「最近は、卵巣予備能を検査するAMH(アンチ・ミューラー管ホルモン)や、ブライダルチェックで来院される方が増えました。誰でもすぐに妊娠できるかというとそうではなく、きちんとご自分の身体をチェックしておかなければいけないという、妊娠に対する啓蒙が進んできたことを感じています」
こう話すのは、不妊治療の草分け的な存在である『西川婦人科内科クリニック』の西川吉伸院長。
女性の社会進出の増加とともに、晩婚化、高齢出産が進む現代の日本。若いときは仕事に没頭し、気がついたら妊娠適齢期のリミットが─。
「クリニックに来られる、初診の年齢は確実に上がってきています。“子どもが欲しい、でも、どうすれば早く授かれるのか”と、家の中で悩む日々があるのであれば、心と身体が疲弊する前に、1日でも早くクリニックの門を叩いてほしいです」
高齢になればなるほど、専門医のアドバイスが必要になってくる“妊活”。でも、婦人科に行くことに抵抗を感じる人も少なくない。
そんな人のために、不妊の原因や最新の検査、治療法について西川院長は『赤ちゃんを授かるためのママとパパの本』(日本文芸社)を書いたという。
「私がいちばん訴えたかったのは、“卵子の老化”および“男性の不妊”についてです。かつては一方的に女性に不妊原因があると疑われた時代がありましたが、今はそんな時代ではありません。不妊に悩むカップルの約半数が男性にも原因があることがわかっています。
そのため、この本を通して治療に積極的ではないご主人にも、いかに真剣にご夫婦で向き合わなければいけないかが、おわかりいただけると思います」
自分は大丈夫と思わないで
最近は夫婦でクリニックに来院するケースも増えているというが、男性側の意識も変わってきた?
「まだまだ治療に積極的ではない方が、多くいらっしゃいます。自分は大丈夫と思わず、不妊の原因の約半数は男性にあるということをきちんと理解してください。
同時に、不妊のもっとも大きな要素になっているのは、女性の年齢です。奥さまの年齢を加味しながら、奥さまと協力して、お互いに思いやりを持ち、治療に臨むことが望ましいといえるでしょう」
西川院長が強調する、女性の年齢。それは卵子の年齢に直結する。
「卵子の老化が妊娠に対して重要なポイントのひとつであり、女性の場合は時間との闘いであるということをご理解していただきたいです。できるだけ早い段階で検査をして、異常があればそれに対して治療をすることが、妊娠するにあたって大切であることをわかっていただければ」
“赤ちゃんが欲しい”と思いながらも、一歩を踏み出せない人へ、院長は著書にこんな思いを込めたという。
「早めに検査をして原因を究明し、不妊であればそのときもっとも適した処置を行うことで、時間をムダにしないようにしましょう。この本で、妊娠の仕組みや男女の機能の違いを勉強してみることをオススメします。知識を深めて、医師のアドバイスをきちんと理解することが妊娠への一番の近道です」
<プロフィール>
にしかわ・よしのぶ/西川婦人科内科クリニック院長。医学博士。医療法人西恵会理事、日本産科婦人科学会専門医、日本産婦人科内視鏡学会評議員、大阪産婦人科医会評議員ほか