージも少なからずあるが、
「肛門近くの直腸にがんができた場合は、残すことができないので、取らざるをえません。その場合は、人工肛門になります」
内視鏡手術ですめば、ほぼ100%助かる
予防には、低脂肪・高繊維の和食、そしてヨーグルトや漬物などが◎。
「そして、大腸がん検査を定期的に行っていれば、命を落とすことはないでしょう。ただ、便の潜血検査では見逃しもあるので、内視鏡検査がベストです。3割負担で、5000円くらいで受けられます。40歳を過ぎたら、3年に1度受けるといいですね。ほぼ早期で発見できるので、負担の少ない内視鏡手術で切除ができます」
内視鏡手術ですめば、ほぼ100%助かるという。ステージ2や3の場合は、腹腔鏡手術や開腹手術となる。内視鏡検査さえしていれば、大腸がんは恐れることはなさそうだが、ただ、痛そうなイメージが。
「私が開発した『水浸法』なら痛みはほとんどありません。最近では私のところに勉強に来る医師が増え、全国に広まりつつあります」
<この先生に聞きました>
後藤利夫先生
新宿大腸クリニック院長。無麻酔で、痛みを伴わない大腸内視鏡検査『水浸法』を開発。4万件以上の実績があり、すべて無事故。大腸がんの撲滅を願うベテラン医師。著書、メディア出演多数。