膀胱がん「喫煙者は要注意」
元ボクシングミドル級チャンピオンでタレントの竹原慎二が膀胱がんを患って2年。ステージ4で、現在は経過観察中。闘病生活を綴ったブログによると、がんを見つけたきっかけは頻尿だったという。
「膀胱がんは比較的見つけやすいがんです。健康診断で血尿がきっかけで発見されることや、頻尿で発見されることもあります」
と、順天堂大学病院の堀江重郎先生。
「目には見えず、顕微鏡で見ればわかる血尿を“顕微鏡的血尿”といいます。この段階で見つかれば、早期の膀胱がんです。また、目で見える血尿は痛みを伴わないことが多く、出たり、出なかったりします。1回出たけど放っておいたために進行していたケースは、実はよくあります。血尿が出たら、すぐに泌尿器科を受診することが大切です」
膀胱がんは、骨盤内にある、尿をためる膀胱の粘膜にできる。女性よりも男性が3~4倍多く、年齢は60歳以上がほとんど。
竹原のように40代での発症は珍しい。
「タバコを吸う60歳以上の中で、血尿のある人の5人に1人は膀胱がんだといわれています。喫煙者、ベンゼンやトルエンなどの有機溶媒に接している人は要注意です。発がん性物質が尿の中に入り、膀胱にたまることで、膀胱の遺伝子が変化し、がん化することがわかっています」
遺伝性のものは見られず、後天的な環境因子が原因になるという。
「表面にとどまっている場合は、内視鏡で切除すると9割が完治します。筋肉まで及んでいる場合は全摘手術、放射線治療、薬物療法を行います。転移がある場合は、薬物療法のみのケースもあります。ここまで進行すると6割しか助からず、治りやすいとはいえません」
内視鏡手術なら入院期間は1週間程度。膀胱を切除する場合には、尿の出口を新たに作る必要がある。方法はいろいろあるが、3~4週間の入院生活が必要になる。
「膀胱を失うと、その後の生活の質に大きく影響します。年に1回は尿検査を受けましょう」
前立腺がん「50代から急増」
タレントの西川きよしが今年1月、前立腺がんの手術を受け、妻・ヘレン(70)はテレビ番組で“オムツ生活”と告白。人間ドックで発覚し、摘出手術を受けたことを明かした。
「前立腺がんは、新たにがんと診断される人の割合予測において、男性1位。胃がんや肺がんを抜いてしまいました」
とは、前出の堀江先生。前立腺がんにかかりやすい人とは?
「前立腺は、男性にしかない臓器。そこにできるのが前立腺がんです。症状は、がんが相当進行しないと出ません。尿が近かったり、出にくかったり、血尿があるなど前立腺肥大症と同じような症状が出ることもあります。なりやすいのは、動物性脂肪の食品を多くとる、運動習慣が少ない、日に当たらない人などです」
避けたほうがいい食品は、牛乳やとんかつなどの脂身、鶏皮など。年代では50代以降がかかりやすい。
「はっきりとした原因はわかっていませんが、遺伝的な要素は大きいです」
前立腺がんの特徴は、すべてのステージを混ぜた5年生存率が90%以上と、とても予後がいいこと。ほぼ完治するというが手術の後でオムツになるのは……。
「がんの程度や手術の内容にもよりますし、術後の回復には個人差があります。もともと骨盤の筋肉が弱いと尿はもれやすくなります。われわれの病院では4割は最初からほとんどもれません。残りの方も多くは6か月以内に止まります」
初期であれば、手術治療。最近は、ロボット手術が主流で、身体への負担が少ないそう。
治療はすべて保険適用され、10日くらいの入院ですむ。転移をしている場合は薬物治療となる。
「がん検診にはPSA(前立腺特異抗原)という血液の項目があるので、初期の段階で見つかりやすいです」
手術の場合は、男性機能が失われるリスクもある。
「前立腺の周りには勃起にかかわる神経があり、一緒に切除すると男性機能が失われます。がんが初期で、勃起の神経に関係しない部分にある場合は神経を残すことも可能ですが、再発のリスクは増します」
<この先生に聞きました>
堀江重郎先生
順天堂大学医学部附属順天堂医院泌尿器科教授。日米で医師免許を取得。手術ロボット・ダヴィンチを駆使した前立腺、腎臓手術のトップランナー。日本初の“メンズヘルス外来”開設の実績も。