報道キャスター抜擢にさまぁ〜ず「テレ東大丈夫か?」
「入社当時は、社会人になったら泣いちゃダメ、仕事場で泣いたら甘えになると思っていたのですが、すでに崩壊していますね(笑)。でも、これからは涙腺をカットして臨みます」
そう宣言するのは、テレビ東京の狩野恵里アナウンサー。
人気バラエティー『モヤモヤさまぁ〜ず2』(日曜夜6時30分〜)で、3年半担当した2代目アシスタントを“号泣”卒業。11月7日スタートの経済ニュース『ゆうがたサテライト』(月〜金曜夕方4時54分〜)で、報道キャスターに初挑戦する。
“モヤさま”では、馬車と競走したり、砂丘を走らされたり、ムチャぶりにも体当たり。毎回登場する食事では、好物の丼物を大口でほおばる。さまぁ〜ずからは、ときに言動を「雑」とアキレられることもあったが、卒業の際には、2人から「3年半、楽しかった」とのメッセージに大泣きした。
番組をきっかけに「好きな女性アナウンサー」調査で上位にランクインするようになった。人気アナウンサーの1人に成長し、新番組の顔に起用されるのも当然のように思えるが……。
「最初に聞いたときは“えっ、私でいいんでしょうか?”と驚きました。私だけでなく、モヤさまのスタッフ、さまぁ〜ずさんも“マジ? ウソだろ、テレ東大丈夫か?”と心配されて(笑)。無理もないと思います。3年半、あらゆることに挑戦させてもらいましたが、報道キャスターとはかけ離れていたことばかりでしたから。でも、3年半のモヤさまでの私を見ていて、報道キャスターに指名してくださったテレビ東京は懐が深いな、と思いました。
何かいままでとは違うことにチャレンジしたいと、会社も思ったのかなと、前向きにとらえて、常識を覆すような報道番組が作れたらいいなという野望はあります」
平日夕方の各局ニュース番組のメインキャスターは男性アナウンサーが務めており、“紅一点”として参入する。
「アナウンサーとして先輩の方々がやっている時間帯で、女性だからというのではなく、私は勉強させていただくという立場です。同じ土俵に上がらせてもらって恐縮ですが、上がったからには全力でいきたいと思います」
先輩・大江キャスターからのエール
“モヤさま”から報道キャスターに転身といえば、先輩で『ワールドビジネスサテライト』キャスターの大江麻理子(38)と同じだ。
「大江さんには事あるごとに困ったら相談していて、“どうしましょう?”と連絡しました。そうしたら、モヤさまのときと同様に“そのままで大丈夫だよ”と。“会社が狩野ちゃんを選んだということは、いままでとは違うことを望んでいるはずだし、全力でやりつつ、わからないものはわからないと素直に。(番組を)一緒に作っていくという気持ちがあれば、きっと大丈夫だよ”と言ってもらったのですが、いまは怖いです。ドキドキしています」
7月末に“モヤさま”卒業を発表し、8月にはレーシングドライバーの山本尚貴選手(28)との結婚を発表。その後の報道キャスター就任と、公私ともに節目を迎えた。
「(結婚して)生活形態も変わりましたし、お米の減り方が早いのを実感したりと、ささやかなことでも日々、変化に驚いています。“ゆうサテ”を見てくださる方のなかには、主婦の方もいらっしゃると思うので、そういう方にどんな情報が求められていて、喜ばれるのか。主婦若葉マークですが、スーパーに行って野菜の値段をチェックしたり、身をもって経験して、生活者としても、共感していただけるようなキャスターになりたいです」
仕事と家庭との両立についても手探りが続くなかで、頼りはやはり既婚者の大江キャスターだ。
「帯番組は、ニュースが毎日追っかけてきて、終わりがないと言われるので、体力勝負だと思っています。(大江さんには)その恐怖心や健康面で気遣っていること、限られた時間でどうやって勉強しているのか、家ではダンナさんとお互いどうサポートしあっているのか、聞きたいことばかりです」
ちなみに、自身はどんなサポートを受けている?
「ハハハ。お互いにできることをやるようにしています。彼は料理が上手で、結構おいしいです。同じ料理を盛りつけしても、向こうは彩りのセンスがよくて、全然違うんです。持って生まれた才能ですかね。昔は、お酒の場でストレスを解消することもあったけど、いまは人と話したり、のんびりと何も考えずにお風呂に入ることがリフレッシュ方法です。
家に帰ったら話せる相手がいるのは大きいです。私が話したい雰囲気がわかるみたいで、聞いてくれます。お互いの職場を知りつつも、別の業界なので、ほどよい距離感がいいのかなと思います」
「週5日、現場取材に行くつもり」と意欲
入社して以来、担当する番組はA4サイズのノートにつけていて、その数は引き出し2段分になるという。
「反省点が多いです。さまぁ〜ずさんから言ってもらったことや、スタッフからの細かい指摘などが書いてあります。たまにホメてもらったことは、大きな文字で書いて、自分を鼓舞するためにときどき読み返したりします。もちろん、ゆうサテでもつけます!」
バラエティーから報道への新たな挑戦は、注目も期待もされることは間違いない。
「モヤさまのイメージがあるので、(報道キャスターに)葛藤はありましたが、番組のおかげで、いろんな人に知ってもらえるきっかけにもなりいろんな面を引き出してもらえたと思います。これまでに企業取材、モータースポーツ、競輪、野球、サッカー、モヤさまでは国内外のいろんな場所に行かせてもらって、いろんな経験をさせてもらえました。そうした経験を通して、人にフォーカスしたいなと思うようにもなりました。
メインキャスターと聞くだけで、両肩にいろんなものを背負っている感じですが、なんでもできる器用なキャスターにはなれないし、周りも求めていないと思います。知識はすぐに増えなくても、経験は日々続けていけば、蓄積されていくと思うので、週5日、現場取材に行くつもりです。スタッフと一緒に汗をかいたり、ベソをかいたりして、みんなと同じ方向を向いて番組作りをしていけたらと思っています」
<プロフィール>
狩野恵里(かのう・えり)
1986年10月29日生まれ。東京都出身。2009年、国際基督教大学教養学部卒業後、テレビ東京にアナウンサーとして入社。『ワールドビジネスサテライト』のコーナー“トレたま”、『ネオスポ』『SUPER GT+』、競輪中継などを担当。’13年4月から『モヤモヤさまぁ〜ず2』2代目アシスタントを経て、’16年11月から『ゆうがたサテライト』キャスターに。