十二指腸乳頭部がん「非常に難度の高い手術」
今年9月、梅宮アンナ(44)が父・梅宮辰夫のがんを公表。6月に全身のかゆみ、黄疸の異変を感じ、検査の結果、十二指腸乳頭部がんの初期と告知された。7月に十二指腸と胆のうのすべて、すい臓と胃の一部を摘出する12時間に及ぶ大手術を受けた。退院後は自宅療養を続けていたが、11月に入って仕事に復帰した。
十二指腸は胃と小腸をつなぐ約30cmの消化管。そのうち、胆のうとすい臓から出た分泌液が合流して流れ込むのが十二指腸乳頭部。
「梅宮さんがかかったのは、胆道がんの一種。当院で扱うのは年間10例弱ですが、内視鏡で見える位置なので、比較的昔から認知されているがんではあります」
と、国立がん研究センターの島田和明先生。標準的な治療は胆管、胆のう、すい臓の十二指腸側にあたるすい頭部、十二指腸の切除だという。
「十二指腸乳頭部にがんができた場合、周囲への広がりが懸念されるので、早期でも外科手術が推奨されています。肝胆膵外科学会では非常に難度の高い手術とされており、合併症が多く大変な手術ですが、すい臓がんに比べたら予後は比較的良好といわれています」
梅宮のように、黄疸による発見が多いのも特徴だ。
「手遅れで手術ができない例は、すい臓がんよりはずっと少ないです。がんになる原因はさまざま。黄疸が出ると末期がんだと思い込む人がいますが、結石などでも起こります。必ずしもがんとは限らないので、いたずらに絶望せず、きちんと診断を受けることです」
脳悪性リンパ腫「症状が軽いうちに治療を始めることが重要」
今年2月、俳優・松方弘樹が脳腫瘍の疑いで入院し、脳悪性リンパ腫(中枢神経系原発悪性リンパ腫)と診断された。
「脳腫瘍にかかるのは、10万人に20人くらいです。そのうち半分は良性、半分は悪性(がん)です。脳腫瘍を細かく分けると150種類くらいあり複雑なので、“脳がん”とはいいません。脳悪性リンパ腫は、脳腫瘍の中で5番目に多いものです」
と、国立がん研究センターの成田善孝先生は解説する。年間患者数は1000人弱というまれな病気で、60代をピークに男性に多いという。
「この病気の一番の問題は、診断がついた時点で、半分以上の患者さんは麻痺や失語などの症状が進行していることです」
例えば、脳卒中は突然倒れるなど急激に症状が出るが、脳腫瘍は日単位、週単位で悪化するのが特徴。脳の、どの部分に異常が起きるかによって症状の出方が異なる。
「“手足がしびれる”“ろれつが回らない”などの不調を感じながら様子を見ていると、あっという間に進行してしまいます。症状が軽いうちに治療を始めることが重要。異常を感じたら、できるだけ早く脳外科などを受診してください」
治療は、まず頭部に小さな穴をあけて、内視鏡による“組織生検術”で診断する。その後は、抗がん剤と放射線照射を行っていく。5年生存率は4~5割。再発を繰り返すこともあるが、基本的に脳で発症したものは脳以外へは転移しない。
「“高齢者がこの治療を行うと認知症の症状が出るのでは”と心配する人がいますが、必ずしもそんなことはありません。きちんと治療をすれば十分治る病気です。副作用を恐れず、治療を受けてほしいですね」
<この先生に聞きました>
◎島田和明先生
国立がん研究センター中央病院副院長、肝胆膵外科長。日本を代表する肝胆膵外科医で専門は肝胆膵領域の悪性腫瘍。放射線診断科などの他科とも密な連携をとり質の高い集学的な治療を行っている。
◎成田善孝先生
国立がん研究センター中央病院脳脊髄腫瘍科長。大学院在学中から、アメリカのルートヴィヒがん研究所で神経膠腫(グリオーマ)の分子生物学(シグナル伝達)を研究。悪性脳腫瘍手術の名医。